人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.70「endless thema - 65」(11年10月)

 

--------十月/毛虫?

 

まだ暑さも残るなか、何かが飛んできて簾に止まったようだ。
よく見るとカマキリだ。大きさは七~八センチ。
カマキリーノとでも名付けようか。時折玄関先の庭で見る子に似ている。
お腹が空いて食事にでも出てきたのか、三角顔を腕で洗いながらきょろきょろ。
動くようで動かない。早速屋根に出てワンショット。
何者だと言わんばかりの表情でこちらを見ている。
先月号のヤモリ君といえ、このカマキリーノにしても挙動不審の風体だ。
気がつくと簾の内側にやって来て、こちらを見ながらまたもや洗顔。綺麗好き?。
カマキリーノから見れば、デジカメ持った変なおっさんと思っているのだろうか。
いやきっと、「おまえ挙動不審だな。」って言ってるに違いない。

 

p_nono1110a
カマキリ

 

p_nono1110b
カマキリ

 

窓際で本をめくっていると、ふわふわと飛んでるものが視野の内に入ってきた。
庭にルリタテハがやって来た。
きらきらと、まさしく瑠璃紺色の羽をぱたつかせている。
雲の隙間からうっすらと陽も差し込んできた。
ルリタテハは蝶だが、羽を閉じた時の腹側の羽色は蛾のよう。
胴体も少し太く蛾と間違えそうだ。
どうやらうちの庭先でふ化したようだ。

 


ルリタテハ(動画です。画面をクリックすると再生します。)

 

ルリタテハの幼虫が蛾の幼虫に似ていると知ったのは、つい先立てのこと。
そして、ホトトギス特にタイワンホトトギスの新葉をよく食べると知った。
毎年のように毛虫が庭のホトトギスの新葉を食い散らかし、
見つけたらその都度駆除していた。
葉っぱの上にころころした黒い糞があるのですぐに分かる。

しかし、その毛虫がルリタテハの幼虫と知ってしまった今、
深まる秋にホトトギスの開花を楽しむ為に駆除するか、
はたまた見てみぬふりをしてルリタテハの成長過程を観察するか、
それとも別の方法を見つけるか。
何はともあれ瑠璃紺色のルリタテハはまた来年もやってくるだろう。
難しい選択となったが、時間もあること、それまでに方策を練ることにしよう。

 

p_nono1110d
すずむし

 

確実に秋は近づいている。
3.11からは、もう半年以上経ったことになる。
近頃、長周期地震による液状化現象の問題が顕著に問いだたされている。
日本建築学会の「住まいづくり支援建築会議」では、
「液状化被害の基礎知識」として、
液状化現象の諸問題等についての情報を公開している。

多少専門的な事項が多いようだが、目安として事前に一読し、
難しいと思われることや専門的な知識がないと解らないような部分は、
必要に応じて資料の収集や専門家の意見を問えば安心だろう。

ご心配の方や興味のある方、もやもやがつづいていらっしゃる方は
一歩足を踏み出すのもいいとは思う。
ただ自然災害に関しては、
液状化だけが深刻な被害をもたらすという訳ではない。
多く
の人が同じような方向に視線を向けるような思考は、
それを頭に入れつつもなるべくならば客観的で
脇目に見るくらいの対処で望む方が好ましいように思う。
そして他の要因も含め総合的に判断できる専門家の意見を参考にしながら、
ことを進めていくことをお勧めしたい。

 

*****

 

Vol.69「endless thema - 64」(11年09月)

 

--------九月/時空

 

p_nono1109a
葡萄

 

まだ暑さもつづく中、うれしいものが届いた。
巨峰。
高校時代の友人が毎年届けてくれる。
愛知県大府は気候も高温小雨で、葡萄は特産物の一つである。
露地物は八月中旬から九月中旬にかけて甘味がのってくる。
よく冷やし皮ごと頬張る。旨い。
今年は悪天候がつづいたせいか収穫は半減、出荷も遅れぎみだとか。
時節を感じるものが多い日本の暮らしは、記憶とともにうれしさも届けてくれる。

