人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.20「endless thema - 15」(07年8月)

 

-------我が家の暮らし/ここちいいもの その2・・・葦戸

 

夏が近づくと京の町家は葦戸に入れ替えをする衣替えの時期である。
京的に言うとしつらえというのだろう。
最近では少なくなったようだが、京の昔は夏支度に追われる時期だ。
我が家も葦戸がつかわれていたところを残してある。
普段はスリ硝子の戸を入れてある。
それは、間口が狭く奥行きが深い縦長の京の町家は、
なかなか光りが届かないせいもあり、
普段は拡散した光を得る為にスリ硝子の戸をいれたのである。
もちろん真冬のすきま風を遮る為でもある。

 

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我が家は、京間の1間が引き違いとなっているので、
幅六尺三寸(1909mm)成五尺七寸(1730mm)だ。
ガラス戸はピーラー材(※ピーラーはヤニのないきめ細かい目の
米松のことで、陽にやけ、時と共に美しいあめ色となってくる。)
で建具見込み33mmある。幅三尺二寸ほどに一枚ガラスの
スリ硝子5.5mmをいれてあるせいか半端な重さではない。
重すぎるガラス戸は女房では入れ替えは無理で私がするのだが、
なかなか入れ替えも毎年と言う訳にはいかない。

ことしは頑張って葦戸に入れ替えた。
いくつになるまで自分でできるだろうか?心配もある。
年中ガラス戸でもいいといえばいいのだが・・・・。
葦戸は京の夏のらしさを感じ、猫びたいの前庭に水まきでもすれば、
葦戸を通してひんやりとした空気を感じる。
ん・・・きもちがいい。特に夕刻の暑さは和らぐ。

祇園祭山鉾巡行のあとは真夏日和のはずが、
今年はなぜかこの時期になかなか天候がすぐれない。
まぶしい程の常夏の暑さや夕暮れどきの蒸し暑さ。
待ち遠しい気もするが京の暑さは半端でない。

 

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●内の薄明るさは葦戸を通して外の気配がわかる。

 

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●スペイン産の自家栽培のアーモンド。殻を割ってほおばる。
 この動作がいいのかもしれない。

 

昼間は内より外が明るいため葦戸を通して外の気配が幽かに感じる。
ただよう空気も違う。
夏のきざし。
普段は生け花おきにしている団扇置きに団扇をのせる。
これだけで気分は上々。
ついでに冷たいビールでも。
写真のアーモンドは知り合いの先生の事務所で
スライド会、いや飲み会?があったときに頂いてきた
スペイン産の自家栽培のアーモンドだ。
殻を割ってなかの実をいただく。かたちは歪だが旨味がある。

ささやかな我が家のここちいいもの。ちょっと癒されたかも。(2007.7)

 

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