人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.98「endless thema - 93」(14年02月)

 

--------二月/春の足音

 

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雪解けに足跡

 

年開けにうっすらと初雪が積もった。
雪の朝は空気も澄んで気持ちがいい。
屋根に積もった融けかけの雪の上には何者かの足跡が残っている。
昨晩何者かがドタンバタンと夜遊びをしていた音が聞こえていたが、きっと其奴の痕跡だろう。
裏庭にあるサンルームから見える隣の屋根にも何者かの足跡が見える。
きっと夜遊び好きのイタッチィに違いない。
水辺の近くに住穴をつくるというがどこに住み着いているのだろう。
寒さもまだまだ、炭を熾してお湯を沸かしたくなる。
妻が芋ようかんを作ったので、早速炭熾しを使って熾す。
ぱちぱちと微かに聞こえる炭の熾り声。
春を呼ぶ声のようにも聞こえる。

 

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芋ようかん

 

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炭でお湯を沸かす

 

京都東山の建仁寺には希少な鐘楼がある。
数年前に解体修理が施されたということで真新しい姿を見せてくれる。
六本柱に白い漆喰の外壁が設けられた少し珍しい鐘楼である。
平側のそれも間中ではなく少しずれたところに柱があり梵鐘(ぼんしょう)を釣る部材がその柱の上部に渡されている。
妻側の棟の位置に柱が設けられたり外壁の板張りの半鐘の鐘楼や多層の鐘楼は多い。
鐘楼の大きさはほぼ梵鐘の大きさと関連があるのだが、梵鐘を撞くときの動きから片側の柱間を広げてあるのだろう。
鐘を撞く鐘木(しゅもく)と言う木の出ている四角い窓もあり、梵鐘を撞く最小空間であろうか。
軒の出が少し小さいようにも思うが、飛貫から上部がスケルトンとなっており組み物が施され、緩やかな屋根はゆったりと見え、なかなかいいプロポーションに見える。
境内には四本注に板張りの半鐘の鐘楼もある。
こちらもミニマム空間だ。
古来から寺院で行われてきた時を知らせる鐘の音は今も受け継がれている。
以前、事務所のあった御所南では夕刻の五時ころになると寺町通りのお寺の鐘の音が聞こえていた。
どこか心地よい響きであったことを記憶している。

 

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鐘楼1

 

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鐘楼2

 

先月号にNHKのデーター放送でPM2.5の浮遊状況を確認出来ると書いたが、少し前にNHKのニュースウオッチ9の特集のなかで滋賀県立大学の永淵修氏は

「研究調査で雲仙普賢岳の霧氷の水銀濃度が高まっている。PM2.5で問題となっている北京や天津あたりを通って吹いている北西からの風に乗って水銀も同じく浮遊してくるのでは。石炭にもともと含まれた水銀が燃焼した際に気体として放出されるのではないか。中国では十分検討されないまま大気中に放出している。」

と話されていた。
同時に報じられた埼玉県環境科学国際センターでは越境大気汚染物質の調査が行われている。
現在日中韓で共同研究が継続中だとか。
同センターの話しでは

レアアースのひとつであるネオジムに注目している。昨年一月二十三日に加須市PM2.5濃度の上昇の際にレアアース濃度(レアアースLa系列のうちLa~Lyまで)が上がった。北京のPM2.5中で見られたレアアースの成分の比率が、北京北西600キロにある鉱山で産出のレアアースの比率に似ている。鉱山近くの空気が北西風に乗って流れてきているようで、越境してくる汚染物質の性質やルートをさらに明らかに。越境大気汚染物質がどのように流れてくるのか、どういう経路でくるのか正確に知ることができる。そして、どういう対策が必要なのか考える為の情報として活用してもらえれば。」と。

うちのトップライトを注意して観ていると、小雨の後に黄砂のような浮遊物質の痕跡のようなものが残っているのが確認できる。
それを思うと大気中になにかが浮遊していると考えたほうがいいのだろう。
地球が回転している以上、発生源より東にある日本では根本から制御しない限り防ぎようのない問題である。
いざこざばかり起こしていないでお互い協力し合い早期解決に向かってほしいものだ。
この先黄砂を含む越境大気汚染物質を幾世代にも渡り監視しつづけていくことになるのだろうか。

 

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スノードロップ

 

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クリスマスローズ

 

冬の穏やかな日差しの中でスノードロップの芽が出ている。
寒さも際立つ頃に芽が出始める。
早春の兆しと言われるように春の訪れとともに咲き始める。
クリスマスローズの芽も少しづつ大きくなってきた。
気がつくと今年ももう二月の声を聞く。
遥か遠くで微かに春の足音が聞こえるようだ。

 

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