人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.132「endless thema - 127」(16年12月)

 

--------十二月/赤い葉、赤い実

 

p_nono1612a
古木のサクラ

 

紫明通の中央に連なる紫明せせらぎ公園も、もうじき冬景色になる。
地面には黄紅葉した落葉が重なりあい絨毯のようだ。
紫明会舘の入り口にある古木の桜も美しく紅葉し、せせらぎ公園の景色にとけ込んでいる。
今月初めは橘始黄/たちばなはじめてきばむ。
柑橘類の橘の実が黄色く色づき始めるころをいう。
冷え込みが深まるにつれ、裏庭のホウチャクソウの葉は黄葉し少しづつ姿を消してゆく。
鉢植えの深紅に色づいたカマツカの葉や少し遅れ気味だが紅黄葉したマユミの葉に初冬の訪れを感じる。

 

p_nono1612b
受け金具

 

p_nono1612c
懐かしい形のストッパーも見える

 

久しぶりにガラス戸棚の汚れを落とした。
二十年余前実家の建替えをする際、生前父が診療所で使っていたキャビネットを引き取り、塗り替えをし、ガラスの部分には器を入れて使っている。
微かに匂う消毒液の匂いは、子供のころの記憶に重なる。
ガラスの棚板を外すと、白く塗りかえた丸い受け金具の形のいいのに眼がいく。
内側を拭くとき以外はガラスの棚板を外すこともないが、受け金具がこんな形だったかとあらためて見つめる今である。

 

p_nono1612d
襖に使っている引手

 

p_nono1612e
ツマミ

 

小さな抽き出しや戸のつまみは、塗り替えた時に取り替えたのだが、シンプルなデザインはかれこれ三十年程前の「Ohshima」のプロダクツで、フロストと名づけられている。
微妙な光沢と深みのある色合いは色褪せることもなく、そのいくつかは現在も市販されている。
和桜の合板を貼った本棚のつまみの引手、建具のガラス戸の引手や2階の和室の襖の引手にもこのシリーズを使っている。
襖に使っている引手は、本来は襖用ではなく木製建具用のものを使っている。
そのため両面に使うと襖の見込み寸法に厚みが合わず、召しあわせる反対側に少しあそびがでる。
襖に使うには一回り大きくヘリも広い。
しかし手が触れたときの感じもよく、数年前に張り替えた色を感じるほどのネズ色の手透き和紙によく似合う。
少し濃いめの紙色だったが時間とともに色も落ち着き気に入っている。

 

p_nono1612f
センリョウの赤い実

 

p_nono1612g
少しだけ残ったヤブコウジの赤い実

 

暮れが近づくと我が家の庭も赤い実で賑わってくる。
今年も沢山の実をつけたセンリョウの赤い実、少しだけ残ったヤブコウジの赤い実、もう少し時間のかかりそうなモチノキの赤い実や、ジュズサンゴの赤橙の実。

この時季、外気は気温の低下につれ湿度も低くなる。
ダニは湿度50%ほどになると動きが弱まって来る。
そして47%を下回ると自ら乾燥し始めるらしい。
気になるものは陰干しにし、からっとさせるのがダニの繁殖を抑えるのに効果がある。
高温多湿の室内環境はダニの繁殖にもってこいとなる。
冷え込む季節だが、適度の換気を心がけることも必要である。

 

p_nono1612h
生垣のサザンカ

 

今月二十一日は冬至。一年で昼は最も短く、夜は最も長くなる。
裏庭の八重のツバキの蕾がふっくらしている。
前庭の白ワビスケの蕾もはち切れんばかりに大きくふくらんでいる。
生け垣のサザンカは、先月の山茶始開(つばきはじめてひらく)を過ぎた頃から咲き始めている。
年が開けてもなお長く咲き続けるサザンカ
冷え込みが増す程に元気な冬の木花たちである。

 

*****

 

Vol.131「endless thema - 126」(16年11月)

 

--------十一月/日々深々なり

 

p_nono1611aギンミズヒキ

 

