人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.91「endless thema - 86」(13年07月)

 

--------七月/温風至ころ

 

今年も早、七月を迎えることになった。
先月六月十四日に沖縄では梅雨明けした。
気象庁の発表では今年の沖縄地方の梅雨明けは平年や昨年よりも九日も早いのだとか。
全国的に雨が少なかったが台風一過、近畿地方も本格的に梅雨らしい日々がつづいた。
今年も近畿地方の梅雨明けは七月二十日ごろの予測らしい。
旨いものは降ったりやんだりの適度が良い。
鱧は梅雨をすって旨くなると聞いたことがある。
今少しの我慢か。

 

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白い花のホタルブクロ

 

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赤い花のホタルブクロ

 

庭の鉢植えのホタルブクロは、昨年小休止していたが今年は赤白ともに咲いた。
菖蒲華ころを過ぎもうしばらくは咲いている。
茎の赤みが強いホタルブクロは白い花が咲く。
顎片に反ったところのない種を特にヤマトホタルブクロといって種を分けて呼ぶ。
うちのは反り返しがあるので赤白ともにホタルブクロになる。

築不詳の家とともに成長して来た庭の松。
仕事場から眺めていると松ぼっくりがあるのに気がつき早速表に廻ってみた。
随分と大きくなっているがまだ碧青としてまるで小さなパイナップルのようである。
よく見ると、他の枝にも雌花がのびちっちゃい松の実が出来ている。
こちらは来年ぐらいに大きくなる実のようだ。

 

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パイナップルのような松の実

 

松ぼっくりは松かさのことで、雌花の方の茎が伸び、出来た先端の実の先から茎が伸び葉が大きくなっていく。
この実が松の実で松かさになっていく。
聞く所によるとこんなイメージらしいのだが順を追って見てみないと分かりずらい。
今年は偶然この小さなパイナップルを見つけたのだが、ゆっくりと一年以上もかけてここまでくるので、雌花が大きくなり始めのころから観察してみると面白いかもしれない。
松かさは時間の経過とともに焦げ茶色に変化し傘が開き、大方の種は松かさがそのまま地面に着地する。
種によっては地面に達する間に種子がはじけ、くるくると回転しながら空を舞う。

バックナンバー(2012年4月号/endless thema-71)京都府庁旧本館のことを載せてから一年余が経った。
もうじき、京都府庁旧本館の修理が始まるらしいがどの程度の修理なのか、しばらくの間は入館が出来なくなる。
と言う訳ではないのだが、マルシェが開催されるということもありぶらっとしてきた。

京都府庁旧本館は古典的な建築様式が数々織り込まれたコンポジットである。
正面玄関のアーチのトップの要石にはアカンサスのモチーフがある。
アカンサスはハアザミ(葉薊)のことで、古代ギリシャから建築装飾だけではなくテキスタイルなどいろいろなモチーフに使われてきた。
府庁旧本館の建物にはいたる所にアカンサスのモチーフがある。
どこにどのくらいあるのか宝探しのように探し歩き楽しむのもおもしろいだろう。

 

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アカンサスのモチーフが刻まれた要石

 

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水切りの立ち上がりが設けられている

 

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木製の散水栓BOX

 

正面玄関のポーチに立つ左右の柱は、四角の柱に丸柱が二本添えられたデザインである。
足元の石の加工をよく見ると、三分程の水切りとなる立ち上がりがあり雨仕舞を配慮した心使いが施されている。
二階の中庭に面した回廊に消火栓BOXが残っていた。
おそらくはそれほど古いものではなさそうだが、今では見ることもまれな木製である。
中の消火ホースの収納状態を見てみたかったが、進入不可となっており残念であった。
きっと美しくレイアウトされ折り込んであったに違いない。

 

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梅の実

 

アカンサスのモチーフのある階段を下がり、中庭に出てみて梅の木に実を発見。
まだ青さが残るが、たくさんの実をつけている。
出足は水不足もあった今年の夏、菖蒲華から温風至ころへとつづく。
梅雨が開ければ暑さも本格さを増し、喉を潤したくなる季節の到来である。

 

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