人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.103「endless thema - 98」(14年07月)

 

--------七月真南風/調う

 

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白いイワタバコ

 

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青紫のイワタバコ

 

妻の実家からイワタバコを頂いてきた。
ひと鉢は白、もうひと鉢は青紫。
谷川の岩場などに生息する山草で、直接日の当らないじめっとした日陰を好む。
庭は剪定したてで生け垣も小さっぱりとなり、風通しもいいし陽当たりもいい。
当然木陰もない。突然の環境の変化か、花は開いたものの少し元気がない。
庭を見渡したがいい場所がなかなか見当たらない。
しばらくは窪んだ場所において様子をみることにした。
鮮やかな青紫のイワタバコの花姿はなかなか綺麗だ。
花景によく似合っている。

 

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クーネル

 

今日は日差しも穏やか、窓から入る風に一息つきながら机の上に置いてあったku:nel 68号の特集「料理上手の台所」をぱらぱらと捲っていた。
掲載されている写真に映っている光景からはシンプルな暮らしが想像できる。
必要なものは置かれているがどこも美しく整っているように見える。
そしてそれらはそれぞれの居場所に大切に納まり、使い込まれたもの達への愛着も感じられる。
磨きあげられ整理され時間とともにオンリーワンへと変わっていくのだろう。

今時のキッチン事情は、家具のような流し台、ものを置かないLivingのような台所といったところだろうか。
しかし建築空間には家具調度品の他に存在する様々な物品が点在する。
それも含めてどれだけ生活感をイメージすることが出来るかということが必要である。
特別に住空間だけを取り上げての話しではない。
物を置いても美しい空間、というよりは空間は物を置きながら完成していく。
そして使い込む程に成果も出る。
美しいというよりは素直に調うという言葉が的確だろうか。
台所には調理道具のたぐいや調味料など必要なものはわんさと有る。
素直に置かれ素直に掛けられ、自然と調う。

ku:nel のページを追いながら、新しい古い広い狭いといったことはさほど重要なことではないということのように思える。
やはり、キッチン廻りでの心使いは吸排気や換気そして温湿度の調整といったことをさりげなくコントロールできる空間かどうかといったことだろうか。
NHK土曜ドラマ「55歳からのハローライフ」という村上龍原作のドラマの中では、映像の美しさと生活感ある自然な住空間の表現には暮らしの上質な感じが表現されていた。
映像とともにバッハのカンタータBWV147が静かに流れ、いろいろなしつらえが調いよどみのない住まいのイメージが創り出されていた。
心のどこかに引き出しがまたひとつ生まれた気がする。

 

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壁際にスリットが見える

 

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エアコンの吹き出し

 

少し前に新幹線のぞみに乗った。
カモノハシと言われる700系には、車両編成にも依るらしいがJR700のロゴが入っている。
700系の乗客席の窓際の上部にはスリットがある。
あまりこういうところをじっと見たことはなかったが、視線の先に目に止まるものが見えた。
手を翳してみると、風がそよいでいるのが分かる。
エアコンの小さな吹き出し口で、なかなか丁寧な作りで巧く出来ている。
このスポット的な小さな吹き出し口からは、さらっとした空気が流れ気持がいい。
空間全体は省エネで、仕事場や居間 ダイニング サニタリーとスポット的に本機からワイヤレスで飛ばせるこんな超小型ルーバーがあれば快適に過ごせることが出来そうだ。
その日は、何気なく面白いものを発見したかのようで少しうれしい気分であった。

 

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久しぶりに聴いたブレッド&バターのアルバム

 

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カノコガ

 

梅雨が明けるころに吹く風は、白南風(しろはえ)と呼ばれる。
沖縄地方ではこの季節風を真南風(まはえ)という。
1975年リリースのブレッド&バターのアルバムに「マハエ」という曲があったのを思い出し廻してみた。
「マハエ」はスキャットの曲でなかなかおもしろい。
原稿を書いていると、連鎖的に古い記憶の断片も繋がってくる。
つい、B&Bの他のアルバムに聴き入ってしまった。
朝、窓ガラスに止まっていたカノコガを見つけた。
ハンコチョウとも呼ばれている。
蛾なのに昼間に動き回るちょっと変わった暮らし振り。
初夏から夏にかけたこの時季に蜜を吸いに飛んでいる。

 

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