人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.75「endless thema - 70」(12年03月)

 

--------結露/待ち遠しいかぎろいの朝

 

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紅菜苔

 

紅菜苔(こうさいたい)。
アブラナ科の野菜だ。紫色の茎は冬のイメージ、
二月いっぱいぐらいまでが旬らしい。
芽のところを摘んで硝子器に。黄色い菜の花色の花が咲く。

寒冷前線が南北に走り、日本列島の各地に大雪をもたらした。
うちの辺りでも十センチ程積もった。
純白の雪景色は、気分を爽快にしてくれる。
屋根に積もった未融けの雪は二日三日残っていただろうか。
ある朝サンルームのトップライトに驚くほどの結露が生じていた。
零下三度~四度と冷え込めば、気密性の悪い古家でもさすがに結露をおこす。
つづけて二回ほど水滴が床に落ちるほどに結露した。
これほどの結露は初めてのことのように思う。

 

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庭の雪

 

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大粒の結露

 

トップライトには硝子の代わりに
板厚9mmのアクリル版を直接木部に嵌め込んである。
トップライトの屋内側表面温度と外気温の関係が露点温度を決定する。
トップライトの勾配は一寸五分ほどで、水下にスリットを設けてあるのだが、
このスリットから外気が入り飽和寸前の表面の空気を冷やしてしまい
結露する可能性もある。
アクリルは硝子+シートに比べても熱貫流率は小さく、
それでも天井面は壁面ほど気流が生じにくく、
ぬくまった湿った空気がとどまりやすい。
スリット近くの壁面の開口部には硝子を用いているが、
こちらはそれほどの結露はない。
スリットが多少たりとも廻りの空気を動かしているようにも思う。
貫流率は材厚によって違うので、それぞれの熱伝導率で比較すると
一般のフロート硝子1に対してアクリルは0.2程である。
ちなみに、アルミの熱伝導率は200ぐらい、自然木材は0.15程度である。

 

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トップライト

 

空気の単位当たりに飽和される水分量は温度により決まっている。
定量以上の水分を飽和した空気が冷やされると水滴状となる。
この状態を結露と呼び、そのときの温度を露点温度と言う。


ほどほどに天気が良ければ、窓を全開にし換気扇を回しておけば
多少の結露は意外と早く自然に消えていく。
結露面にサーキュレーターなどのファンを使って
直接空気を動かすのもよい方法である。
結露を無くすのは難しい問題で、生活状態や使用状況によってまちまちである。
ちょっとした工夫や無駄なエネルギーロスを抑えるようなスポット暖房などの多用や、
生活習慣を今までと少し変えてみたりすることで結構いい結果をもたらすことがある。
閉めっぱなしのままの状態が長く続くのは好ましいことではない。


今までトップライト以外は、ほとんどと言っていいほど結露したためしはない。
古家のためか外気の影響が大で、冬は屋内の温湿度自体さほど上がっていない。
一階にある東の庭に面した床からの全面の窓も不思議と結露したことがない。
この部分の床は縁側の様な造りにしてあり、
窓から二尺五寸程控えた所に布基礎を設けてある。
壁面全体が木製建具の窓で気密性に欠け、
敷居等の隙間からの外気の流入などが考えられる。
その為か暖房時にペリメーターゾーンと言われる窓周辺の屋内側の温湿度が
思ったほど上がっていないのではないかと思う。
一般的には足元あたりからの外気によって表面温度が冷やされ
飽和状態の空気に接し結露と言う事になるのだが、
飽和状態になるより先に外部からの乾燥したすきま風で緩和されることで、
露点温度を下回るほどにはならないのではないだろうかと考える。
結露といういささかややこしい問題は、
こんな屁理屈的考察でもしないかぎり結論付けることは難しい気がする。


今年は、蕾のままで年を越した八重の椿が二芽も出ている。
気まぐれなこの八重の椿は咲いたり咲かなかったりとマイペースだ。
家内曰く、たいがいの生き物は飼い主に似るそうな。
このまま気分を損ねる事なく上手く育てば三月末には咲くだろう。
窓際のクリスマスローズもゆっくりと日増しに大きくなってきた。
霜天の寒さから移ろい、かぎろいの揺らめく日が待ち遠しい。

 

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クリスマスローズ

 

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八重の椿

 

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