人と自然と建築と

nonobe's diary

Vol.11「endless thema - 7」(06年11月)

-------うちの玄関の脇にある猫額の前庭にメジロがやってきた。

 

この原稿を書いている時期なので11月下旬である。
メジロは近所では見かけたことはあるのだが、
うちの垣根を広げたほどのこんな小さな庭に
やってくるとは思ってもいなかった。
以前から松の木の根元の道路の側溝きわに、
よく鳥のフンが落ちていることがあった。
それも小さな鳥のようだったので、雀だろうと思っていたのだが、
その仕業がメジロ(たぶんそうだと思うのだが。)
だとは考えてもいなかった。
メジロは小さな虫を餌にするだけではなく花の蜜も吸う。
きっと、椿とさざんかがあるので蜜を吸いにやってきたのだろう。
あわただしく枝々のあいだを動き廻っているさまは、
なかなか愛くるしいのである。
こんな突然の訪問者にシャッターを切るのも忘れ窓越しに見いってしまった。
小さな自然はいいものである。

 

 

-------家具の再生

 

●Re design furniture's - 03’

 

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美しい金物
以前に手がけた家具。左はクワの茶箪笥の戸の引き手。
鏡板には京唐紙を貼った。さざ波模様に千鳥の引き手である。
下もクワの整理箪笥で、銅製の引き手は少し赤身を抑えた素銅
(すあか)色に仕上げた。 本体は、二本とも塗装をかけたあとに
一度塗装をおとしペーパーで磨きあげてある。
材質によってはう方法もある。
Remake furniture's

 

 

●Re design furniture's - 03’

 

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今回再生した家具の金物の一部。

 

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磨き上がり取り付けられた金物。

 


いま家具の再生をしている。
無論、実際の作業は職人さんにお願いするのであるが、今回は三本ほど再生する。
そのうちの一本は漆の長持で木部と金物を再利用して
違うデザインの家具にするのである。
あとの二本は金物の仕上げや塗装の種類などを換える予定である。
単に仕上げといっても、その種類や色、光沢の程度などさまざまであるが
少し変えるだけでも別物になる。
まあ、この辺が腕の見せ所となるのである。

古い家具は木質の良いものがある。
そういったものは洗うだけでも十分だが、無垢であれば
表面の塗装を落としペーパーをかけ、材質が違っても
その風合いを楽しむべく仕上げるのもいいと思う。
木の材質に依っては水ペーパーで仕上げるだけでも充分手ざわりがよくなる。
勿論、金物も仕上げし直すか、または洗うだけでもいい。
日用使いの家具であれば手垢ぐらいなら消しゴムでも
れいになるのでペーパー掛けで十分な場合もある。
余程頻繁に使用するものなら汚れ防止程度にvol.1に掲載した
蜜蝋WAXでいいと思うし、仕上げの程度は好き嫌いもあるのだが
せいぜいオイルフィニッシュぐらいがいいかと思う。
いつまでも? 使い初めと同じ状態を好むというのであれば、
最近はウレタンでも下地の感じの残るものもある。
しかしながら、無垢の木はすこしづつ木肌の変化と
色あいを深めるのがいいので、せっかく無垢材の家具を使うのであれば
その辺を考慮しつつ仕上げを決めるのがいいだろう。

古い家具にはなかなか形のいい金物がついている。
材質によっては、磨くだけでそのもののもつ美しさのよみがえる金物もある。
また、表面の仕上げを落とし、色づけの方法や、その艶の具合を変えるのだ。
今回手がけた箪笥のうち、塗りの箪笥は現在もまだ塗りの方法の
検討をしているところであり、もう少し時間がかかる。
雰囲気は、全体を元の色に近い少し黒みがかった溜ぬり風にしあげ、
再上段の戸袋の戸の鏡板だけを生地の感じがでる
赤みのある色に仕上げる予定である。
引き手などの金物は鉄の煮黒味仕上げであったために、
後述の金物と同じくOILで仕上げるつもりだ。それは、風合いを残すため
汚れや錆を落としOILのフィニッシュで仕上げる事により、
本来の煮黒味仕上げに比べ深みのある感じに仕上がる。
古い感じを残しながらより美しく仕上げるにはなかなかよい方法である。

