人と自然と建築と

nonobe's diary

Vol.12「endless thema - 8」(06年12月)

-------陶器製の釘隠し

 

以前に掲載した釘隠しの焼物がなかなかうまくでき上がったので紹介しようと思う。
(陶芸家のY.S.さんは、第6回の「Y.S.さんの登り窯」に
登場していますので、そちらを御覧ください。)
焼物というものは、いろいろな可能性を含んでいるのかもしれない。
建築に使えそうなことを思案しているところである。
プロダクツデザインとまでいくとコストのことや売れ筋など気になってしまうが、
一件ごとであればかなり自由きままに制作できる。

 

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●Original KUGI-KAKUSI
陶器製の釘隠しです。床柱はクライアントのWさんの思い出の
いっぱい詰まった既存の柱の再利用です。
75mmの長押成は空間を大きくみせてます。
photo TEAM87

 


今回はスケッチだけを渡して制作をお願いするつもりだったが、
Y.S.さんの工房の近くに行ったついでにおじゃましたのが運のつき。

  「ちょっとつくっていったら。」

と、Y.S.さんの一言でモデルの制作を自ら行うはめになってしまった。
まあ形が簡単なのでポイントだけ強調してつくればいいかと思いきや
土いじりには素人の私にとってはめっぽうディテールが気になる。
ここは気もち的にこう反るようにとがらせて、
ここの角度はこのくらいで、この巾はこのくらい。
あ゛~、削りすぎてしまった。最初はしっとりとした感じの粘土も、
つくっている時間がかかりすぎると手の熱で徐々に粘土が乾燥してくるのである。
悪戦苦闘、だんだんと乾いて粘り気がなくなりもろくなってくるのがわかるのだ。
ついには大事なエッジが欠けてしまった。

  「このくらいなら、唾をつけてくっつければ大概は元に戻るよ。ほら。」

とY.S.さん。しかしながら、このまま仕上がるわけではない。あと何工程もあるのだ。
いくらディテールに注意を払ってもそのとおりには出来上がってこないのだ。
自然乾燥させ上薬をかけ窯で焼く。かたちはひずみ、変化する。それも美しく。
ここに予測や読みの感性が加わるのである。 ふむむむ。なんか、かっこいい。

  「粘土あげるから、いろいろつくってみたら。」

なんとも、簡単に言ってくれるではないか。喜び?勇んでいただいて帰った。

 

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●Original KUGI
形と上薬、焼け方、鉄分の入り方やつやの関係は微妙に影響しあう。
写真では分かりづらいでしょうが、それぞれに違う資質をもっていて比べると面白いです。
説明するのが、本当に難しいのです。

 


数カ月後、モデルをもとに何個か作成してもらった釘隠し、
出来上がったということで工房に出向いた。
なるほど、出来上がった釘隠しはやはり同じものはふたつとなく、
いろいろな表情で語りかけてくる。
艶の感じ、上薬や貫入の状態、鉄分のはじけ具合。
特に、Y.S.さんの粘土は完全に生成をしたのではなく、
適度に鉄分を残し焼くとはじける。
あまりはじけ過ぎたものは商品にならないらしいが、
私などは、はじけ過ぎたと思われるものも好きだ。
そして、性懲りもなくこの前いただいていった粘土で造った
自作の少し違うデザインのものを手渡し、
窯に入れて貰う約束をし、帰路についたのである。

この釘隠しは、竣工祝いとして設計者からのクライアントへのプレゼントである。
数日後、その中から住み手である
クライアントのW.T.さんに好みのものを差し上げた。
W.T.さんの家の話しは、計画を始める頃のことをvol.1にも少し書いたが、
後号にて詳しく紹介しようと思っているのだが、
和室の襖には和紙に版木で押した京からかみという唐紙を使ってある。
この唐紙、数年前まではベースとなる
和紙の色や版木のほうの色を自由に頼む事ができたが、
いまではごく僅かの決まった取り合わせしかない。
それは、江戸時代からある版木自体が磨耗して、
色を変えるとそのたびに版木を洗う事となりいたみ、
というよりもうすでにいたみが激しいらしく対応できないということらしい。
使う側からすれば、残念なことであるのだが・・・。

何はともあれ、建築という媒体はいろいろなことに関われ、そして経験し、知識となり、
新たに可能性を追い求められるのは嬉しくもある。
取り付けられた釘隠しは美しく存在感を示し、そして微笑みかえしてくる。

 

 

 

-------ここでお知らせです。



第9回に掲載したパン屋さんの「kiitos」の場所をいろいろな方から聞かれました。

 ----場所どこ?
 ----どうやっていくの?
 ----なんで地図はないの?
と言われても、グルメ雑誌でもなければCMでもないのです。
しかしながら、熱心に読んで頂いているとよくわかりました。
という訳で、感謝?をこめて地図掲載します。

 

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kiitosの前の道を挟んで向いの食堂の窓先で揚げ物をしております。
ここでコロッケを買い、kiitosで円盤型のジャガピタを買い、急いで家に帰り、
キャベツを千切りにしてはさみ、
お好みでウスターソースをかけてお召し上がりください。
但し、食堂はお昼からですし、
kiitosのジャガピタも焼けているか確認してから買いに行ってください。

なぜか、今回はこんな調子で終わってしまいます。



 

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