人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.102「endless thema - 97」(14年06月)

 

--------夏至打ち水

 

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イラガの繭

 

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イラガの繭

 

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イラガの繭

 

夏の声が聞こえ始める頃に、やっと植木の剪定も済ませた。
ぼさぼさ頭の庭の樹木たちは真夏に向かってすっきり顔となった。
モチノキは実を残し気味での散髪。
風通しも良くなり、モチノキに何かを発見。
幹に卵形の丸い穴の開いたものが付いている。
よく見ると生け垣の幹にも付いている。
イラガの繭の空き巣のようだ。
繭といっても触らぬことにこしたことはない。
聞くところによるとカマキリやアシナガバチはイラガの幼虫の狩りをするらしい。
自然は巧く出来ている。

 

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クーネルとアイノのタンブラー

 

ku:nelの68号に「アイノ・アアルトとフィンランドの台所」と言う記事が載っていた。
アイノ(~1949)はフィンランドの建築家アルヴァ・アアルト(~1976)の妻であり建築家でもある。
アルヴァ・アアルトのことはこのマンスリーホットラインのバックナンバーの建築家シリーズ1(2006年1月号) 同3(2006年3月号) 2008年6月号 endless thema25(長く使う/建築家の椅子 その2)でその一部を紹介したが、マレイア邸を始めとする住宅や、ヘルシンキ工科大学、フィンランディア・ホール、アアルトミュージアムなどフィンランドに生涯を捧げたモダニズムを代表する世界的建築家である。
そして、アイノの心やさしいデザインはアルテックイッタラから今も製造され続けている。
アイノは内装のデザインや家具、ガラス器などのプロダクツなど建築とともにアルヴァを支え続けた。
ku:nelには「料理上手の台所」という特集に関連しての掲載のようで、アアルト夫妻の自邸とアイノのキッチン空間を中心に紹介されている。
専門誌より一般誌に近いあたりの雑誌には、専門誌にはない興味を惹かれる記事や写真などがよくある。
本屋さんをぶらつきながら見つけるときが楽しい。

 

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ガラス器サボイ

 

アアルト夫妻の自邸はヘルシンンキの北西ムンキニエミの入り江から近い緑豊かな静かな住宅地にある。
自邸は自宅兼アトリエとして建てられたが、後に近くに新しくアトリエを建てそこで生涯に渡ってプロジェクトをこなした。
南に広く開いた明るい空間とロケーションは長閑な心安らぐ景色を与えている。
数あるプロダクツのなかでもレストラン・サボイで使われているアルヴァのデザインのガラス器サボイやアイノのデザインのしずくの落ちたときに出来る波の形をした硝子器はロングセラーである。
アルヴァは「ALVAR AALTO」、アイノは「AINO AALTO IITTALA」と器の底に刻まれている。

今までにリバーサルフィルムで撮影して、溜めに溜め込んだスライドや資料のなかには アアルトの建築などフィンランドを訪れたときのものも随分とある。
少し整理しご紹介出来たらと考えている。

六月も終盤、昼間の一番長い日となる。
夕刻が長くなると、のほほんとしてうららかな気持ちになる。
今年の夏至は六月二十一日。北半球では太陽高度が最も高い、つまり蔭の長さが一年の中でもっとも短い。
北欧ではこの頃白夜を迎え太陽が沈まない日がつづく。

 

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唐撫子とアシナガバチ

 

裏庭では唐撫子(セキチク)の花が咲いている。
アシナガバチが花に止まって盛んに何かをしている。
花が咲く頃アシナガバチも活発に飛び回るのを見る。
母蜂が巣を作り始めるのがこの頃のようだ。
草や木の繊維質を集め巣作りだろうか。
唐撫子の花に埋もれて気持ち良さそうだ。
水やりをしていると盛んによってくる。
ちょっかいさえ出さなければ攻撃してくることはまずない。
今のところ適度な距離感で飛び回っている。
今年も静岡の友人から季節の便りが届いた。
少しだけ冷ましたお湯であたたかい新茶を頂き、湯冷ましで水だしの新茶を頂く。
いつもながら旨い。原稿を書きながら思う。
毎年同じように季節がみえるのは心はずむ。
そろそろ、夕刻の打ち水でもしてひんやりとした風のなか思考の整理もしてみるか。

 

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