人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

endless thema -181------ 2026年2月 / 今年の賀状は馬乗り

 

 

 

令和八年も、あっという間に2ヶ月が経とうとしている。生垣の白いサザンカや椿のシロワビスケは沢山の花をつけた。

 

上旬の衆院選挙当日にはこの辺りでも15センチ程の雪が積もった。裏庭の窓には冬景色が映り、サクッサクッっと雪に埋まる足音や、ポトッポトッっと雪解けの音は何故かウキウキさせてくれる。

日差しは冬の終わりを漂わせ、太陽は少しずつ高度を上げ始めている。

 

 

年頭のご挨拶は、メールやSNSに変えていく一方で、賀状もまだまだ必要となっている。

賀状には毎年、伝統的建造物の細部語彙を使った構成にしている。今年は午年で、馬のつく語彙で「馬乗り」にした。

草葺や茅葺きの大棟の雨仕舞いの棟仕舞を棟飾りと呼ぶ。この棟飾りには、への字型に馬乗り状に設けられた鞍茅の棟覆いがある。千木を置く棟を「鞍木ぐじ」と呼び、古くはこの千木を「うま」「うまんまた」などと呼んだ。一般には千木、組み木、逆木などと呼ぶのだが、地域用語なのだろう、「うま」「馬乗り」とも呼ばれている。

上の写真は、「滅びゆく民家」株式会社主婦と生活社/1973.川島宙次 著。棟覆いなど、屋根についての考察も詳しく書かれている。

 

 

 

追談になるが、伝統的建造物の主に堂宮などの軒反りのある建物では軒詳細の設計をする。その軒詳細の図面に手を加えて現場の写真と共に賀状にとも思ったのだが。

 

反り上がる複雑な形を立体的に造る為には、規矩という特殊な技法が必要で、そのなかにある規矩術に「馬乗り墨」と言うものがある。

写真は、「日本建築規矩術 」齋藤兵次郎 明治37年 信友堂書店と「規矩術」 附社寺建築の大要 山本一次著 昭和9年 大倉書店。どちらも、若い頃に古本市で見つけた私の蔵書である。

 

endless thema -180------ 2025年八月晩夏 /広島平和公園

広島と長崎に原爆が投下されて今年で80年になる。

バックナンバーで書いた原爆ドームや広島平和公園のことを、加筆修正しました。

 

写真は、2021年12月4日の朝日新聞の記事である。広島の原爆ドーム世界遺産に登録されている。ドーム内の写真には、耐震補強のための鉄骨部材が幾層にも設けられているのが見える。崩れ落ちたと思われる痕跡も確認できる。1945年8月6日、投下のあった日から80年の歳月が経った今、記憶に残しておかなければならない歴史である。

 

 

広島平和公園は、建築家丹下健三氏の設計である。平和祈念式典はいつもTVで見る。生い茂る木立越しに原爆ドームが視線に入る映像からは、歳月を重ねて丹下氏の想いと共に祈念公園として成長し続けている。

 

2015年の年初めに、「建築は知っている/ランドマークから見た戦後70年」という番組がNHKEテレで放映された。戦後の復興から高度成長そしてバブル期から現在に至までの建築を通して見た日本の風景。私もそれらのいくらかの時とともに建築を学んできた。番組はその時代の建築物から時代を検証し日本の記憶の戦後史を辿る。番組から東京タワーの鉄骨は物資の不足した時代、アメリカ軍の戦車をスクラップにした戦争という大過からできていると知った。まさに時は空間の中に記憶される。

 

番組中に登場する、東京都庁や代々木オリンピックアリーナの設計でも知られる丹下健三は1949年広島平和公園の競技設計に入選する。門をイメージする資料館のピロティをくぐり、慰霊碑のアーチから川を隔ててまっすぐに伸びた軸線の向こうには原爆ドームが視線にはいる。氏は「平和は自然からも神からも与えられたものでもなく、人々が実践的に創りだして行くものである。この広場の平和を祈念するための施設も、与えられた平和を観念的に祈念するためのものではなく平和を創り出すための工場でありたいと願う。」と述べている。

また「報道特集 鎮魂への条件~1969~」(1969年NHK放映)の氏のスピーチも編入され、「緑が育ち美しい祈念公園になってきたと思う。しかし一方悲惨でなまぐささの状況のなかで考えたことと大分とイメージが変わってきている。原爆の体験や経験が薄らいできているのではないかという心配がある気がする。平和と祈念する公園にし、さらに推進する為の起点にしようとする考えを持った時に大事だったことは、この記憶をどうゆう風に正確にふさわしく鮮烈に伝えていくかということであった。」とも述べている。(2015年2月 記)

