人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.124「endless thema - 119」(16年04月)

 

--------四月/長閑にうららかおだやかに

 

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クリスマスローズ

 

今か今かと首をもたげていた鉢植えのクリスマスローズも突然のように咲き始めた。
春のうららかな日差しに呼応しているかのようなクリスマスローズは少しうつむき加減にはにかむように咲いている。
鏡をまえに髭をカットしながら、以前に心理学者の植木理恵さんは「ナルシシストは芸術家に必要な資質である。」と、そして環境学者の武田邦彦さんは「辛いところから逃げるのが正しい人間の生き方。」とおっしゃっているのを思いだした。
なかなか興味深い言葉である。
ちなみに髪はカットが面倒で見苦しいほどに伸びると切羽詰まり小綺麗に整えるている。
髭も同じ。と言いつつも、気にしつつ今日も整える日々である。

視線の広がる空間に一台の車が置かれたTVのCFのラストのシーン。
コンクリート打ち放しのフォルムの美しい建物の残像が残る。
ルイス・I・カーン(1901–1974)設計のソーク生物学研究所(カリフォルニア USA /1950ー1965)である。
打ち放しのコンクリートの建物は中央の広場を挟んでシンメトリックに配置されている。
オーク材などの木質系で構成された窓廻りとコンクリートコントラストはカリフォルニアの青い空を一層際立て、美しい風景を造り出している。
カスケードと呼ばれる水路が有るだけの広場には大きく深く呼吸をしたくなるような風が吹き抜ける。

映画「マイ・アーキテクト( MY ARCHITECT/A Son's Journey)」を思い出し、パンフレットを捲ってみた。
ソーク生物学研究所は小児ワクチンの発明で知られるジョナス・ソーク博士の設立した施設であり、「ソーク博士は、研究者たちが同じ場所で同じ時間を過ごしていることを自然に感じ取れる修道院のような中庭と回廊をもつ空間の実現をカーンに求めた。」
そして「メキシコの建築家ルイス・バラガンの助言を得て、植栽のないドライな広場として残された中庭にはカスケード(水路)がひかれた。」※2。
バラガンは「空へのファサード」※1という言葉を贈っている。

広場とカスケードは、私の学生のときのエスキースの課題の記憶も重なる。
お茶の水校舎に移行し間もない、まだカーンとソーク研究所のことも知識にないときの私自身でもある。
元気にしてくれる学生時代の記憶である。

世界的な建築家はみな小住宅を創るのも巧い。
同じくカーンも小住宅を創るのは巧い。
なかでも、オーク材をふんだんに使ったフィラデルフィア郊外ハットボーローに建つフィッシャー邸(1950ー1957)や窓から差し込むグレアーの程よいチェストナット・ヒルに建つエシェリック邸(1959−1961)は素晴らしい。
どんな建物でも住まいと呼んだカーンは長く使い続けていける数々の魅了する空間を造り出した。
耳を傾け、絶え間のない情熱をかけつづけることの偉大さを学ぶ。

 

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マイ・アーキテクトのパンフとLouis I. Kahn Houses

 

写真の書籍は見開きが建築家 齋藤裕氏の美しい写真と文で綴られた
「Louis I. Kahn Houses/ルイス・カーンの全住宅1940−1974」(写真・著/齋藤裕 2003年 TOTO出版)※1、下に見えるのが映画マイ・アーキテクトのパンフレット※2である。

 

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八重のツバキ

 

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ジンチョウゲ

 

裏庭に置いた八重のツバキは先月中頃に開いた。
我が家には珍しい春色の花びらは幾重にも重なり花やかだ。
その重なり合う花びらは時間をかけ少しづつ開花する。
ツバキと思えないほどの花やいだ姿をしている。
前庭のマイペースなジンチョウゲも沢山の花をつけた。
小さな花が沢山寄り集まって白い花帽子のようである。
開けた窓からは馥郁しい香りとともに季節も届けてくれる。
先月二十三日には、京都でも桜の開花宣言が発表された。
春の暖かい日差しと花曇りのなか白い花びらは舞う。
何とも言えぬ春先のけだるいアンニュイさが好きである。

 

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