先月号に掲載したランが満開となり、
匂いに誘われたのかミツバチたちがやってきた。
その数のすごさ?普通の数では無かった。
ブンブンブンブンと羽を動かし集まっている。
妻がその音で気づき、窓越しに眺めていた。
こんなに群れているミツバチを間直で視るのも初めてだが、
匂いを発しミツバチを引き寄せるランの力もすごい。

「カメラ。カメラ。」と言いながら急いでシャッターを切ったのだが
ミツバチのスピードにカメラはついていけない?。
というか自分の腕がついていかないのか写真にはなかなか撮れない。
そんなあいだにも、ミツバチの数はどんどん減っていく。
終局に近いころ、妻がデジカメで動画を撮った。
視ているだけで癒されるのか、何だか楽しい。
群れているところが撮れなくて残念だったが、朝からのプレゼントに感謝したい。

 


ミツバチ(動画です。画面をクリックすると再生します。)

 

先立ての朝日新聞の科学欄で「時空の素粒子」という記事が眼に止まった。
素粒子というのは、これ以上は区切れないというミニマムの粒子のこと。
一般には、電子などのレプトンと呼ばれる粒子やクォークなど物質の素粒子や、
エネルギーの粒子のようなものなど物理学的な範囲の話であるが、
このような素粒子のような単位が時間や空間にも存在するのではないかという。
アメリカのフェルミ国立加速器研究所のクレイグ・ホーガンという博士が、
来年完成予定の実験装置によって検証するらしい。

実験結果がどうであれ、目に見えている空間に
ミニマムの仕切りがあると考えるのは不思議なことでは無い気もする。
また、時間にも同様な区切られる
最小単位が在るかもしれないと考えるのも自然な気もする。
結果が楽しみであるが、今見えているものが
流動的では無くコマ送り的な世界だと言うことになれば、意識も変わる。
早送りは不可能かもしれないが、コマ送りならストップも巻き戻しも可能。
タイムマシーンが創られ、手軽に時空を行き来でき、
フィクションの世界が一気に現実の世界へと近づく。

時間や空間をコントロールできれば
ミツバチが群れてるぐらいのこと瞬時に捉えることができ、
記録の形式さえ変わってくるだろう。
今は妄想の世界だが、建築空間に時間が加味され建築時空となれば、
どんな世界が広がっていくのだろうか。
まあ、それよりもミツバチの記録は腕の問題と言われなくて済みそうだ。

 

p_nono1109b
ヤモリ

 

庭の片隅から、ヤモリ君。
家の周りでちょいちょい見かける。
窓ガラスにへばりついていたり、植木鉢の木陰で、
挙動不審な態度でキョロキョロしている。
金色がかったイケメンのトカゲッチも見かけるが、愛くるしさでは君の勝ちだ。
気が向いたらいつでも遊びにおいで。

 

*****

 

Vol.68「endless thema - 63」(11年08月)

 

--------八月/旬

 

p_nono1108a
すもも

 

甘酸っぱいすもも。李と書く。
真っ赤に完熟するまでにはもう三~四日はかかりそう。
甘い香りがしてくると食べ頃となる。
かじるとちょっぴりシャリ感が残るくらいが私は好み。
表面にうっすらとプルームという白い粉をふいているのは穫れたて。
八月中が熟れとき。

 

p_nono1108b
せみ

 

p_nono1108c
ラン

 

今年は梅雨明けも例年に比べて二週間ほど早かったそうだ。
台風一過。我が家では今年初めての蝉の声。
いるいる、モチの木で休んでいる。やっと夏らしくなってきた。
いただき物で名前は分からないが夏に咲く鉢植えのラン。
花芽が伸びる伸びると思っているうちに花びらが開いた。
花色は赤みの差した緑色。葉に隠れるように咲いている。
窓を開けるとほんのりと香りが漂っている。

 

p_nono1108d

 

鱧も今が旬。梅雨があけると脂ものって途端に旨くなる。
毎年この時期にはよく食べる。
うちでは、昆布だしで湯引きにして、
すった生姜をたっぷりのせて生姜醤油でいただく。
湯引きも冷水で引き締めるのではなく、そのまま冷ます。
そのほうが旨味がのって旨い。
目利きの魚屋さんで旬を勧められるのもあるが、
なるべく脂ののった時期にいただくようにしている。
勿論、骨切りがしてある身と、頭と背骨も入ったのを買ってくる。
頭と骨は出汁をとって野菜を入れてスープにする。今夜は鱧。


