人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.134「endless thema - 129」(17年02月)

 

--------二月・最終回ですが、つづきます/空気感

 

p_nono1702a
雪どけの音

 

年明けの寒の内、小寒水泉動のころに京都でも雪景色になった。
雪の白さは日差しに反射してきらきらしている。
しんしんとした雪音は、日が昇り、次第に雪どけの音に変わってくる。
マンスリーホットラインの endless thema は129編となった。
他にworks が二編と建築家シリーズが三編とで「人と自然と建築と」は134回の連載になった。
校友会設計同人の小冊子「れんじ」から書き始め、今回マンスリーホットラインでは最終回となったが、いつもと変わらず、毎回と同じ書き方でmessageとしたい。

 

p_nono1702b
平等院鳳凰堂

 

京都宇治にある平等院の話はバックナンバー2014年12月号に鳳凰堂のこと、そして2015年1月号でも少しふれ、
平等院には国宝の鳳凰堂の近くに宝物館ミュージアム鳳翔館という建物が併設している。鳳翔館は栗生明の設計で2001年の開館である。生い茂る樹々で緑の多い境内であろうが、異種の用途で異なるざわめきもあることだろう。大半が地下にある建物で地階からのアプローチになり、出口がグランドラインとなる。まだ鳳翔館に訪れていないが古建築と洗練されたモダンな鳳翔館との狭間にはどんな空気が流れているのか。そして鳳翔館に導かれたエントランスに立ったとき、そこから見える風景からは何が見えるのだろうか。」
と、書いた。

 

p_nono1702c
鳳翔館南門側からのアプローチ

 

p_nono1702d
鳳翔館エントランス

 

その鳳凰堂と鳳翔館との空気感を見てみたく拝観することにした。
昨年の木立がまだ黄紅葉のころ、車で国道 24号線をひたすら南下し、門前の駐車場に車を止めた。
南にある門前からは、あじろぎの道を北に行き北側の表門から境内を散策し、池を回り鳳凰堂正面をとおるアプローチが望ましかったのだが、そのまま南門から入ってしまった。
視線の先には鳳翔館の地上部、つまり出口側にあたる。
右手に鳳翔館を見ながら伏見桃山城からの移築といわれるアカガシで出来ている旧南門を入り、境内西側から鳳翔館の入り口にたどり着いた。

確かに阿字池を介して浮かぶ鳳凰堂の風景とは違う空気感。
今から始まろうとしている静かな期待感である。
鳳翔館の正面の壁には視線の位置ほどのところに「鳳 翔 館」の文字が取り付けられている。
近づくにつれ視線は壁に添って自ずと細長い廊下に導かれる。
常設展示の空間には、平安の伸びやかで巧みに造られた、雲に乗る雲中供養菩薩像や一対の鳳凰が間直で見られる。

 

p_nono1702e
鳳翔館レストスペース廻り

 

p_nono1702f
配慮されている府道側へのビュー

 

p_nono1702g
鳳翔館出口付近の長い大きな階段

 

出口側グランドラインとなるミュージアムショップ周辺には、リファレンスコーナーの設置やレストスペースなどの遊び心のある空間が設けられている。
大屋根の空間の下に設けられたレストスペースはアウトドアだがインドアのようにも感じ、そのファジーさは居心地がいい。
南側門前の府道への視線など当然のことだが配慮されている。
アーバンな感じと日本的とも思えるこの現代建築の空間は暫しのやすらぎを覚えるような時が流れている。
そして「建築物は裏表をつくらず。」のとおり、入口出口表裏問わず、高低差を利用し巧みに計画されている。

レストスペース廻りの空気感も然ることながら、古建築と現代建築の狭間の微妙な空気感はmajor 7 の和音のようだ。
三音+1音で表現されるこの不思議で美しい和音のように、そして majorとminorが共存したゆれうごく音の狭間で互いに呼び合うような透明感があるように思えた。

 

p_nono1702h
ハゼの黄紅葉

 

次回からは、ホットラインさんにお世話になりブログで、不定期にはなるだろうが続けていくことにした。
テーマは同じ「人と自然と建築と」。(http://nonobe.hatenablog.jp
窓辺に置いたハゼの葉がやっと黄紅葉し始めた。
毎年ならとっくに落葉しているのに自然は不可思議であるが、正直でもある。
ロン・カーターのアルバム「THE GOLDEN STRIKER」を聞きながら、温かいアールグレイでも煎れてひといきといったところか。

 

*****