人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.47「endless thema - 42」(09年11月)

 

-------畳/グッドテイスト

 

人づてで、以前にテナントで借りていた
ビルの取り壊しが始まったことを聞いた。
まあ耐震的にも問題が有ったし特にアスベストが使われているビルで
使うに使えないという状況があることは仕方のない事で、
少し寂しい気がするのは当事者だった者だけだろう。
新しい何かが建って景観も変わり目新しさもしばらく、
それがずぅ~と前からそこにあったかのように記憶されて行く。
近所でも更地になっているのを見て
前は何だったかなと考えてもなかなか思い出せない。
写真でもない限りは前のことは忘れ去られていく。そういうものだ。

 

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ホトトギス

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毒キノコ?

 

近頃は街角でもよく見かけるようになった山野草ホトトギス
漢字で杜鵑草と書く。
うちは少し遅めで庭のあちこちで咲いている。
強い日差しをさけ湿潤な場所でよく育ち、11月初旬が見納めだろう。
赤紫色の斑点が杜鵑の胸の模様に似ている事からこの名があるのだとか。
水やりをしながら植木棚の鉢をずらしたところ、鉢の脇からキノコがはえていた。
キノコの図鑑でも有ればこんなときに役立つのだが、
毒キノコ?かも知れず、そのままにしておくことにした。

 

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大徳寺 本坊

 

近くの大徳寺にお出入りの畳屋さんに畳の話をしてもらえるということで、
本坊の虫干しにいって方丈を参拝して来た。
伝統的建造物である堂宮や町家などで使用する畳床は
ワラ床とよばれるワラだけを使ったものが多い。厚みは一寸八分程である。
ここ大徳寺方丈は二寸八分あり、驚く事にワラ床自体は
寛永十三年のものがあり今でも使われているという。
板敷きのハードなタッチに比べ微妙に手応えのある柔らかさが足に伝わる。
直に立ったり座ったりとそのやわらかい感触はさすがにいい。
それは現代のものに比べてかなりやわらかい。
畳屋さんの話によると年代を経ていると言うだけでなく、
座布団の習慣がない時代でやわらかいのだとか。
現存以外の畳の硬さもこれに合わせるのだとか。
これが大変な仕事らしい。
写真は綿や麻で織られた畳縁と一尺角のお茵(おしとね)。

 

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畳縁1

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畳縁2

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お茵(おしとね)

 

今でもワラ床は使うが一般住宅等では化学畳と呼ばれる
スタイロフォームなどの芯を使用したものが主流でちょっと硬いが、
その種類は豊富で多種に及び使用に際しては
目的に合わせ好みのものを選択するのがいいだろう。

私も畳は好みである。
畳=和室と考えている訳ではないが、洋間ばかりの住居をみては
「年とったら畳が恋しくなるから、和室は必要。」
などと若い頃からよく口にしている。
ごろっとなる感覚はソファーでは決して味わえないし、
寝っころがるという日本人独特の感性である。
足元から伝わる心地よさはフローリングやカーペットの類いでは決して味わえない。
勿論、座るにも歩くにも手頃なやわらかさでグッドテイストだ。
素足にい草。あらためて伝統文化のしたたかな
継承ときめ細やかな魅力に心を揺らされる。

 

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