人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.106「endless thema - 101」(14年10月)

 

--------十月寒露/虎屋菓寮 part 2

 

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果実酒

 

いただきものの果実酒。
金柑酒とピンクグレープフルーツ酒をミックスしてあるのだそうだ。
ほんのりとした苦みが喉ごしに爽やかである。
ストレートでおいしさを味わう。

 

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生け垣から見えるモチノキ

 

やっと自宅の改修工事も終り、簾を吊るすと案外と町家らしく見えるものである。 長い簾はどうも私の性に合わない。
ということもあり短めのものを使っている。
どこにでもある市販の葦の簾であるがうちにはよく似合う。
ビール片手に、斜向いのお宅のベランダから撮影させて頂いたが、屋根面がよく見え軒の鎌軒瓦の下端の連続した曲線模様が小気味良い。
もう少し間口が長いと軒も美しく見えるのだろうが、いかんせんである。上から見下ろすと、門と生け垣そして下屋の屋根の具合もよく分かる。
意外と松もいい感じに見える。
工事で少し痛んだ松の枝だが容易に切るとヤニが落ちる。
真新しい瓦を汚すことにもなりかねないのでそのままにしてある。
モチノキには実がたくさん付いている。
少しづつだが日増しに色づき始めている。

 

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葛仕立ての水羊羹と抹茶

 

今日は少し暑さも残っているが過ごしやすい日となり、一条通りにある虎屋菓寮(内藤廣設計2009年/バックナンバー2014年1月号)を訪ねた。
訪れた時間帯が良かったのか、外の軒下の席があいておりお願いした。
妻は宇治金時のかき氷。私は葛仕立ての水羊羹と抹茶をいただいた。
水羊羹の上品な味わいは程よく口の中に残る。
極細な点てぐあいの抹茶は滑らかな舌触りでほどがいい。

 

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軒下からの風景

 

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水盤に景色が写り込んでいる

 

深い軒下の席の足先には水盤がつくられ、廻りの景色が映り込んでいる。
西側の建物沿いの植え込みには芙蓉の花が見える。
イメージを重ね合わせているのだろうか。
しとやかな風景である。

 

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天井

 

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柱廻りの詳細

 

深い軒を見上げてみると、化粧垂木の垂木間に組み合うように同じ断面を持つ材が外から内へとつづき、緩やかにカーブを描いている。
材と材の間はスケルトンとなっており天井中央のルーフガラスから穏やかな明かりが障りこむ。
七尺五寸程の間隔で立っている柱は十字形の鉄骨で化粧垂木を貫通している。
内と外を仕切るガラス窓はこの柱から少し外側に独立して設けられ、空間をかろやかにしているだけでなく内と外の隔たりを軽減している。
天井からは虎屋の紋章のモチーフを用いたと思われるコードペンダントが低い位置に吊るされ、柔らかな天井面を隠すことなく設けられている。

 

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路地

 

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路地

 

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路地に設けられたブラケット

 

敷地の廻りに巡らされたどこからでもアプローチできる狭くて楽しい路地は、敷地の外のざわめきを融和しているようだ。
曲がりくねり時たま雁行した外空間から、開放的な庭や菓寮の内空間との繋がりは自然で心和む。
この路地にも紋章を取り入れたと思われるブラケットや植え込み灯が付けられている。 それほど長居はしていないが、穏やかな空気と居心地の良さを引きづりつつ菓寮を後にした。

 

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ギンミズヒキ

 

家の玄関先では鉢植えのギンミズヒキの花が迎えてくれる。
ミズヒキソウの白花である。
花と言うが花に見えるのは顎片である。
朝開いていると思っていると午後を過ぎるころには花は閉じてしまう。
言われなければ分からない程のミズヒキソウの花だが、こちらもしとやかでいい。

夕刻の木陰に入ると肌寒さを覚える程になった。
十月八日は寒露。もう秋の始まりである。
家の中の片付けも少し残ったままだ。
気合いを入れてするのも良いが息切れしないようぼちぼちやりながら調えようと思っている。

 

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