鉢からこぼれ地植えになった前庭のミズヒキソウ。
白いギンミズヒキに混じり赤も咲き、窓先の石積み近くに列をなしている。
少し摘んで花入れに入れた。花のような顎は朝開き午後には閉じてしまうという。
長く咲いているから少しづつ群れていく。
華やかでないから集まれば花やか。

 

p_nono1611b
とろり豆乳

 

朝、ペットボトルを片手に久しぶりに近所の豆腐屋さんに豆乳を買いに行った。
市販の豆乳と違いとろりとした、混じりっけの無い100%無添加のしぼりたてだ。
気持まだ暖かく感じる。程よく冷えてからいただく。大豆の香りが鼻に抜ける。

 

p_nono1611c
ねじりまんぽのファサード

 

意外と知れわたっている煉瓦斜架拱。
新聞やマスコミでも紹介されているので知っている人も多い。
ねじりまんぽの名で知られる煉瓦造りのトンネルで京都にも何カ所かあるが、蹴上にある観光名所で広く知られるインクラインの下を通るトンネルがある。
4月13日の朝日新聞の「勝手に関西遺産」のコーナーにも登場したねじりまんぽである。
蹴上の交差点を地下鉄の入り口に向かって歩くとすぐ東側に視線に入ってくる、抗口のファサードをポータルと呼ぶが、それをそのまま思わせるような少し凝った造りで、小さなアーチ状の装飾のついた基壇のような腰壁の上に天井アーチの煉瓦が積まれている。
ピラスターと呼ぶ付け柱や袖壁のウイングも設けられている。
パラペット中央には題額がつき、その上下に付くはちまきのような蛇腹の笠石と帯石にも歯状紋という煉瓦を斜め使いした装飾が付けられている。

 

p_nono1611d
天井アーチがねじれているのが分かる

 

p_nono1611e
このくらいの角度が付いています

 

道路や線路とトンネルが直交したものとは違い、斜めに交差すると煉瓦は上を通る線路に直角方向に積むために渦を巻いたようになり吸い込まれるように見える。
天井のアーチと交差角度の具合でねじり具合も異なるが、理屈がわかれば理解し易い。
アプローチの空間やインテリア的に装飾でつくると面白そうだ。

両側の腰壁の煉瓦積みはイギリス積みと呼ばれる積み方が使われている。
天井アーチ部の煉瓦の大きさは一般のJIS規格より一回り大きい実寸220mm×110mm×55mmの長手積みで、正面の出隅は鋭角鈍角とも角度を合わせて焼かれた役物が使われている。
ここは円アーチと思われ、煉瓦の角度は道の交差角度やアーチの大きさにも依るが傾きは三寸五分勾配程ある。
もう心もちはっきりしたねじりに見るほうが吸い込まれる感じで神秘的に思える気もする。

「ねじりまんぽ」の「まんぽ/間歩」は坑道などのトンネル構造をいう言葉らしい。
京都大山崎にある円妙寺橋梁というねじりまんぽは、狭くて立っては通れない程でシンプルな造りらしい。
小さな空間のねじり具合はどんななのか見てみたい。

 

p_nono1611f
ホトトギス

 

裏庭ではゼニゴケが広範囲に生息し、水をやりながら踏むと嫌ではない独特の匂いを放つ。
今年はエルニーニョやら変動した気候のせいなのか、ルリタテハはやってこなかった。
そのお陰ではないにしてもホトトギスがよく育った。
地植えのホトトギスは沢山の蕾を持ち群をなして咲く。
ルリタテハが羽化し舞って行くのが見られないのは少し寂しいが、ホトトギスで満ちているのも季節を想い良いものである。
こんな年もあっていい。
鉢植えのヒヨドリバナも咲いている。
七日は立冬。少しづつ朝夕の肌寒さが深まりつつある。

 

*****

 

Vol.130「endless thema - 125」(16年10月)

 

--------十月/かみな月・・・夜長

 

p_nono1610a
あっと言う間に減ってしまったジューンベリージャム

 

空はめっきり秋いろになっている。うろこ雲が空の高さを際立てている。
十月はかみな月ともいう。
いただきもののジューンベリージャム。ジャムよりさらっとして甘さ控えめですっきり味。
爽やかなジューンベリーの香りと酸味がいい。
トーストやヨーグルトといただく。
食欲の秋とは言うものの、開けるや否や途端にこの始末である。
朝夕は気温も下がるが、少し汗ばむ昼間の日向がうれしい。

