人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.85「endless thema - 80」(13年01月)

 

--------初月/方丈の庵

 

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ワビスケ

 

朝夕の冷え込みは一段ときびしい。
陰日向となる前庭には白ワビスケが今年も静かに咲きつづけている。
暮れの衆院選、投票所でいつも通り投票はがきを渡し
生年月日を訊かれ何気なく答えたのだが、
月日だけだったように思い選管の方に聞き直した。
「本人確認のために生年月日を御願いしています。」と言われた。
月日だけの時があったが市長選の投票のときに
年月日まで訊かれ腑に落ちなかったことを思い出し、
もう一度「いつから生年月日になったのですか?」と訊いてみたが
「前から生年月日です。」と言われた。
まあどちらでもと思い投票を済ませて、
妻に訊いてみたら「私は月日だけ言った。」と。
後日、滋賀の知人は
「投票所でははがきの提出だけで何も訊かれない。」と言っていた。
公平さに欠けるのはどうなのか。
二度も確認したのにと思うと、やはり腑に落ちないものが残る。

 

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三井神社の蛇腹板

 

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六波羅蜜寺の蛇腹支輪

 

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京都府庁本館南階段

 

今年の干支は巳。
賀状には巳年に因んで蛇の付く建造物の箇所を使った。
蛇腹板、蛇腹支輪(じゃばらしりん/軒支輪や天井支輪)、蛇骨(じゃほこ)など。
蛇腹板は桧皮葺の軒付け部分の仕舞に小幅板を斜めに重ねながら張ったものの事。
蛇腹支輪はお堂などの軒と壁の取り合う軒支輪や
屋内の折り上げ天井の天井支輪のことで、
湾曲状の細木が連なる箇所。
蛇骨子は折り上げ天井の支輪の湾曲した細いほうの材のことを言う。
また、洋風建築などの壁と天井の取り合う部分にある
アールや段々の付いた漆喰装飾や外部の長く連なった装飾も蛇腹と呼ばれている。
蛇腹板の写真は、下鴨神社本殿の西側に位置する三井神社の唐破風門の軒先。
蛇腹支輪の写真は、東山区にある六波羅蜜寺本堂の軒支輪。
漆喰の蛇腹の写真は、旧京都府庁本館内の階段の天井廻りのものである。

昨年、糺の森にある下鴨神社では鴨長明の執筆した方丈記800年記念事業が開催され、
建築家隈研吾氏に依る「現代の方丈の庵」が設置してあり、
暮れに蛇腹板の撮影かたがた参拝してきた。
鴨長明の方丈庵は、糺の森の瀬見の小川に架かる
紅葉橋西の河合神社内に復元されている。
方丈庵の正確な資料が残っていないということで本来の形かどうかはさておき、
シンプルで清楚なたたずまいである。
名前の通り一丈(十尺/3.03メートル)四方の大きさで、
畳にすると四枚半で@910mmの尺モデュールで換算すると5.55帖になる。
鴨長明が晩年安住の地とした山中(今の伏見区日野)に移り住み、
自然豊かな静寂のなかでの暮らしをつづけながら
方丈記を書き上げたといわれている。
世のしがらみから離れ、己とは、世とは、と自問し続けたのだろうか。
建物は、建具や嵌め込み式の壁など解体してまた組み立てられるような構造で、
鴨長明自らが考案し造りあげたと言われているミニマム住居である。
和歌や楽器の演奏にもたけていたアイデアマンでもある長明は、
琴や琵琶を持ち運びし易いようにと、
組み立て式であったり折れ式であったりとなっているそうだ。

 

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古今のコラボレーション

 

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木棒にマグネットが付いていてフィルムを挟み込む

 

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壁のデティー

 

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壁と床の仕舞

 

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壁と屋根の取り合い

 

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屋根の鼻先

 

隈研吾氏の方丈の庵は、下鴨神社の楼門をくぐって右手、
御手洗池のほとりに設置されていた。
北山杉の棒状の材を組み合わせ、布状のフィルムを三層に挟み込み、
支点には透明のリング状の樹脂を用いてある。
引張りと圧縮が発生することで成り立っている構造であるらしい。
それぞれはマグネットで固定する仕組みとなっており、
ばらして束ねれば脇に担いで持ち運べるというつくりで、
材料や工法の違いはあれど鴨長明のコンセプトが込められている。
もうひとつのコンセプトはみんなで使えるコミュニティの場
「四畳半をみんなで使う。」がテーマのミニマム空間。
説明書きには「腰掛けたり寝ころんでみて下さい。」とあり、
私も靴を脱いで座ってみた。
半透明のフィルム越しの穏やかな居心地は、明るく適度の緊張感もあり、
障子紙よりもより微かに外部の気配を障り映しているようにも見える。
隈研吾氏らしいアイデアいっぱいの「方丈の庵」であった。

二ヶ月程前、護摩木に「安閑恬静」と綴ったことが思い浮かぶ。
東日本大震災に端を発する進まない復興、
そして今も尚余震がつづく東日本の各地。それらに伴う原発問題。
領土問題では竹島尖閣。そして拉致問題に米軍基地普天間と。
今だざわめきの絶え間のない日本列島。
方丈庵の居心地のように、恬静の空間で包まれる安閑の時が訪れることを願いたい。

 

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