人と自然と建築と

nonobe's diary

Vol.133「endless thema - 128」(17年01月)

-------始まりの月/鳥衾いろいろ

 


我が家の前庭のシロワビスケは暮れにはまだ間もある頃に咲き始めた。
気がつくと少しだけ静かに咲いているワビスケだったのだが、
いつもよりおびただしく思うほどに白い花をつけている。
ラッパのような咲きかたで全開しない控えめなワビスケ
中央の黄色のおしべも整然と密集して形もいい気がする。
気候の為か早くからにほやかにほほえむように咲いている。

今年の干支は酉。毎年の賀状にはその年の干支名がつく建築語彙を紹介している。
今年は屋根の鬼瓦の上に乗る鳥衾/とりぶすま。
鳥休ともいう突き出た円筒形の瓦である。
短めでほどよい反りから長くそして反り上がり誇張された形状のものまで形はさまざまである。
良し悪し好き嫌いは嗜好の範囲だろうか。
建物を見るときにまず最初に視線に入る屋根の印象をつくる古建築の重要な要素でもある。



浄土寺浄土堂

浄土寺浄土堂

兵庫県小野市にある奈良期の浄土寺浄土堂は大仏様の建築様式である。
その特長のひとつである鼻隠しが垂木の先端に設けられている。
隅棟は稚児棟付きで冠瓦から先太りの鳥衾へと穏やかな反りである。
稚児棟と二の棟の熨斗の差が大きく、
稚児棟のそりも少なくその分一の鬼も小さくなり全体的にシンプルである。



奈良町の国宝元興寺極楽坊の隅棟は、ゆったりとおおらかな軒反りの屋根に
短いが先の反りがはっきりとした稚児棟の付いた隅棟で均整のとれたつくりが美しい。
少し成のある亀伏間瓦の冠瓦が載る低い目の隅棟は、
直線的な屋根反りに先端のそりを大きくしてあるが、
鳥衾の出は小さく小口も円で巧くできている。
屋根瓦の色が茶色くうすく見えるのは、行基葺で古瓦を再使用してあるためである。
京都東福寺六波羅門の大棟の鳥衾は、
鎌倉前期建立で高めの棟に角の付いた凛々しい鬼に長めの鳥衾は先端が尖り気味にみえる。
それを和らげるかのような平式破風瓦の妻側の箕甲は気品が有りなかなか美しい。
鳥衾の先端に見える棒のようなものは避雷針で文化財を守っている。

鳥衾のスクエアーの小口は円形に近いほどおだやかに見えて美しい。
反りに合わせ斜めに切り込むほどに小口は楕円となる。
お堂には稚児棟のつく隅棟が多いが、
一の鬼と二の鬼の鬼板の間隔や熨斗の枚数や反り加減で表情は変わる。
例外も有るが短いものは古い時代に多く近世になるにつれ長く反り上がり尖りぎみになるようだ。



薬師寺本堂軒先廻り

東大寺法華堂礼堂正面

奈良町の国宝新薬師寺本堂の鬼板の間隔は短いが
隅棟のバランスもよく力強いなかにも伸びやかな軒によく似合っている。
はっきりとした年代は不明だが天平期のおおらかな建物であり、
柱頭に大斗、肘木で構成される建物である。
東大寺の法華堂(三月堂)は鎌倉期の正面礼堂 raidou と
天平期の正堂をつなぎ合わせた建物である。これも美しい。
余談だが、法華堂正堂内の中央あたりに、向きの違いだけなのか組み物の大きさの違う斗がある。
何かの時点で入れ替わったのかもしれない。大きさの違う斗は東寺にもあったように記憶する。
食堂か講堂だったか南面の左手に一カ所あると記憶する。
大きさが違うのは斗の向きのせいだけなのか、未だ少し気にかかっている。



前庭のジンチョウゲの蕾もにぎわい始めた。
始月大寒を迎える頃、寒さが峠にさしかかると蕾もやっと白く色づき始める。
綻ぶほどにはまだまだ時間のかかるジンチョウゲだが、
寒さも和らぎ窓先から馥郁と咲く穏やかな日が待ち遠しい。

 

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