人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

endless thema -170------ 2023年8月 処暑の候 / 技術

家の庭では、ホウチャクソウの実が黒紫色へと変わっていた。実は初夏の蒼さから深い紫へと季節は移り庭中に広がった。エアコンの室外機の吸気口辺りを間引いて花入に。ホウチャクソウは漢字で宝鐸草と書き、花冠が宝鐸に似ていることからきているのだとか。お堂などの屋根の隅木の先端に取り付けられた銅鐸を宝鐸といい、風に揺れ動く様を模似してそう呼ぶ。

 

 

このところ橋の話が続いたが、巨大構造物のスケールの迫力には心惹かれるところがある。以前にこのブログでも書いたが、学生の頃にはシェル構造を始め特殊構造には随分と惹かれていた。流れゆく力はそれを表現する形態の美しさに同化される。代々木第一第二アリーナを初めて見た時の若き日の記憶が残る。写真は、SD8001 丹下健三鹿島出版会 の掲載頁より

 

東京オリンピックでお馴染みの新国立競技場のコンペは二度行われたが、2012年当初の最優秀賞ザハ•ハディド案が建設可能になったなら今どんな風となって流れていたのか、心のかけらのように小さな断片となってしまった。

 

 

1973年完成のオーストラリア•シドニーのオペラハウスは国際コンペでヨーン•ウツソン案が採用された。当初のシェル構造からPCa( プレキャスト•コンクリート )のアーチ部材を現場で連ねる構成に変更とはなったが、完成まで実に14年の歳月を要した。

その案を当選案にした当時の諸関係者の情熱には計り知れないものがあっただろう。それは、どうすれば可能となるかという建築技術向上に向けた揺ぎのない情熱でもある。

写真は、a+u 73.10 SYDNEY OPERA HOUSE 特集の安藤健司 「シドニー•オペラハウスの工法」の掲載頁より

 

建築技術には、閉ざす事なく受け継いでいかなければいけない技術が多々ある。そのなかには、伝統的建造物である城廓の技術が日本にはある。バックナンバー( endless thema -133 ------ 隅櫓 )でも書いたように、造ることにより継承されていくことが重要である。名古屋城天守閣の木造による再建計画からは、日本の城郭普請には必要不可欠な継承技術であり、そこには閉ざしてはいけない事由がある。

 

このブログは、元はと言うと大学の校友会のメンバー設計同人の小冊子から書き始めた。2002.4月の創刊から始まり、マンスリーホットラインへと移行し、そしてはてなブログへと続いた。かれこれ21年余り経つが、綴ってきたMessageを振り返ることの重要性も再確認する。