暑い最中、埃が目立って気になっていた網戸を掃除した。
水洗いが一番いいのだが、簡単に掃除機で掃除。
網戸など内~外専用にしている密なブラシを付けて擦るように吸い込む。
普段の網戸掃除にはこれが一番。
ポリプロピレン製(PP)の網戸は埃さえ付いていなければ劣化はあまりしない。
我が家は三種類程の網を使っている。
大半は普通のグレーのポリプロピレン製にしているが、
仕事場には黒のポリプロピレン製、
下のごろごろする部屋の庭側の窓にはステンレス製を使っている。

 

p_nono1108e
掃除機のブラシ

 

p_nono1108f
SUS製網戸

 

黒は低反射率のため、光の透過性が良いので視線が抜ける。
ステンレスは反射率は高いが、
ポリプロピレン製などに比べ細いぶん同じメッシュのピッチなら、風はよく通る。
ステンレス製の網を貼ってある網戸は木製のガラス戸に付けてある網戸で、
成は五尺七寸だが巾がすこし広いめ。網の有効巾1065mmある。
中桟なしの一枚ものでステンレス製の網を貼ってあるのだが、
職人さんが嫌がっていたのを無理にお願いしたものだ。
「大きすぎて強度不足でたわんでベコベコになるよ。」って言われたが
結構貼り方もよくひずみもなく、もう十八年程経った。
まあ何かが当たって破損したり、
無茶をしなければそんなに気にすることもないように思っている。
ただ、普段はグレーのポリプロピレン製に比べ
視線の妨げも少なく気になるほどではないが、
光が当たると途端にキラキラと反射する。
光の当たった部分はほとんど外は見えなくなるが、
光が感じられるのは気分がいい気もする。
また、劣化と言うことから考えると格段の差で、
網を引っ掛けたりしない限りは丈夫だ。
先にも書いたが、黒の網は網戸が無いくらいにその存在感を消してくれる。
外を見たときの網戸のぼんやりしたうっとうしさが無い分、外との一体感はでる。

 

p_nono1108g
左側が黒の網戸

 

近頃は、ポリプロピレン製の網戸が主流だが、
PET(ポリエチレンテレフタラート/ペットボトルの材料と同じもの。)を
使用した遮光用やペットの引っ掻き傷防止対策用ネットやハーフミラー風、
それに汚れにくい網など多々ある。
また花粉対策用に専用クロスを用いたものなど多用途に対応できる。
たかが網戸と思わず、窓の目的によって使い分ければ、暮らしも元気になりそう。

 

p_nono1108h
カナブン

 

まだ日差しの強い中、サンルームのトップライトに突然の訪問者。
カナブンくんの八月は大忙し。どこかへ行く途中?ちょっとお休憩。
ゆっくりしてってね。
暑いから、気をつけて大敵には注意して、いってらっしゃい。

 

*****

 

Vol.67「endless thema - 62」(11年07月)

 

--------お気に入り/眼鏡もリメイク

 

p_nono1107a
フウラン

 

突然の猛暑日が続くなかフウランの花が育ってきている。
まだ薄ら蒼いが日増しに純白となる。フウランは名前の通り風が大事。
うちでは風にゆらゆら鉢ごと吊るして揺らしてる。
白さも増すにつれ甘い香りも満開となっていく。

 

p_nono1107b
晩柑

 

この時期よく、らでいしゅぼーやから晩柑が届く。
晩柑は八月あたりまでお目にかかるが、甘味と酸味が程よいのは六~七月頃らしい。
グレープフルーツに近い種類であり柑橘類のなかでは一番遅い。
五月頃に花が咲き、翌年の今頃が完熟だとか。
少し縦長で、あたまのところの黒い点々が目印。やっぱり私は中皮ごと頬張る。
形は歪だが、さっぱりとした甘味と酸味に加え薄皮のほんのりとした苦みが好き。

