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人と自然と建築と

nonobe's diary

Vol.7「endless thema -4」(06年7月)

-------あっという間の、第4号です。

 

第3号をだし、さてこんどはと思いきや。
はて、前号といっしょになってしまった。
何だか行き当りばったりの文章になりつつあるのだが、めげてはいけない。
「まえふり」が面白いほど本編も面白く思うものである。
例えにするのはおかしいのかもしれないが、
公開型のTVの収録にも必ず? 「まえふり」ならぬ
「前説」というものがあり、 私も子供のころ
公開番組を観にいったことがある。
本番まえの雰囲気を盛り上げるために行われるのだが、
徐々にテンションがあがり、場が盛り上がったところで
本番につなげていくのである。
建築でいうアプローチもそのひとつと言えるのかもしれない。
歩きながら見え隠れする建物を垣間見つつ
そこで起こりうるシーンを思いうかべ、
高鳴る鼓動と期待を胸に感じながら入り口の扉に
たどり着くまでのあいだをアプローチと呼ぶのである。

・・・などという訳ではないのだが
何故か「まえふり」というものは興味深い。

 

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南京鉋(なんきんかんな)

 


ところで、南京鉋(なんきんかんな)というものをご存じでしょうか。
この美しいそして質の高い鉋について少し。

五年程前のことになるのだが、長野県松本の
「松本クラフトフェアー」に行った。
このイベントは、松本の駅から徒歩で20分程のところにある
あがたの森公園」というところで、
毎年新緑の美しいさなかに開催されている。
ここを訪れてわかることは、いろんなクラフトマンが
なんていろんなものを造っているのだろうかと実感することである。
そんななか美しくきれいな仕上がりをした箸ケースをみつけた。
後ろのほうをちらっと覗くと、木工用の万力台が置かれその脇に
なにやら置かれているのが視線にはいった。
それは細長いもので中央にきらっとしたものが
ついている仕事道具の鉋であった。
長年使い込まれているのがわかるほど
柄の部分は鈍く奥深い輝きをし、
そして美しい光りを放っている。
美しい箸ケースのことなどすっかり忘れて、
「ああ、いいなあ。」と思い続け三年、
またここをおとづれたのが昨年である。
やはりその人は万力で作業をしていた、
というよりは、私にとってその鉋がありました
といったほうがいいのかもしれない。
そしてなんとなんと「鉋、作成します。」と書いてあったのだ。
・・・・・そして、その美しい鉋を待つこと1年余り、
やっと今年の夏手元に届いた。
その鉋が前ページの写真の南京鉋というもので
私の造ってもらったものは丸六分の18Rというタイプである。
柄の部分がアカガシ、仕上げはエゴマオイル拭きで、
中央には真鍮でできた刃口金物が埋め込まれている。
使い方は柄の両側の部分を両手で握り、
手前に引いて木を削るのである。
当然、細く丸みがきついほうが
小さいアールのものを削ることができるわけである。
そして丸みがきついほど扱いづらいと言うしろものである。
一口に木を削る道具~かんな。
というが、この鉋の質のよさにはこころ曳かれるものがあり、
事務所の手に届く棚の上に今は置いてあるのだが、
この鉋を手に取るたび建築の「質」に自問する日々である。

今回も「まえふり」が長くなってしまい、
どうも本編だけではさみしい気がして
ついつい「まえふり」を書いてしまうのです。
そして、おもしろくおかしく「まえふり」が
書けていけたらいいなあとも思ってます。

 

-------アドバイザーって大変です。

 