 

p_nono1610b
道路陥没の記事の新聞の切り抜き

 

老朽化した下水道管に依る道路の陥没に関する記事が新聞(朝日新聞八月二十九日夕刊)に載っていた。
丁度、この記事の載った少し前に斜向いのお宅のアスファルトの陥没騒ぎがあったばかりで、やはり下水道本管への接続部の老朽化が原因であった。
足を運んで頂いた下水道局員方の対応による近接接続管の確認でわかった。
陥没は老朽化による破損等で水道 mizu-michi ができ、土砂の流出や破損した下水管に流入し、アスファルト下部が空洞化するのが主な原因である。
疑問視する系統をスコープで確認し、すぐに不良場所もわかり翌日修理も行なわれ、後日アスファルトのやりかえが施された。
下水道局の手際のよい対応で事故など大事には至らないで済んだ。

老朽化した下水道の記事に戻るが、国交省によると下水道管の老朽化や腐食が原因の道路陥没は04〜14年度、年平均で4655件発生し、14年度は3313件だとか。物損事故は年10件程あるという。
全国の下水道は1970年代から整備が加速化し、総延長は約46万キロ。
下水道管はコンクリート二次製品であるが目安となるコンクリートの耐用年数である50年を超える下水道管は約一万キロと全体の約2%になり、20年後には約11万キロと10倍以上に増えることになるらしい。
当然、事故は加速度的に増加する。

陥没の背景には下水道管の点検が徹底されないことにあり、自治体の担当職員の減少があげられ埋設ということからもどうしても点検は後回しとなるということのようである。
昨年の11月には下水道法の一部改正が施行され、一定の基準を下回ると5年に一度の点検義務を課せられることになった。
点検職員の不足を外部発注で行なう自治体もある。
また点検用ロボットなどをメーカーと共同開発した場合には国の補助の対象となる。
一歩間違えば大惨事になりかねない。
後回しにせず、まずは点検を徹底する体制が必要なのではないだろうか。

仕事がら何かの資料に成るかどうかは別にしても、この類いの記事の切り抜きもよくするほうである。
増えていく一方の切り抜きは、どうまとめておくのがいいのか頭の痛いところでもある。

 

p_nono1610c
ほんのり琥珀

 

晩秋の空はより高く見え空気は澄み、月はくっきりとし、星は煌々と見える。
よって酒も旨い。
自然農法に依る自然米を使ったほんのりと琥珀色をした甘口純米原酒は、米の風味が鼻に抜けまったりとコクのある口あたり。
ロックが美味しい。甘口だからアテなしの月見酒がいい。
十月八日は寒露。初侯は鴻雁来(こうがんきたる)。
初めに訪れる雁を「はつかり/初雁」と呼ぶ。
十月初めまでの長雨も終り朝露が降るころには、遥でかりがねが聞こえていることだろう。
少しづつ夜は長くなり、庭では虫も囁き、耳を澄ませば深まる秋の風の足音が聞こえている。

 

*****

 

Vol.129「endless thema - 124」(16年09月)

 

--------九月 白露/日々のくらし・・・ 粋々

 

p_nono1609a
アローニャの実

 

カマツカの実が熟している。
なかでもセイヨウカマツカのアローニャと呼ばれているアロニア・メラノカルパで、大きくなると3メートルほどに成長する。
果実はジャムや果実酒などにも使われポリフェノールアントシアニンなどが豊富に含まれている。
アローニャでも赤い実は食用にならず主に観賞用である。
我家の裏庭に置いた鉢植えは小さいながらも少しだけ果実となった。
鳥に食べられる前にどんな味かかじってみることに。
なるほど微かな甘みがあるがかなり渋い。
決して美味しいとは言えなかったが、樹木が成長し大きくなってくれば美味しさも増してくるかもしれない。

 

p_nono1609b
朝日新聞の切り抜き

 

