人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.77「endless thema - 72」(12年05月)

 

--------桜/春風

 

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八重の椿

 

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ホウチャクソウ

 

鉢植えの八重の椿がいっこうに咲く気配がないと先月号に書いた矢先、
突然咲き始めた。
全くこの気まぐれさは誰に似て非なるものなのか。
それもまずひとつ咲き、そして春寒とともにそのひとつ目の花が終わり、
次に残った蕾が廻りを確かめているかのようにゆっくりゆっくりと咲いた。
温度には意外と敏感のようだ。
日本の椿は花びらが幽遠で一歩も二歩も控えた感じがする。
八重の椿は幽遠さをもちつつ絢爛さが漂うとでもいった印象だろうか。
少し透通った感じの花びらが幾重幾重にも重なりあう。

 

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タイツリソウ

 

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シラユキゲシ

 

風鐸のようなホウチャクソウの花が徐々に白くなってきた。
タイツリソウも沢山の花をつけた。
地植えのシラユキゲシも勢力を増強しつつある。
やっと穏やかな気候になってきた。

 


舞う花びら(動画です。画面をクリックすると再生します。)

 

春風に乗ってどこからか飛んできたのだろうか
サンルームのトップライトに桜の花びらが一枚。
桜は散るより舞うが似合う。舞う桜色の花びらは希望の花吹雪。
そして、より穏やかな季節の訪れ。日向の匂いが鼻先を撫でていく。

 

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桜色の花びらの絨毯

 

四月十五日の朝日新聞の日曜版グローブに巨大建築の特集が載っていた。
平屋で広大なものから背い高のっぽの超高層まで、でっかい建築のことを指す。
特にのっぽを争う超超高層建築は建築界でも話題となる。
現在世界で最も高い建物は、
ブルジェ・ハリーファアラブ首長国連邦/ドバイ 2010)で、
地上828メートルにも達する。
設計はSOM(Skidmore, Owings & Merrill)。
SOMは東京ミッドタウンの設計を国際設計コンペで勝ち得た
アメリカの設計事務所と言えば分かりやすいかもしれない。

800メートルといえば陸上競技の一周約400メートルのトラックを2周分。
でもそう考えるとまだまだ可能性があると思われるが、
それでも想像を絶する大きさであることは確かである。

建築家が皆、モニュメンタリックな超高層建築を賞賛するようなことはないが、
崇高なところへのあこがれや思い入れは古今を問わず誰しも持ち合わせていよう。
今話題となっている東京スカイツリーは、
世界一の高さの電波塔ということで注目を浴びている。
完成に近づくにつれ注目度はうなぎ上りとなり、
その勢いはマスコミで報道されているとおりである。

三年程前、国家予算の仕分けで
次世代スーパーコンピューターを巡り与党女性議員の
「二番では何故いけないのですか。」という言葉が物議を醸し出したのも記憶に新しい。
世界で一番の高さを争っているということ自体は
さして否定するようなことではないが、
当然のことながら他の選択筋はある。
いつまで続くか興味深いことではあるが、
建築家のみならず時代は徐々にグランドラインに定着しつつあるかのようにも感じる。

後々、巨大建築は超超超巨大建築となり、
何百年先には地上とは無縁で暮らす日々がやってくることになるのかもしれない。
草木は地上とは異質な生態系を形成し、
インドア内のアウトドア的空間で生育して行くようなことになるのかも知れない。
残念ながら、桜色の花びらが舞い花びらの絨毯となるような春風が
そこにやってくるとは思えない気がする。

 

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