先立て、眼鏡をリメイクした。
車を運転をするときに眼鏡をかけないといけなくなって、
かれこれ七~八年も経つだろうか。前にも触れたが、近視が若干だがすすんでいる。
普段の生活ではさほど必要とするほどではないこともあり、
車の運転以外では必要に応じて使っている程度である。
老眼も年とともに進行中であり、小さな文字が見えずらいと言うだけでなく、
ハレーションと言う特有の光の反射に対応が困難な状態が顕著になってきている。

それはさておき眼鏡の話に戻るが、運転用に最初に買った
イタリアの某メーカーのフレーム。シンプルで気に入っていたが、
片側の耳にあたる部分の塗装が剥げてしまい、
四~五年程前にチタン製のノンヒンジのフレームレスの眼鏡を新調した。
異種の素材が適度な緊張感を持ちながら繋がり合っている。
シンプルもここまでくると極まるデザインだ。

 

p_nono1107c
ノンヒンジ

 

車の運転に使うのが主な目的のため、フレームは極力無いに等しい方が
視界の邪魔にならなくてよい気がする。
駐車場を近所に借りているので、
眼鏡を忘れると家まで取りに戻らなくてはいけない。
前の使わなくなった眼鏡は気にいっていたこともあり
予備として常時車に載せていた。

妻はコンタクトレンズを使わない時にはメガネを使用している。
ゴールデンウィークに実家に帰省した際、
ケースは自宅、眼鏡は実家ということをやらかした。
送ってもらって壊れでもしたらこまる。この際新しいものが欲しいと言い出し、
必要にせまられ近くのお気に入りの眼鏡屋さんへ。
ついでに私もぶらっとついていくこととなった。

何の気なしにお店で、前に買ったフレームの塗装が剥げてきたことを話したみた。
どんなフレームでも可能かは定かではないが、
そのフレームの塗り直しはどんな色にでも出来ると言うことで、
塗り直しをしてみることにした。
早々に、塗り替える色の見本と眼鏡をもっていき、
一ヶ月程かかるということで楽しみに待つことにした。

 

p_nono1107d
ビフォー

 

p_nono1107e
アフター

 

三〜四週間程たったろうか、眼鏡が出来上がったと言う連絡が入りお店に伺った。
待っただけのことはあり、なかなかの仕上がり具合。
ますますのお気に入りとなった。

流行りものもいいとは思う。
しかし、どんなものでも流行りが終わればとたんに古くさく思われがちだ。
流行を意識しつつも、長くお気に入りでいられるものが見つかるまで探す。
こだわりを持つと言うことも、意識をもつことから始まる。
流行りより自分らしさを探す旅に終わりはない。

 

*****

 

Vol.66「endless thema - 61」(11年06月)

 

--------新茶/季節を想う

 

p_nono1106a
ツルハナナス

 

この時期うちの庭で咲く草木と言ったら何があるだろうか。
五月末の台風で大分散ってはいたがユキノシタが元気に咲いている。
長い間咲き続けているツルハナナス。それにハツユキカズラ
ハツユキカズラは石垣の間に植えてある。
気がつくと葉の色ももう薄い緑色になってきている。
ちょっと前まで白みがかった淡い桃色の葉が緑に栄えていたが、
白い葉から淡緑の色になり、小さな白い花が咲く。
花の形は風車の形に似ている。
ツルが伸び地面に降り、根が出て増えていく。
切り花にすると、とたんにしおれ枯れてくる。
切り口からは白い樹液が出て傷口を守るかのよう。
それで水を吸い上げなくなるのだろう。

 

p_nono1106b
ユキノシタ

 

p_nono1106c
ハツユキカズラ

 

五月初め、静岡に住む友人から毎年新茶が届く。
早速に、熱くない程度のぬるい目のお湯でいれる。
湯気と共に新茶の甘い香りが季節を感じさせてくれる。
緑茶は、水だしも旨い。
少し贅沢な気もするが、今日は新茶を水だしで入れる。

 

p_nono1106d
新茶の抹茶

 

p_nono1106e
ほうじ茶

 

以前に、二条通りの御幸町を西に入った柳桜園という
お茶屋さんで水だしの入れ方を教えてもらった。
普段飲むほうじ茶も無くなりかけてきたのを思いだし早速に足を運んだ。
こじんまりとした感じのいいお店で、いつも店先で玉露を出してくれる。
お茶屋さんで頂くお茶はさすがに旨い。
それに、急いでいるときでもちょっと一服は気が和む。
和みながら新茶の抹茶が目に止まり、ついつい買った。