中国大陸から偏西風に乗ってくる飛来物質のことをマンスリーホットライン2014年2月号に少し書いたが、朝日新聞の7月21日の科学欄の「ミチをひらく」に金沢大理工研究域准教授の牧輝弥さんの研究のことが掲載されていたので今回書き留めておくことにした。
牧さんは、大気中を漂う細菌やウイルスなどの生物粒子「バイオエアロゾル」が健康に与える被害に興味を持ち、大気中の微生物研究を9年前から始めたそうだ。

中国大陸から飛来した黄砂にくっついて微生物もやって来る。
黄砂は微生物の「空飛ぶ箱船」だそうだ。

***

「病気を起こす病原菌かどうかはわからないですが、このような菌が未知の病気と関連していないか解明したいです。また、ヤケイロタケというキノコの一種も見つかりました。マウスにヤケイロタケと黄砂を同時に与えた場合、黄砂のみの場合に比べてアレルギー症状が10倍以上も悪化しました。」

「一方で、空を飛んでいる微生物は、無害なものが圧倒的に多いことも我々の研究で明らかになってきました。能登半島上空で採取した黄砂から大豆を発酵させる納豆菌が見つかりました。試しに研究室の圧力釜で大豆を蒸し、この菌をかけて発酵させると、納豆が出来ました。地元の納豆会社にお願いして商品化を実現し、12年から『そらなっとう』として地元で販売しています。」

微生物が人体に与える影響や近隣国など各地で広範囲にいろいろな方法で黄砂を集め観測することで微生物の詳しい飛来ルートなど、越境の実態を解明することが目的であると。

「DNAを解読する装置が飛躍的に進歩し、希少種も多く見つかっています。データが蓄積されれば、微生物の種類から、どこから飛来したかわかるようになります。微生物の組み合わせによって大気の複雑な流れがわかり、天気予報の精度向上にできるかもしれません。微生物の研究は従来、土壌や海洋が対象でしたが、『空の生態系』を明らかにしたいと思っています。」

***

・・・以上朝日新聞「ミチをひらく」より抜粋。
さらなる研究成果には幅広い分野でのますますの展開の可能性があるに違いないだろう。
それと「そらなっとう」は食べてみたい気がしてならない。

 

p_nono1609c
巨峰

 

p_nono1609d
九角オクラ

 

先月の二十一日には町内の地蔵盆が行なわれた。
来年はうちの組の当番と言うことで荷物の受け渡しがあった。
丁度、夏風邪のようなアレルギーのような、私も大気浮遊物によるアレルギーかどうかは別にして、咳と鼻水がつづきしんどいころ、愛知県の半田に住む友人から季節のうれしい便りが届いた。
今年の露地物の巨峰は太陽のめぐみもふんだんに受けたようで甘みとジュウシイさは喉を潤すのに最適だ。 温暖な気候の大府の巨峰を皮ごと頬張る。
新町通のこだわりの八百屋さんで、妻がスターオブデビットというイスラエルの伝統野菜をみつけた。
普通のオクラは星形の角が五つだがこれは九角のオクラだ。
普段見かけるオクラの数倍はある。ふっくらと大きく少し硬め。
オイルで炒めガーリック風味の塩とコショウで味付け。
夜空にきらめく星座は美しく輝きを増し高くみえ始めると、夏もそろそろ終りに近づく。
今月二十二日の秋分には昼と夜の長さが同じになる。
もうしばらくは残暑がつづくが、直にふとしたことで秋の気配を感じるようになる。
日陰はここちよい風を運んできてくれることだろう。

 

*****

 

Vol.128「endless thema - 123」(16年08月)

 

--------八月/立秋そして処暑

 

p_nono1608a
観賞用トウガラシのパープルフラッシュ

 

裏庭に置いた観賞用のトウガラシはパープルフラッシュという。
風通しの良い日のあたるところに置いている。
グラデーションのように、クリーム色、薄緑、薄紫、紫、黒紫の葉をつけている。
葉色にちかい黒紫色の実が出来、熟すにつれて赤みがかって来る。
根が浅いので薄い鉢でも水きれさえ注意すれば充分育つ。
観賞用といってもトウガラシはトウガラシ、実をさわった後は気をつけたほうがいい。