 

写真は広島平和公園の掲載された鹿島出版SD8704「特集 丹下健三 都市・建築設計研究所」である。建築家丹下健三の想いが果てることのない将来にわたり届きつづけて欲しい。

endless thema -179------ 2025年7月 夏はハモが旨い

ユキノシタが群生した。五枚の花弁の上三枚が小さく薄っすらと赤みががるユキノシタ。突然の暑さからか散ってしまった。長雨も終わりを告げ酷暑の到来、そして台風シーズンの始まりである。

 

 

 

イワタバコの花も綺麗だ。白と薄紫。気候変化も大きく、今年は花も少なかったが、元気に咲いていた。

 

 

暑さまもない頃にはフウランも咲いた。玄関先に吊るした鉢や裏庭の鉢棚のうえに置いている。まだ日も高い夕方頃には香りに導かれる。ほんの少しだけ刺激のあるナチュラルな甘い香りだ。

 

梅雨は明け、ハモは脂がのって旨さが増した。むかし、よく行く魚屋の今は亡き大将に「ハモはつゆをすって旨くなる。」と教えてもらった。

骨切りしたハモは、適当に切り、昆布だしで湯がき、氷水は使わずに粗熱をとり冷めたら冷蔵庫で冷やす。酢味噌や梅肉もいいが、煮凝りのできたハモは、たっぷりの生姜をそえて醤油でいただく。茹で汁はスープにすると旨い。

やっと、夏がやってきた。

endless thema -178------ 2025年6月 夏の風 / 思考錯誤はつづく

六月も今日で終わる。下弦の月から少しずつ輪郭が小さくなっていた月は、25日に太陽 月 地球とが軸線上に並ぶ新月になった。そして、日毎に輪郭は見え始め、15日ほどかけ7月11日には満月になる。

 

新緑の頃に、静岡の友人から新茶の便りが届いた。早々にぬるいめのお湯で旬をいただき、夏の風を感じる頃には水出しと、二度楽しむ。

水出しはタンブラーグラスでたっぷりと、美味しいお饅頭といただく。

 

お饅頭は、京菓子司 紫野源水さん。きめ細かな造りで淡い色合いは初夏の香りがする。

水出しはポットに湯冷しを入れ冷蔵庫でギンギンに冷やし、茶葉をお茶パックに適量いれ一昼夜ほどでいただく。パックは少し上下に振りながらポットに入れる。

水の冷え具合と氷を入れたりと、振り具合や飲むときの温度の戻し加減や香りも味もほどがいいように、思考錯誤を持続中である。

ちなみに、お茶は静岡牧之原の内藤園の初摘みかりがね。香り豊かな、爽やかな甘みがあり、季節といただきます。

 

 

玄関先では、五月初めレモンの木の周りでアゲハチョウが飛びまわる。数週間後には孵化して間もない幼虫が葉を食べ始める。

 

 

幼虫は大きくなり、サナギになる準備か、盛んに葉を食べていた。毎年のこと、餌場となり巣立つまでの生育の場になりつつある。

endless thema -177------ 2025年5月 / 煉瓦 仕舞

 

もうすぐ立夏となる。太陽高度は高くなり、汗ばむほどになった。イチゴの花は咲き、実の成るのが楽しみだ。

 

 

 

春間近のころ、立春の声と共に突然の寒波襲来にクリスマスローズの葉が萎れていた。寒さで凍るのを避けようと、水分を放出しているかららしいが、生き抜くための知恵だ。
暖かい日差しに包まれながら、今年も元気に咲いていた。

 

 

暮れに整理の予定だった溜まりに溜まった切り抜きやメモやスケッチの中に、朝日新聞夕刊(20231107)のシリーズ「建てモノがたり」に1918米蔵として建てられた煉瓦造の建物が紹介されているのを見つけた。「八王子れんが」が使用された木組煉瓦造 で、写真のキャプションには、地面に近い部分には松ヤニを混ぜた燃料で焼成され、つやと耐久性を増した焼過煉瓦が使われていると書かれている。写真から一段だけ見える巾木のような基壇部分で色の違いなどからも分かる。ちょっとした気遣いが感じられる建物である。

 

 