近頃ではもっぱら上柳という葉っぱのほうじ茶を買う。
以前は大きなパックを買っていたが、
お店で「小さい方を二つのほうが風味が抜けずいいですよ。」と聞き、
今はそうしている。
ほうじ茶は、熱いのもさっぱりしていいのだが、
たっぷりと沸かしたものを冷ましてから、お気に入りの湯のみで常温で頂く。

 

p_nono1106f
水だし

 

水だしの緑茶の入れ方はたいして難しいことではない。
ポットに冷やした水を入れお茶っ葉を放り込み、冷蔵庫に入れておくだけ。
うちでは湯冷ましの水をガラスポットに入れ冷蔵庫に。
少し冷やしてからお茶っ葉を入れてそのまま冷蔵庫で冷やしておく。
普通の緑茶でも葉の量を調節すれば案外旨い。

お湯から煎れると、どうしてもお茶が濁り
黄色くなってしまうので水だしにするのだそうだ。
水からいれると澄んだ淡い黄緑色のお茶になる。
それも冷たい水のほうがよく出るのだそうだ。

じわじわとお茶のエキスがにじみでて、ころを見計らって頂く。
渋みの出ない程度の少し濃いめで頂く方が冷えた緑茶は旨い気がする。
冷たいのが苦手な方は、常温に戻してからがいいでしょう。

濁りもなく緑々とした緑茶の色彩が、この季節にはよく似合う。
一口。咽を通るお茶の旨味が、理屈抜きにホッとさせてくれる。

 

*****

 

Vol.65「endless thema - 60」(11年05月)

 

--------桜吹雪/移りゆく季節

 

p_nono1105a
バイモ

 

まだ肌寒さを感じる頃から穏やかに暖かさへと季節の変わりを知らせてくれる。
貝母と書いてバイモと読む。中国原産の薬用植物だ。
群咲は華やかさもあるが、数本で咲く清楚で可憐なさまは
茶花としても好まれているようだ。
茎形が長くなると、倒れないように葉先をカールさせ、
お互いに支え合っているかのように、廻りのものにしがみつく。
「寒さも、もう終りですよ。」っていいながら、四月始めには姿を消す。

 

p_nono1105b
ケマンソウホウチャクソウ

 

p_nono1105c
ホウチャクソウ

 

それと重なるようにして、
タイツリソウホウチャクソウが春の目覚めを知らせてくれる。
タイツリソウケマンソウとも呼ばれ、
仏具の装飾の華鬘(けまん)から来ている。
ホウチャクソウは仏堂の軒に吊るされた宝鐸
(ほうちゃく。ほうたく。風鐸/ふうたくとも言う。)
という風鈴に形が似ていることからきている。
花が終わる頃とともに晩春を告げる。

 

p_nono1105d
甘夏

 

喉の乾きを覚える頃、甘夏みかんが旬となる。
中皮ごと頬ばる。
甘酸っぱいジュウシイな柑橘類の爽やかさは、うっすらと汗ばむころが最高。
晩春から初夏へ、気持だけでなく体も自然と移りゆく。

去る四月十日に統一地方選である京都府議選と市議選が行われた。
いつも投票場内はまばらなほうだが今回も前にお一人、次に私と女房、
そして投票をすませての出口でひとり入場という程であった。
翌日の新聞で京都は44.48%だったことを知った。
東日本大震災から一ヶ月、選挙どころではといった気持が
足を遠ざける結果となったのだろうか。

 

p_nono1105e
イベント

 

府立植物園の西側、賀茂川の土手沿いの半木(なからぎ)の道で、
毎年桜の咲く頃の週末には茶店や出店が並ぶ。
当日は快晴で、投票の帰りに散歩がてら廻ってみた。
そのせいか、投票場とはうらはらに、人人人人でごったがえしていた。
人波のなか、のんびりと観賞もできないこともあり、
女房曰く「わざわざ催しのある日に来なくても‥‥。」
まったくその通りである。