 

p_nono1608b
御神輿の一部を掲げ歩く

 

p_nono1608c
御神輿の衆

 

先月、祇園祭りの前祭の山鉾巡行のあった日の夕刻前に、寺町通りにあるギャラリーで知人のグループ展があり覗いてきた。
丁度、寺町通りを行く白い法被を着た衆たちに出くわした。
聞く所によると、神輿渡御を事前に神様に御知らせする予行みたいなもので御神輿の一部だろうか頭の上に掲げて通って行った。
この後、八坂神社の御祭神であるスサノヲノミコト、クシイナダヒメノミコト、ヤハシラノミコガミがそれぞれ三基の御神輿に移り、八坂神社から四条寺町の御旅所まで氏子区内の別々の道を廻る。
神様が御帰りになる二十四日には後祭りの山鉾巡行が行なわれ、夜半には八坂神社本殿に戻られ祇園祭は終了する。

山鉾巡行は神様が御出になるのに行なわれる。
神の使いの稚児が注連縄を太刀で切り結界を解き、神域のなかを邪気や疫病をもたらす疫神を鎮めるため山や鉾が街を廻る。
そのあと、清められた街中に神様は御出になり、御旅所に一週間滞在される。
御帰りになるときも山鉾が先に街を廻りそのあと御神輿に移った神様がお帰りになる。
古式にのっとり、数年前から後祭りの山鉾巡行も行なわれることになり、八坂神社の祭事は本来に戻った。

祇園祭も終わり暑さも真っさ中。
立秋を過ぎれば、季節の挨拶状は暑中見舞いから残暑見舞いとなる。
昭和二十年八月十五日の正午は、昭和天皇による「終戦詔書」の朗読放送の流れた日である。
暑さとともに、野坂昭如原作のスタジオジブリ制作によるアニメーション「火垂るの墓」を思い出す。
持っていき場のないどうしようもないつらさと悲しみで心痛む作品であるが、純粋で無垢な心も描いた美しさも記憶に残る。

 

p_nono1608d
ギンミズヒキ

 

p_nono1608e
ジュズサンゴ

 

鉢植えのミズヒキは今だ芽も出ていないが、石積みの間に育つギンミズヒキは適度の湿度がいいのか居心地がいのか、驚くほどの早咲きだ。
鉢植えのジュズサンゴは小さな白い花も咲き、実も出来始めている。
一穂に実と花が同時にできる不思議な花だ。
実も熟し秋を感じるころから葉は赤みがかって来る。

 

p_nono1608f
ユウレイグモ

 

十六日には五山の送り火が行なわれ、京都の暑い夏の祭事も一段落となる。
窓際にはユウレイグモがお散歩だろうか、それともお昼ご飯を物色中か。
暑い最中しばらく休憩していたようだが、気がつくとどこかに行ってしまっていた。
今夏はラニーニャ現象で暑い日々がつづく。
今月二十三日は処暑。暦の上では暑さも和らぐ。
もう一息、秋の気配が待ち遠しい。

 

*****

 

Vol.127「endless thema - 122」(16年07月)

 

--------七月/白南風・・・日々のくらし

 

p_nono1607a
フウチソウ

 

p_nono1607b
アゲハチョウの若齢幼虫

 

玄関先に置いたフウチソウが風に揺れている。風知草と書く。
見つけるのが難しい程の穂のような花は、秋風を感じる頃になると咲き始める。
先月号に登場したアゲハチョウの幼虫はどこにいったのか。
うまく蛹となり巣だっていったのか心配である。
レモンの木の葉っぱにはまた新たに数匹の幼虫が生まれていた。
若齢のときはいがいがした茶色をしているが、四五回脱皮を繰り返すうちに緑色した幼虫になってくる。 夏の日差しは南からの風を運んで来る。
木陰を横切る白南風 (shirahae) もうれしい季節になった。

 

p_nono1607c
サラダそら豆ファーベ

 