 

 

●Re design furniture's - 03’

 

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金物を取り去り、洗い終わった家具。

 

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素地が傷み荒れている。

 


もう一本の桐の箪笥は、本来の桐箪笥の仕上げかたではないが、
オイル拭きという仕上げにしている。
本来、桐の箪笥はキズやカケた部分を補修するために
胡粉を砥の粉にまぜた「めじろ」というものを塗って仕上げる。
そのために白っぽい感じになるのだが今回は手触りが
充分いい程度にペーパーをかけオイルを塗っただけで、
丁度、木材が濡れたように仕上がり
時間と共に落ち着いた光り具合になっていく。
日本ではなかなか入手しづらいらしいこのオイルは、
日々徐々に光沢が増してくるのだそうだ。

金物は、引き手の持ち手の部分がスズの模様彫りになっており
留め具の部分は黄色みがかった銀色のメッキがされ、
上段の戸袋の戸の引き手も銀のメッキが施されている。
やはりひとつづつ磨きをかけOILでフィニッシュしてある。
2~3分の艶のある濡れ色の箪笥に艶のある銀色の金物が光っている。

これらの金物の修理は協力していただいたKUMAKURA工務店の社長
じきじきの手作業と指導である。
この金物に使用したOILも、かなり特殊なものらしく入手も大変らしいが、
自然のOILなので手に触れるところなどに使っても
特に気にかけることもなくその点は安心である。
勿論、通常はとある別の用途に使用するものらしく、その為という訳ではないが
しっかりと下地に定着し、さらっとした手ざわりに仕上がるのはうれしい。

修理した箪笥はさほど質のよいというものではないが、
手塩にかければ当然質はあがる。二本とも薬品洗いをしたのだがやはり木は痛む。
木肌が荒れてささくれ状になっている。割れている鏡板や開いた仕口など、
指物もできる大工の棟梁のWさんはこの状態から元の状態近くにまで戻してくれた。
職人のなせる業である。

 

 

●Re design furniture's - 03’

 

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上の金物は、箪笥を持ち運ぶのに使う取っ手である。
普段は金物の中に納るように出来ている。
中下段は天板から少し持ち上がってい
てズレ防止の役割もはたすという
優れ物の金物である。

 

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加工場の雰囲気はこんな感じ。
右端にみえるのが、指物も出来る棟梁のWさん。
掛軸入れに作り直した長持は、まだ黒塗の部分が残っている。

 


もう一本の杉でできていた黒く塗られた長持ちは
掛軸入れの箪笥に変貌した。長持ちのふっくらとした上板や側の板を
そのまま使い、塗装を削りとり美しく木目が出るように桐の箪笥と同じく
オイルを塗り込んである。
封じ込められていた木目がいま呼吸をしているかのように語りかけている。
正面の鏡板は黒塗りのイメージを残し、この鏡板をはずすと
内部に掛軸を入れるための桐の箱が三段収まっている。
勿論、金物も磨き上げOILでフィニッシュしてある。
こちらの金物は真鍮と鉄のものがあり鍍金がされていた。
これを磨き、すこし艶のある仕上がりにしたのだが、この銀色にひかる
キラっとした表情がなかなかの感じに仕上がっている。

何故かうまく出来上がるとうれしい。
自分で造っている訳でもないのに何かたのしい。
きっと、この WORKS にかかわった人達もたのしく仕事したに違いない。
決して勿体ないからというのではなく(ちょっとはあるが・・・)、
といって、古きを重んじるわけでもなく(やはり、ちょっとある。)、
まして文化財的価値などあるはずもないが、何か豊かな思いが伝わってくる。
確かに材料は変形を許さないほどに十分乾燥している。
「もの」としてはさほどでもないだろうが「質」はいい。
どの素材をどう生かすか、質をどう捉えるか、
そしてどれだけの気持ちでかかわれるかということだろうか。

 

 

●Re design furniture's

 

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左と中は作り直した掛軸入れ、そして右が桐の箪笥。

 


という訳で、いろいろな方々のご協力でなんとかでき上がった家具たち。
それぞれの持ち場で輝いてほしい。
やっぱり、楽しい WORKS はいいものですねえ。


 

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