人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.17「endless thema - 12」(07年5月)

 

-------内と外の関係

 

内と外との関係は、永遠のテーマでもある。
それは内と外との間にある空間をどのくらい膨らませるか、
または創り出せるかが私の建築の善し悪しを決定していると
言ってもいいくらいに存在する。
緩慢緩味な私の性格に類似酷似しているのは別として、
とりわけ形態はどうであれなにかが存在しているその空間に
私はとても興味がある。
それは三次元的に大なり小なりと言うものではなく、
心的に存在しているか否かというどちらかと言えば
自己満足的な要素を過分に含んでいるように思われる。
もともと建築と言う行為自体がそうであり、結果論的でもある。
ゆえに理論は多分に結果に依存し結果から理論を抽出する
ことも可能である。

・・と訳のわかったような何を言っているのか分らない言い回しで
建築を奏でるのはしんどい。気楽に創ろうよっていう言葉が
脳裏のどこかで聞こえてくる。

今回は昨年完成したお宅のゴールデンリトリバーの
ノックスに話を聞いた。

 

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-------ぼくのうち

 

僕の名前はノックス。ノンちゃんと呼ばれている。
僕と同んなじのんちゃんっていうおじさんが僕んちを設計したんだ。
いつもは大きな軒のある木製のデッキの上でのんびりと過ごしている。
大きな軒があるおかげでとってもいごこちがいい。
穏やかな日差しと風が抜け、ついウトウトとしてしまう。
ガラスドアごしの玄関にやってきたお客さんが見える。
窓ごしにも部屋のなかが見える。お気に入りのお客さんには
しっぽをバンバンふってご挨拶。
み~んな痛がってるみたいだけど、これは僕にとって
親愛の情なんだ。

 

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ご主人さまの出かけているときは、ときどき家のなかに
入れてもらえる

和室と2階には行かないと思っているのはご主人さまだけのようで、
ご主人さまがいないときは自由に家の中をうろうろしている。
だから僕は家の中のことをみ~んな知っている。
階段を上がって寝室の天井まである大きな入り口のガラス戸をあけ、
書斎を通りクロゼットを抜けると北側の洋室にでられる。
この部屋は天井が吹き抜けていて開放的に作ってある。
専門的には登梁風の化粧垂木だそうだ。
その化粧垂木が大きなテラスから陽だまりの小さなキッチンのある
階段ホールをへてこの部屋までつながっているのだ。
だからぐる~っと一周できる。ぐる~っと廻る間にいろいろな
窓からそれぞれの景色がみえ、僕はとっても楽しい。
楽しいから何回でも廻ってしまう。ご主人さまには内緒だ。

 

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2階にある大きなテラスもとても気持ちがいい。
道を隔てた公園に面したルーバーからは、光と風が抜けてくる。
テラスには六尺ほどの高さの壁がありそこに四角い穴があいていて、
そこから見える景色は絵のようだ。

ル・コルビュジエという建築家が1924年につくった「小さな家」の
レマン湖を眺められる四角い穴に似せてあるのだそうだ。

太陽がのぼりそして沈むまで、どこにいても楽しく、
のんびりと一日を過ごせる。そして自然が語りかけてくれる。
僕にとってしあわせな日々である。

 

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