人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.120「endless thema - 115」(15年12月)

 

--------継ぐ月/未来へのアプローチ

 

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ラ・フランス

 

環境に優しい近所の八百屋さんで買った西洋梨ラ・フランス
熟しその香りに引き寄せられるまでもうしばらくのがまん。
かたちは少し歪だがとろけるような舌触りで美味いはず。
五月頃に白い小さな可憐な花が咲く。
まだ見たこともないようないろいろな果樹の花には魅力が有る。
果物の花だけでなく野菜の花も、実とうつくしく対比している。
毎回この「人と自然と建築と」の始まりと終りは、季節感のある事物や自然のことを書くことにしている。
玄関先に置いてある鉢植えのレモンの木もすくすく育っている。
「果実のはな、やさいのはな」などのテーマ化も面白そうだと考えている。

先月号に「未来塾/空間を作るチカラ」という四回シリーズでの番組がEテレで放映されていたことは書いたが、シリーズ最後に少し興味深いことも収録されていたので書き留めてみた。

隈研吾氏が二年前に東大に作った研究所 T-ADS(Advanced Design Studies)で、未来の建築の為に新素材の開発やデザインを研究している。
言語は英語で現在は各国の研究者や学生が40名余り参加しているらしい。
番組の中で隈研吾氏は
「二十世紀の建築は保守的で工業化により大量の建築を早く作ろうとし、世界中でコンクリートと鉄に集中してしまっている。面白いネタは世界中にある。伝統的な材料や自然材料だけでなく、新しい材料も出てきているんだけれども建築の中にはあまり入ってこない訳で、洋服なんかには入ってきても建築には入ってこないから、そういうものと(新しい素材と)建築を組み合わせると世界の建築は全く二十世紀と違う、大化けする可能性があると思って、そう言う時代に立ち会って、そう言う時代を生きていく訳だからもっといろいろなものに好奇心を持ってチャレンジしてほしい。」
と語っていた。

なかでも、T-ADSで開発中のウォーターブランチという材料が紹介されていた。
50センチ程でキューブがずれた凸凹状のかたちをしたポリタンク状のものである。
分かり易くするために載せた写真はKOKUYOカドケシという消しゴムなのだが、そんな形状をしていた。
組み合わせ連結すことによりいろいろなかたちが出来、そのまま空間を形成し内部に水を通すと冷房になりお湯を通すと暖房にもなると紹介していた。

 

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カドケシ

 

時代とともにクライアント自体の意識やミニマリストなどライフスタイルの変化も確実に変わりつつ有る今、現に建築は構法や表現の手法も変化しつつある。
普遍的な伝統的な型式が進化を辿っていく一方で、画一的な型式が根本から覆るようなまったく別の概念の型式が生まれ育っていく時代がやって来るのだろう。
この別の分野からのアプローチが建築を支えることにもなり、建築を学ぶのは必ずしも建築科が選択筋でなくなり、より多様化したアプローチが考えられることだろう。
クロスオーバーしていく分野や技術が未来を作って行くことは事実であろう。
勿論、建築教育自体も変化を遂げる必要に迫られる。
かいつまんだ話になってしまったが、巾の広い研究と成果の楽しみな時代にさしかかっているのは大変興味深いことである。

 

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桜の黄紅葉

 

十一月初めの朝には、青空にうろこ雲が連なっていた。
秋日和の長閑さのなか眺めていたのだが、天気の崩れるまえぶれに現れるのだとか。
今では、見上げれば少しづつだが冬空になってきた。
朝のサンルームのトップライトの結露も日増しに際立って来ている。
今月初めは橘始黄(たちばなはじめてきばむ)。橘の葉が黄葉し始める。
春先にバックナンバーで書いた天神川沿いの桜も黄紅葉していた。
色づいた葉色がこころなしか川面にも移り込んでいるように見える。
桜の黄紅葉も季節を感じ良いものである。
川沿いの東側の公園や道端には黄紅葉した桜の枯れ葉がところ狭しと重なっている。
春は花びらが舞い、初冬には黄紅葉した葉が舞う。
冬の桜もなかなかのもの、日本の美しい風景がある。

 

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