旬の遠のいたそら豆だが、生でも食べられるファーベというサラダそら豆は少し青臭い気もするが甘みはある。
サヤは湯がいてチーズに挟んで焼くとうまい。
ついでに、そら豆はしっとりタイプとほくほくタイプがある。
早い目の収穫のしっとりタイプは一分半から二分湯がくのがベストとか。
見分け方は豆の肩の凹みが黒くなるとほくほくになる。
黒くなるのは豆が栄養を補給している柄がはずれ酸化するからだそうだ。
この柄は栄養満点になると自然にはずれるらしい。実に自然は巧く出来ている。
サヤを剥いて柄が外れていたらほくほくタイプで三分ゆでるのがベストらしい。
私は皮ごと食べるが、皮の甘みは身の1.5倍あるそうだ。
ちなみにポルフェノールも皮のほうが多いらしい。
サヤの合わせ目の部分が黒ずんでいると、ほくほくタイプになるそうだ。
普通のそら豆のサヤのワタの部分も美味いらしい。
ワタの多いしっとりタイプのほうをサヤごと焼く。とろっとして甘くなるのだそうだ。
豆はそのまま食べ、とろっとしたわたをスプーンでほじって食べる。お試しあれ。
(6月8日放送 NHK ためしてがってんより)

梅雨時に繁殖するのがカビだ。
一般的にカビは気温20℃から25℃で湿度65%以上のときに繁殖し易い。
特に浴室廻りは黒カビが多い。
浴室洗いはざらつきを洗い流し水気を拭き取り、換気扇を廻しながらサーキュレーターで二〜三時間乾かし、カビがなるべく表面に定着しずらい環境にしておく。
水気を拭き取った後は一〜三ヶ月に一度のわりで目地や入り隅や排水溝蓋などに消毒用アルコールをスプレーしておく。
ウチではこれだけだが繁殖は抑えられる。
6月14日の「NHK ためしてがってん」で、黒カビの撲滅作戦を放映していた。
室内は低温や乾燥ではなく65℃の熱風でほぼいけるらしいが難しいので、浴室などは50℃の温水を5秒間、一週間に一度程度当てると表面のカビは死滅する。
そして50℃で90秒間あてれば目地の内部0.2mm〜0.3mmに繁殖したカビも死滅するそうだ。
表面に残った黒ずみは目地シールなどで補修しておく。
「予防は週一 50℃ 5秒、退治は50℃ 90秒」 が目安である。
「日々のメンテが一番、建物の維持管理は早めに!」といったところだろうか。

 

p_nono1607d
イラガ

 

p_nono1607e
センリョウの蕾と花

 

奄美地方は先月中旬に梅雨明けした。
このころに吹く季節風を沖縄では真南風(マハエ)と呼ぶ。
白い砂浜や夏のまばゆいばかりの日差しと重なりあう。
今朝、昨夜の雨で濡れた羽根を乾かしているのか、イラガが網戸に止まっていた。
日も暮れるころまでじっとしていたが、知らぬ間にいなくなってしまった。
前庭のセンリョウの花が咲いている。
朱色がかった赤い実の成るセンリョウだが、一見、見過ごしそうな実のような小さな花は、淡い黄色い蕾からはじけるように頭の黒い白色の丸い花が咲く。
今年も沢山の実が成ることだろう。

世界遺産・糺ノ森に計画された倉庫の行政訴訟が行なわれると報道された。
ふと、マンション建設のほうの騒動はどうなったのかと思いを馳せる。
計画地に隣接して点在する巨大なコンクリートの近代建築や決して伝統的とは言いがたい建物や劣悪とも思える建物も肩を並べ視野を横切る。
周辺の緩衝地帯に建つ建物のことを先に批評し、それにふさわしい整備を促し、その上で論ずる経緯が望ましかったのではないかと思える。
世界遺産としての糺ノ森のバッファゾーンにはこれはダメだろうとも思える建物や構造物その他も点在している。
視線に入るものはその整備もふまえ、糺ノ森から穏やかに町並みへとつづいていく風景が望まれる。

 

*****

 

Vol.126「endless thema - 121」(16年06月)

 

--------六月/初夏

 

p_nono1606a
レモンの花

 

p_nono1606b
アゲハチョウの幼虫

 