 

p_nono1105f
シダレザクラ

 

p_nono1105g
シダレザクラ

 

半木の道には、紅枝垂れ桜という枝垂れ桜が列をなし、
少し遅咲きで楽しませてくれる。
保存会の方々の管理もあり、毎年咲き誇っている。
ことしは桜の開花時期が少し遅れていたこともあり、
まだ七八分ぐらいの感じであったろうか。
あと四五日も待てば、満開となったことだろう。

このあたりの加茂街道は車でよく走る。
街道沿いの桜が桜吹雪となり、
白く淡い桜色の花びらが散って舞っているのが美しい。
それに合わせ、枝垂れ桜のしなやかに垂れ下がる枝に少し濃いめの桜色を
対岸からみるコントラストはなかなかの美景である。

時期をずらし花びらの舞うのを楽しむ。
烏丸の大谷大学の桜、そして南に下がり今出川同志社冷泉家辺りの
御所周辺は早咲きの桜が多く、入学シーズンあたりには舞い始める。

舞う風景を見て、こんなにも桜が多いのかと気づかされる。
その一方で、ちょっと前までは町内にも数多くあったアイストップ的な桜。
時とともに風景は変わる。諸事情だろう。
ちょっぴりとだが、もの悲しさも覚える季節である。

 

*****

 

Vol.64「endless thema - 59」(11年04月)

 

--------道具の修理/追記

 

p_nono1104a
沈丁花

 

 

窓を開けると漂う沈丁花の香り。今年も満開となった。
先日、卸金が目立ての修理から戻って来た。

 

p_nono1104b
卸し金

 

p_nono1104c
目立て

 

ご覧のような仕上がり具合である。早速にすりごごちを試してみる。
流石に職人さんの仕事は大したものである。
生姜をすってみる。
板に吸い付くように、なめらかで瑞々しいままにすり上がる。
「なるほどなあ。」って言いたくなる。
受け取りに言ったときに目立ての修理はどうやるのかを聞いてみた。
でこぼこを削り、焼き入れして、真っ平らにし、
たたき出し、そして目を立てていくのだそうだ。
素人の手習い程度では、最後の行程ぐらいが精一杯。
実際、もう少し簡単なものかと考えていたが、
それなりの道具の修理にはそれなりの技が必要だ。
恥ずかしながら、私もそれなりの知恵を学んだ気がする。

 

 

--------がんばろう/震災

 

去る三月十一日に三陸沖を震源とする大地震が発生した。
その前々日、同じように三陸沖でマグニチュード7.2の大きな揺れがあり、
前日岩手在住の友人に連絡を取った矢先だった。

今回の東北関東大地震三陸沖のプレートのずれによる海溝型長周期地震だ。
私の京都の古家でも揺れた。
というより何かに引っ張られているかのような不快感であった。
建物にはそれぞれのもつ固有の周期がある。
特に長い固有周期をもつ建物は共振する。
自分が感じる以上に、音もなく天井のコードペンダントの
照明器具が振れていたのを思うと、
直接的な震動から受けるものではない不思議な体験である。
長周期地震のことはこの「endless thema」でも匂う程度に触れてきたが、
大阪でも揺れたということなど、
地震による伝搬というよりもゆっくりゆっくりと共振していく。
エネルギーの大きさも然ることながら、その凄さの程が伺える。

マグニチュードは9.0。
押し寄せる大津波の被害で沿岸部は瓦礫の山となった。
福島第一原発は重大な事態に陥り、周椄地域の住民のみならず、
目に見えない恐怖と不安に満ちた時間を強いられている。
これほどまでにつぎつぎと破壊を誘発していく津波の怖さと、
日本は島国だと言うことを改めて認識した気がしている。

各国からの早期援助部隊の到来や、支援、援助は、
日本人としてうれしいかぎりだ。
復興には、なみなみならぬ時間と労力が必要とされることだろう。
あまり多くを語る必要もないが、
私なりに見守りつづけていきたいと思っている。
「がんばろう。がんばろう。」って願いつつ、
被災に負けない姿を見る事で私も元気をもらえる気がしている。
今回、私自身のより確かな記憶として留めておく為にも
あえて書き残しておくことにした。

 

*****