京都の祇園には祇園町南側という地区があり、
花見小路通りを中心に四条より南の区域をいう。
この地区には、舞妓さんや稽古さんが芸を学ぶための
学校法人八坂女紅場学園と言う学校があり、
土地建物の過半はこの八坂女紅場学園が管理していて、
御茶屋さんのおかみさんたちは
新築をふくむ建物の外観などを直す場合には、
行政庁に届けを出す前に八坂女紅場学園の
作成する景観の保全及び継承を目的とした
祇園町南側建築物等外観意匠基準」に
適合するようにしなければならない。
実は、八坂女紅場学園の町並保存のアドバイザーを
98’~99’にかけて1年程させて頂く機会があった。
丁度この地区が伝統的建造物郡保存地区
(以下、伝建地区と呼ぶ。)に指定されたときでもあった。
この地区はR大学のY.M教授がされているのだが、
1年間の海外留学のためその間の留守をまかされたというわけである。
伝建地区などの町並の仕事にはよく修景というWorksがある。
以前、江戸時代の民家が立ち並ぶ城塞都市奈良県橿原市
今井町で3年度にまたがって修景計画や
その他のWorksを経験したことはあるが、
アドバイザーは、それとは随分と違うのである。
クライアントから依頼を受けた設計事務所などが設計やデザインをし、
その設計に対して町並みに調和するように広い視野で適格な
アドバイスをするのが一般的であろう。
しかし私の場合は、ここは納りが悪いだの、
これはこうじゃないと変だとかいやだとか、
この仕上げはこっちのほうがいいんじゃないか
などと、町並保存という大義名文をかかげ
言いたい放題のアドバイザーだったに違いない。
それに、その場ではなかなか方策も出てこないので
一度持ち帰って自分なり~小姑ふう~に検討し、
後日相手様まで連絡をし検討を願う。
こんなやり取りがしばらくつづくのだ。
普通は、その場でカッコよくアドバイスをするのだろうが、
私の場合「その場で」が出来ないのが、くやしい。
とは言うものの、私が見ておかしいと思えるものは
やはり誰が見たっておかしいし、
なんで打ち合わせのとおりでき上がっていないの?。
やっぱり、だれが見たっておかしいものはおかしいのだ。
と、自分を納得させているのである。

 


●Fバー 建て替えとして計画が進んでいたが、
最終的には外観をそのまま残し、
洗いを施し、痛んだところを改修した。
真新しかった格子戸もいまは馴染んでいる。

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Fバー正面

 

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斜めから見たFバー

 

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Fバー内部

 


内部は、バーの部分の改装と一階の取次ぎや二階の和室も
修理し利用できるようにしてある。

 


もう随分前の話になるが花見小路を一筋下り西に入った
ところでショットバー「Fバー」の仕事をしたときもやはり
八坂女紅場学園の所有ということでアドバイス
受けたことがあったがこのときは逆の立場で
私がアドバイスを受ける側で、
その後まさか自分がこの仕事をする事になろうとは
思ってもいなかった。
当時このバーと八坂女紅場学園の所有する土地の管理人を
されていた今は亡きY.K氏とこのバーのオーナーである
S.F氏が某公営放送局に取り上げられ放送されたことがあり
(丁度、十数年ほど前に「京都とは」「町並とは」「保存とは」などで
世論がさわいでいる時期があった。)
私も取材を受け収録はされたものの設計監理という行為は
放送内容の趣旨?にはあわずにその部分はカットされ、
放映は現場での後ろ姿だけであったが、
自分がテレビに写るというのは何かちょっとうれしはずかしであり、
それが私であるとは誰にもわからなかったことだろう。
なつかしく、楽しく、そして良い思い出として
今もビデオと共に残っている。

 

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高塀様式

 

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高塀様式

 


祇園町南側の花見小路通りには、
歴史的意匠様式のなかでも主に高塀様式や
本二階塀造りと呼ばれる町家が多く見受けられる。
それはその名の通り、腰の部分が板張りにされた塀
もしくは塀のような造りの町家である。

 


祇園町南側の花見小路は、
大きく分けて高塀様式と呼ばれる、
その名のとおりの少し高い塀で下の部分に
板張りを用い上の部分を土壁にした様式の
美しい町家が建ち並んでいる。
もちろん、通りから枝わかれした通りにも
格子のある二階屋造り(正確には本二階茶屋様式、
本二階塀造茶屋様式、本二階格子造りしもたや様式等々。)
と呼ばれる美しい町家が建ち並んでいる。
私の好きな町並は、その奥の入り組んだ路地に面した
数々の町家たちである。
3mにも満たない路地に面し両側に立ち並ぶ
二階屋作りの町家は、なかなか美しいのである。

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中央の人がY.Sさんである

 

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登り窯

 


一階の格子戸や出格子のデザインもさる事ながら、
二階の簾が降ろされたその後ろにある
数々の異なった窓、格子や出格子、
堀込が施された手すりなどのデザインには、
目をみはるものがある。


●美しい堀込のある手すりと鍾馗さん

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そして重要なことはこれらの細い路地には
消防車は入ることができないどころか、
災害事の救助隊の活動もなかなか難しいと
思われるところが随所にあるということである。


●路地の町家

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文化財を守るべく地区として、
この地区の特殊性に見合った防災の検討と
整備が急がれるのではないであろうか。

 

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祇園町南側」・・・京都らしい情緒とともに
残しておきたい町並みとして、
この地区が指定されたことは喜ばしいことであり、
後世も変わらぬ美しい町並として
保全されていくことであろう。



 

*****