少しづつ居場所に馴染んできたレモンの蕾は暖かさにさそわれ咲いている。
食べかけの葉っぱの先にはアゲハチョウの幼虫も大きくなってきた。
アゲハチョウの幼虫は柑橘系の葉っぱを好む。
生まれたての幼虫は黒っぽい焦茶色をしているが、新緑の青葉を頬張りつづけ、大きくなるにつれて葉色になってくる。
背中の黒い縞模様はその名残かどうかは不明だが、巣立って行くのが楽しみである。

 

p_nono1606c
ル・コルビジェのインドとHOME vol.02

 

東京上野にある国立西洋美術館が今年七月に世界遺産に登録されると報道された。
国立西洋美術館ル・コルビュジェ/1887-1965 の日本では唯一の建築である。
コルビュジェの図面をもとに門下生であった前川國男、坂倉順三、吉阪隆正が図面のまとめと監理を行なった。
アーメダバードの美術館同様に「無限に成長する美術館」というコンセプトに基き計画され、後にチャンディーガルの美術館でもこのコンセプトが採用されている。
空間構成上窓が採れないため、内部空間はトップライトやサイドライトを多用した自然光のある空間で計画されている。
1951年、コルビュジェは65歳のときに、独立間もないインド政府からの要望でチャンディーガルの都市に望んだ。
サヴォワ邸/1931 に代表される近代建築の5原則である自由な平面、自由な立面、水平連続窓、ピロティー、屋上庭園やドミノと呼ばれる床スラブを直接柱で支える構造の提案そしてモデュロールで知られているコルビジェだがチャンディーガルという異空間と呼んでいいのか別世界のような街を作り上げた。
インドの持つ特異性を機能させる空間は時代とともに定着している。
シンプルで美しい近代建築とは別のもうひとつのコルビュジェ、と言うよりチャンディーガルの建築群にコルビュジェの進化をみるようだ。
同年代のコルビュジェの代表作でもあるフランス東部ロンシャン地方の丘の上に建つロンシャンの礼拝堂 /1955 はチャンディーガルで創り続けた建築を彷彿させる魂の建築である。

言うまでもなくこの巨匠も小住宅を創るのがうまい。
なかでもコルビジェが妻の為に建てたちいさくて楽しいマルタンの休暇小屋/1951 や、穏やかな午後のひとときのような空気を感じるスイスのレマン湖の畔に建つ両親のために創られた「小さな家」/1924 は優しく創られている。
「小さな家」は鉄筋コンクリート造でありながら驚く程の細長い窓から見える風景や日差し、庭の片隅にある大木の下には高い塀があり湖をながめるためにあけられたピクチャーウインドウのような窓とテーブル。
そして小高いところに猫しか行けないキャットウォークがありその先にある湖の見える小さな猫の為の小さな物見台。
また、母親の愛犬が通りを見るための小さな窓など、コルビュジェの優しさそのものである。
巨匠ル・コルュビジェから学びそして得ることはあまりにも沢山有りすぎる。
機会があるごとに触れていこうと考えている。


【資料】
ル・コルビュジェのインド/彰国社 2005.6
Le Corbusier as Primitive Design/エクスナレッジ HOME vol.02
ル・コルビュジェの全住宅/2001年東京大学工学部建築学安藤忠雄研究室 編
住宅巡礼/中村好文 新潮社
ku:nel vol.18/マガジンハウス
ユリイカ臨時増刊 総特集 ル・コルビュジェ青土社
建築文化 ル・コルビュジェ百科 no.651/彰国社

 

p_nono1606d
ユキノシタ

 

p_nono1606e
ハクチョウゲ

 

p_nono1606f
ハツユキカズラ

 

前庭の窓先の木陰にはユキノシタが咲いている。
毎年少しづつ群をなしてきた。生け垣を抜ける爽やかな風に気持が良さそうだ。
お隣さん側に顔を出しているハクチョウゲも元気がいい。
陽当たりは悪いが生け垣の狭間から小さな花びらが顔をだしている。
石積みの間に植えたハツユキカズラも咲いている。
風車のような花びらは初夏の風が吹くたび、今にも廻り出しそうにみえる。

 

*****