煉瓦は多種の積み方だけでなく、表現も多伎にわたる。今年の賀状蛇腹にも使ったねじりまんぽ( endless thema -126 マンスリーホットライン 2016.11月号 ------ 本ブログでは月刊アーカイブ2017 / 5のvol.131に掲載。)のことを以前に書いた。ねじれて見えるのは、トンネルの上を通るインクライン鉄道の荷重をより受けやすくインクラインに直角にレンガを積みたい。そのためトンネルと接する道の角度が直角ではないため、トンネルのアーチはねじれて見える。ねじれたアーチや端部の仕舞。職人さんの腕が冴える。

 

 

若い頃に訪れたフィンランドで見たアルバー•アアルトの建物の多くの出隅と言う部位は90度を成さない建物が多く見られる。しかしながら、アルバー•アアルトという建築家は役物は使わず、出隅角の煉瓦の仕舞はズレを利用したデザインを採用してある。自然な仕舞は、学ぶべきものがある。

最後の写真は校友会設計同人「れんじ」( endless thema 建築家シリーズ アルバー•アアルト /2003. 投稿 )。本ブログでは月刊アーカイブ2017 / 1に掲載。
Jyväskylän Yliopisto Seminaarinkatu 15, Jyväskylä 1951-71 by ALVER AALTO
/Photo by TEAM87

endless thema -176------ 2025年4月 / 日々、平に粛々な我家の野草たち

春隣の日差しを感じる頃、らでぃしゅぼーやから届いた花桃の小枝。花桃の木の足元の草刈りはヤギさんたちのお仕事だとか。届いた小枝は早々に切り口を少しカットして、5パーセント砂糖水で生けた。

 

今回は、昨年の我が家の草木たちの暮らしの、淡々とした記録である。

 

一年ほど前になる春もまもない三月の中頃だったろうか、クリスマスローズたちは咲き始めた。窓ぎわのクリスマスローズは、雨間の暖かさもありあっと言う間に開花し、八重のクリスマスローズも少し遅れ気味だったがよく咲いた。八重は咲き始めは小ぶりの花も少しづつ大きくなり、うつむきながら咲く。

 

三月末には、前庭の沈丁花も馥郁と咲き誇り、季節が漂っていた。

 

 

 

四月中過ぎからはエビネも数輪咲いた。 

四月も終わる頃には、芽の出始めがアスパラのようなホウチャクソウの宝鐸に似た花が咲く。塀際のシラユキゲシは群を成しあっと言う間に満開となった。

 

 

 

地表には地被類のツタバウンランヘビイチゴが咲き、玄関先の石垣の足元にはタツナミソウも満開になった。

 

二葉葵は花が咲き、株は大きく育ち、上賀茂神社に返納した。年の葵祭りに使われるようだ。

 

 

 

五月始めにはミヤコワスレが一輪咲いた。末にはイワタバコやユキノシタも咲いた。

 

八月中頃には透き通るような花の東洋ランが咲いた。

 

 

秋口の夕方だった。キッチンカウンターに生まれてまだ日も浅いスズムシの子がやってきた。水切り網の周りを小走りに動き廻っていた。

 

 

 

立冬も間近の頃にはギンミズヒキがよく咲いた。ホトトギスの花もよく咲いた。玄関先の鉢植えのホトトギスは元気いっぱいだったが、裏庭のホトトギスの植生域は年毎に狭くなった。残念ながら、毎年楽しみにしていたルリタテハはやってこなかった。

温暖化による影響が気になりつつも、相変わらずのわが家の野草たちであった。

endless thema -175------ 2025年1月 / 賀状 蛇腹いろいろ

 

前回から随分と経ってしまった。窓から見える庭は、すっかり冬景色になった。部屋に差し込む日差しも、随分と長くなっている。

新年を迎え年頭のご挨拶の賀状である。随時メールやSNSに変えて行く一方で、賀状の挨拶もまだ必要になっている。

 

今年は巳年。恒例の干支に因んだ建築細部語彙から蛇腹。12年前の賀状語彙と同じだが、今回は洋風建築から用いた。主に蛇腹とは凸凹した形の繰り返し装飾のことを言う。

 

京都国立博物館



紫明会館

 

蹴上ねじりまんぽ 1

蹴上ねじりまんぽ 2

 

京都国立博物館本館、紫明通の紫明会館の胴蛇腹、蹴上ねじりまんぽの隧道杭口バラペット笠石ディンティルと帯石部分である。

紫明会館の胴蛇腹はストレートすぎて蛇腹と言えるかはかさだかでない。

 

※関連 message

京都国立博物館/月刊アーカイブ2017.5.28. endless thema -109 )

紫明会館/ 月刊アーカイブ2017.5. 28. endless thema -114 )

蹴上ねじりまんぽ/ 月刊アーカイブ2017.5. 31. endless thema -126 )