人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.74「endless thema - 69」(12年02月)

 

--------菜の花/元気を。

 

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菜の花

 

正月に家内と姪っ子を連れ立って初詣。
ついこないだまで、まだ小さかった姪っ子も大学生である。
叔父さんも年を取る訳だ。
初詣は例のごとく、浅間神社から那古野神社までのコースをぶらぶらと歩く。
浅間神社の東側に堀川を渡す中橋がある。
北筋の円頓寺通りに架かる五条橋と南筋の桜通に架かる
桜橋の間に架かっているのが中橋である。
これまで気に留める事なく渡っていたが、その西詰めの袂にも御社がある。
屋根神さまだ。ふと気になり近づいて見る。
さり気なくお正月の飾り餅がお供えしてある。
屋根の傷みや昇高欄と千木の破損が著しいが、かなりの歴史がありそう。
古びてはいるが形や取り付けられている金物が綺麗なのに誘われ、
つい立ち止まってしまった次第である。
御社は小さくとも神明造りの社殿である。
高床式、切妻平入でケラバ側には独立した棟持柱が付き、
屋根は板葺きでちゃんと千木もある。
拝み近くの軒には四本の小狭小舞も見られれっきとした神明造りの様式である。

 

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中橋のお社

 

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中橋のお社

 

神明造りは伊勢神宮の系譜を継ぐ形式で、
前述とおり柱が建物本体から離れて建ち、
屋根を支えるため棟木を受けるように設けられた
文字通りの棟持柱(むなもちばしら)や、
破風板が屋根を突き抜けて交叉し上までのびた千木(ちぎ)という装飾や、
破風板が合わさった拝み(おがみ)と言う部分のあたりの軒に
四本の小差小舞(おさこまい)と呼ぶ材が設けられていることなどが主な特徴である。

 

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名古屋東照宮

 

中橋を渡りしばらく東に歩いていくと那古野神社がある。
那古野神社の西隣には隣接して県指定の文化財である名古屋東照宮社殿があり、
参拝後はいつもこちらの側から失礼して帰る。
写真は名古屋東照宮社殿の向拝柱頭廻り。
いまは色あせているが、本来は極彩色の文様を持つ社殿だ。
途中、屋根の上の屋根神さまを姪っ子に見せようと、四間道界隈へ。
昨年のマンスリーホットライン(2011年02月号)でもご紹介した
子守地蔵尊前の屋根神さま。
今年も世話役の皆様の行き届いた気配りでお正月を迎えられていた。

 

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子守り地蔵尊前の屋根神さま

 

京都では旧暦の小正月の一月十五日に門松の片づけをするのが習わしのようだ。
我が家も門松を片づけ、届いた賀状の整理を始めた。
知人の安田さんからご自身の言葉に添えて
「Won't you stop and remember me at any convenient time?」
と書かれた賀状をいただいた。
そう、サイモンとガーファンクルの「A Hazy Shade Of Winter」のワンフレーズだ。
日本語のタイトルは「冬の散歩道」。
アップテンポのリズムにのって「Time, Time, Time」と力強く
そしてアート・ガーファンクルとの美しいハーモーニーから始まる。
ポール・サイモンが自身に向けて書いたと言われている曲だ。
今、日本では?
ひとはそれぞれに想いは違うが、
Won't you stop and remember me at any convenient time?
ふと聴きたくなり、CDプレーヤーのスイッチを入れた。
ポール・サイモンの歌は詩的だ。歌詞を目で追う。
ポール・サイモンの詩の豊かな言葉に触れる気がする。
何度も聴くうち、立ち止まった気がした。

 

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S&G

 

もうじき、野原一面の黄色い菜の花畑が見られる季節がやってくる。
ふと立ち止まって、振り返ってみてください。
あなたには、何が見えましたか?

 

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