人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.30「endless thema - 25」(08年06月)

 

-------長く使う/建築家の椅子 その2

 

アルバーアアルト(1898 -1976)は、20世紀を代表するフィンランドの建築家である。
アアルトは照明器具やファニチャーのほかにも花瓶や
グラスなどのガラスデザインのプロダクツもあり多才である。
(「建築家シリーズ」でアアルトの建築を紹介しています。
バックナンバーもご覧下さい。)

 

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アルバーアアルトのガラスデザイン

 

食卓用に普段使っているアルバーアアルトの椅子、かれこれ15年程使っている。
この椅子、座面が大きい事もあり体が固定された感じがなくゆったりできる。
オリジナルは座と背と肘かけが藤で編み込んであり、
1946-47にデザインされたNo.45というタイプである。
私の使っているものは座と背が布製のウェビングという
細巾の厚織の帯を市松に編んで張り込んであり、
大きさや造りのわりに片手でも持ち運びできるくらい軽く出来ている。
木製のフレームは積層材を曲加工して組まれている。藤で巻かれた肘掛けは、
肘を乗せるための巾を広くとるためフレームに三角の木片がつけられ、
木口がそのまま見える。

 

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シートハイが気持ち高いこともあり、使うにつれ腿の裏が椅子の座面の先端に当たり、
すれて徐々に破けてくる。何年か前から少しづつすり切れ始め、
ちょっと見窄らしいことになっていたので、この際思い切って張り替えをする事にした。
 確か、アアルト事務所のアアルトのアトリエにあったNo.45には、
気持ち幅が広い黒革を市松に編んであんだものが置いてあったような記憶がある。
最近は藤や布のウェビングのほかにいろいろなバリエーションが組めるようである。
どうせ張り替えをするのだからと思い早速に取扱店に電話して黒のウェビングでも可能か
確認してみた。アルテックから黒も入荷しているということで、
お店のほうに伺うことにした。

早速、二種類入荷していると言う事で
現物を見せてもらった。ひとつはムラのない
さらっとした感じのもので気持ち艶がかっている。
もう一つは生成りと同じテクスチャーの色違いで、
生地だけを見ていると少しラフな印象をうける。
どちらもアルテックの品であるが、
どちらをどの椅子に使用してあるのかはさだかでない。
こっちか、いやあっちか、などと迷ったあげく
結局生成りと同じテクスチャーをもつほうでお願いしてきた。

 

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修理前の状態。座るところのウェビングの先端が
やぶけ見窄らしくなってしまった

 

数週間後、出来上がったと言う事で受け取りにいってきた。
張り上がりの感じはなかなかで、
こちらのウェビングを選んでよかった。
厚織の表情がよく出ている。
ウェビングのエンドは、スティップルという
ホッチキスの親玉のようなもので止めていく。
もともとはスチール製の針で止めてあり、日本は高温多湿の
気候のためかこのスティップルの針がよく錆びる。
張り替えの際、ステンレス製のものを指定するとよい。
今回それでお願いしたら、気を利かせてか
同色の黒のスティップルの針で止めてもらえた。

椅子に限らずどんなものでも長く使いたいものは、
痛んだら修理修繕し、早めのメンテナンスを心がければ
いつまでも気持ちよく使える。

 

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ウェビングの仕舞はスティップルで止める

 

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