人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.86「endless thema - 81」(13年02月)

 

--------緋/綺譚

 

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スイート・スプリング

 

年明け早々のらでぃしゅぼーやの梱包には柑橘系のスイート・スプリングが入っていた。
温州みかんと八朔を掛け合わせた品種で、市場にはほとんど出回らないのだとか。
春の訪れを待ち望むのかのような爽やかですっきりとした薫りが鼻を抜けていく。

南大東島では先月一月八日に緋寒桜(ヒカンザクラ)の開花が確認されたと聞く。
昨年より十三日も早い開花だとか。緋色(ひいろ)の小さな花が寄せ合うように咲く。
本来、緋(あけ)とは日本の傳統色で褐色がかった赤色のこと。
マンセル表示で 8.5R 5/12 である。英国名をフレンチ バーミリオンという。
※京都書院アーツコレクション---⑤「日本の傳統色」長崎盛輝著 平成9年版---参考
緋色(ひいろ)は一般的には深紅色、スカーレットなどで表されるように、緋寒桜の花色も華やかな赤色や濃桃色である。まだまだ春は遠い。

 

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家守綺譚

 

正月に知人の三木さんから頂いた賀状に、夫人のメッセージで梨木香歩の著書「家守綺譚」のことが添えられていた。
自然豊かな庭やアトリエのある住まいで暮らす三木ご夫妻。
しばらくお会いしていないが、近況のメッセージに添えて書かれていた。

その「家守綺譚」が少し気にかかり私も読んでみることに。
あらずじは行方不明で戻らない親友の古家を多少小心な主人公が管理することとなり、そこで暮らすなか、怪奇な現象や世界を徂徠しつつ、現実のなかで当たり前のように受け止めて暮らす姿を四季の自然と摩訶不思議な空間で描かれている。

床の間の掛け軸からボートに乗って現れる親友、百も承知の隣のおかみさん、近くの山寺の和尚、言葉の分かる犬、擬人化されたサルスベリ、河童、狐に狸、白竜、鮎の人魚、啓蟄にふきのとうを摘む小鬼、釣りをするカワウソ老人、その他、などが登場する。
文庫カバーの裏表紙のコピーには、「天地自然の気たちとの、のびやかな交歓の記録」(裏表紙本文からの抜き書き)と書かれている。
タイトルとおり家を守るなかで起こる不思議な物語だが、非現実的な隔たり感のないファンタスティックでナチュラルな表現で描かれている世界感には違和感がない。

この主人公のように自然体と平常心で過ごすことを肝に命じたい。
柳は緑花は紅と言うように自然のままの心構えは大切なことに思う。

毘沙門さんや旧東海道に疎水など京都山科辺りの設定で、なじみのある土地感も幸いしてか何故かみじかな感じがする。
物語のあたりは私の母方の親戚筋で今は閉められたが古くからの薬屋さんを営なみ、その息子さんは妻の叔父さんたちと幼い頃の遊び仲間であったりとなんとも不思議な繋がりもある。
この本に出会うのも、綺譚とまでも言わないまでも何かの縁であったのだろう。
もう二度三度読み返すつもりでいる。

 

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クリスマスローズ

 

裏庭のクリスマスローズの花芽も少しずつ膨らんできた。
家の廻りは少しだけ春景色の空気が漂い始めている。
開花までにはもう少し時間がかかるが、小さな蕾はほっこりとした長閑な日和を待っているようだ。

 

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