人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.87「endless thema - 82」(13年03月)

 

--------啓蟄/菜の花色

 

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サツマイモの発芽

 

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菜の花

 

のんびり屋さんのサツマイモは、部屋の暖かさで発芽はしたものの、寒さに気づいて驚いたのかなかなか大きくならない。
らでいっしゅぼーやから届いた菜の花は、先を摘んで硝子器に。
昨年も同じことをした記憶がある。
生け方は違うがつい変わらぬことをしてしまう。
沢山の蕾は菜の花色で硝子器の口元いっぱいに満たされるだろう。
季節を感じ、季節を想う。
時の経過は啓蟄から春分へとおだやかに過ぎてゆく。

啓蟄(けいちつ)とは、冬の間眠っていた虫たちが目を覚ましゆっくり動き出す頃をいうのだが、虫やカエルや小鬼たちはもう少し穏やかな暖かさになってから体や角を動かし始める。ん?
先月号に書いた「家守綺譚/梨木香歩著」に登場する啓蟄にふきのとうを摘む小鬼の「ふきのとう」の一編を思い出してしまった。
人生いろいろな人との出会いと、手を差し伸べ、また差し伸べられて過ごしてゆく。
自分のこれからの人生で何が出来るのだろうかとふと考えてしまう。
少し前だが、TVで「仕草」は昔は「思草」と書いたと聞いたのをふと思い出した。
「思草」は思いやる振る舞い。
江戸しぐさ」は「思草」と書く。
江戸しぐさには廻りを気遣った思いやりの言葉が沢山ある。
江戸っ子の暮らしぶりを想わせる言葉である。
「思草」、いい言葉である。

 

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PAT METHENYのCD

 

原稿を書きながら、部屋にはPAT METHENYのカバーアルバム「WHAT'S IT ALL ABOUT」が流れている。
バリトンギターのソロアルバムである。
アルバムにはバリトンギターの他に42-string guitar 、6-string guiter、nylon-string guiterを使った曲も収録されている。
42-stringというのは42弦ということなのだが説明が難しい。
それは、6弦のネックに交叉したフレットレスの低音12弦ネックが二本、それに12本の弦が斜めに設けられたというギターである。
アルバムはこの42弦のギターを使ったS&Gの「THE SOUND OF SILENCE」から静かに始まる。
その微かに響き合い溶け合うサウンドは静寂の響きだろうか。
バリトンギターの音は長弦を生かしたチューニングとアレンジで構成される。
巾のある音域と奥深い音色は特有の響きがある。
そしてナイロン弦を使ったビートルズのナンバー「AND I LOVE HER」の重なりあう美しい和音はシェリー酒が似合いそうだ。

日本版のCDには嬉しいことにサービストラックとして、ジャズのスタンダードナンバー「'ROUND MIDNIGHT SILENCE」とミュージカルナンバーから「THIS NEARLY WAS MINE」の二曲をバリトンギターの演奏で聴かせてくれる。
どちらもチューニングの妙と美しい和音そしてアレンジメントのすばらしさで聴かせてくれる。

夕闇も少し深くなりつつあるころに、経験や学んできた知識や理性などの位置で理解することなく、ただ深層の心理や感覚にある部分で融けあっていくここちいい響きは、ご機嫌だ。

 

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スノードロップ

 

生け垣の刈り込みやぼさぼさ頭だった松の剪定と小庭の支度も済んだ。
前庭のスイートドロップの蕾もやっと首をもたげ初めた。
少しづつだが、気持ちも外へと向かってゆくうららかな季節が始まる。

 

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