人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

endless thema -172------ 2023年10月 秋分~寒露 /CFの中の建物

 

秋分に差し掛かる頃に、いつもの植木職人さんに剪定をお願いした。蒼蒼とした葉に隠れていたモチノキの実は、ようやく顔を出した。幾らかの実はもう赤くなり薄緑色の実とのコントラストも面白い。

実のなっているのに気づいたのは数ヶ月程前。実がなると言うことは花も咲いていたといえる。花は白身がかった薄緑色で実も始めは薄緑色のため、実の生っていることに気づくのは紅くなり始めてが多い。

 

花の咲いている写真は2014の初夏のものだが、この頃は沢山の花が咲き実がなっていた。ここ数年実がなる事が少なかった。今年はその頃に近づいてきたと言ったところだろうか。

センリョウや裏庭の鉢植えのカマツガの実も少しづつ移ろい始めた。

 

たまに目に止まるTV CFが気になっていた。ディオールだと記憶しているが、CF中に一瞬だが建物が映し出される。記憶が正しければ、ルイス•カーンのソーク生物学研究所だ。

以前、車のCFにも使われていたのを思い出す。このブログのバックナンバーendless thema -119/ マンスリーホットライン2016. 04月号のなかから一部を加筆修正した。

 

その当時みたCFは、視線の広がる空間に一台の車が置かれたTVのCFのラストのシーン。コンクリート打ち放しのフォルムの美しい建物の残像が残る映像であった。

ルイス・I・カーン(1901–1974)設計のソーク生物学研究所(カリフォルニア USA /1950 – 1965)であった。打ち放しのコンクリートの建物は中央の広場を挟んでシンメトリックに配置されている。オーク材などの木質系で構成された窓廻りとコンクリートコントラストはカリフォルニアの青い空を一層際立て、美しい風景を造り出している。カスケードと呼ばれる水路が有るだけの広場には大きく深く呼吸をしたくなるような風が吹き抜ける。

映画マイ・アーキテクト( MY ARCHITECT/A Son's Journey)を思い出し、パンフレットを捲ってみた。

ソーク生物学研究所は小児ワクチンの発明で知られるジョナス・ソーク博士の設立した施設であり、「ソーク博士は、研究者たちが同じ場所で同じ時間を過ごしていることを自然に感じ取れる修道院のような中庭と回廊をもつ空間の実現をカーンに求めた。」そして「メキシコの建築家ルイス・バラガンの助言を得て、植栽のないドライな広場として残された中庭にはカスケード(水路)がひかれた。」※2。バラガンは「空へのファサード」※1という言葉を贈っている。

 

世界的な建築家はみな小住宅を創るのも巧い。同じくカーンも小住宅を創るのは巧い。なかでも、オーク材をふんだんに使ったフィラデルフィア郊外ハットボーローに建つフィッシャー邸(1950ー1957)や窓から差し込むグレアーの程よいチェストナット・ヒルに建つエシェリック邸(1959-1961)は素晴らしい。どんな建物でも住まいと呼んだカーンは長く使い続けていける数々の魅了する空間を造り出した。耳を傾け、絶え間のない情熱をかけつづけることの偉大さを学ぶ。

 

写真の書籍は見開きが建築家齋藤裕氏の美しい写真と文で綴られた「Louis I. Kahn Houses/ルイス・カーンの全住宅1940-1974」(写真・著/齋藤裕 2003年 TOTO出版)※1、下に見えるのが映画マイ・アーキテクトのパンフレット※2である。