人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.90「endless thema - 85」(13年06月)

 

--------新茶の季節/残す

 

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ハツユキカズラ

 

ついこないだまで日向を選んで歩いていたのに、今では木陰を通り抜ける風がうれしい。
生け垣の足元には風車のようなハツユキカズラの花びらが日向で陽をいっぱい浴びている。

 

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ハクチョウゲ

 

毎年少しづつだが花を増やしているハクチョウゲは半木陰が好みの様子。
生け垣の間を抜けてくる風にそよいでいる。
少し摘んで机の上に置いてみた。

 

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新茶

 

先立て静岡の友人から新茶が届いた。
さっそくお湯を沸かし粗熱がとれたぐらいの加減のぬるめで煎れる。
甘みと旨味と薫りが季節を伝えてくれる。
湯冷ましを使って水だしも煎れる。
水だしはつめたく冷やした冷水で煎れる。
少し贅沢な気もする新茶の水だしだが、すっきりとしたのどごしとほのかな甘みは旨い。
(バックナンバー2011年6月号も合わせてご覧下さい。)
旬のものは気持もゆかしくしてくれる。

 

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洋風モダン住宅

 

近所に前と奥に二軒建っている大正か昭和初期かそんな古い洋館風の和洋折衷の木造の住まいが残っている。
奥の一軒は小さなショップで以前に覗いたことがある。
日本瓦の小さな門をくぐり、路地風のアプローチにはお客を迎えるしつらいがある。
アプローチからのアイストップとなる小庭を正面に右手に玄関があり、玄関ホールから応接室辺りをショップにしてあった。
玄関の踏み込みには綺麗なタイルと幅木に細い縦長のタイルが張られ、黒光りした縁甲板や柱が古き時代を思わせる質感であった。
何日か前の休みの日に手前の道路側の建物にシートが張られ解体らしきことが始まっていたのを目にした。
少し気になり休み明けに覗きにいってみることにした。
解体はまだ始まったばかりのようで、解体業者さんの休憩中にちょっと声をかけてみた。

「取り壊しですか。」
「いや、一部だけだよ。」

返って来た職人さんの返事に少しほっとした思いがした。
和風の町屋はこの地域でもまだまだ多いが、洋風のモダン住宅は数える程だろうか。
質のいい造りの建築物が取り壊されていくのは心もとない。
撤去されたところから奥の座敷らしきが見える。
暮らしに合わせての改築だろうか。
またしばらくして様子を見に来ることにしよう。

先月号でも残すという行為のことに触れたが建築にはつきものであることが多い。
新しく生まれてくるアイデアは以前と変わらぬ居心地の良さに溶け込み、先へと継がれていく。
空間は違っても潜在意識に宿る心地よさを創ることは常に課せられたテーマとなる。
古きものへの思いやる心と敬意がイマジネーションを湧かせ、つながりを生み出していく。
数少ない洋風モダンな住まいは町並みにも似合っている。
綺麗に薄化粧を施され、以前と変わりませんよって顔をして景観を形成してゆくことだろう。

 

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ミヤコワスレ

 

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セキチク

 

ちょうど一年程前に亀岡の吉井さんにいただいたミヤコワスレが花を咲かせた。
裏庭の板塀沿いになかまを増やしているシラユキゲシの合間から、碧緑とした葉をいっぱいに青紫の花とうす紫色をおびた白色の花が季節をつくろう。
汗ばむころ半袖で伺ったことを思いだしながら、やはり半袖姿で水やりをしているこの頃である。
鉢植えのセキチクの白い花は撫子の類だが小ぶりの花は秋口まで咲く。
しばらくの間は、むしばむ日向も涼しく見せてくれることだろう。

 

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