人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.102「endless thema - 97」(14年06月)

 

--------夏至打ち水

 

p_nono1406a
イラガの繭

 

p_nono1406b
イラガの繭

 

p_nono1406c
イラガの繭

 

夏の声が聞こえ始める頃に、やっと植木の剪定も済ませた。
ぼさぼさ頭の庭の樹木たちは真夏に向かってすっきり顔となった。
モチノキは実を残し気味での散髪。
風通しも良くなり、モチノキに何かを発見。
幹に卵形の丸い穴の開いたものが付いている。
よく見ると生け垣の幹にも付いている。
イラガの繭の空き巣のようだ。
繭といっても触らぬことにこしたことはない。
聞くところによるとカマキリやアシナガバチはイラガの幼虫の狩りをするらしい。
自然は巧く出来ている。

 

p_nono1406d
クーネルとアイノのタンブラー

 

ku:nelの68号に「アイノ・アアルトとフィンランドの台所」と言う記事が載っていた。
アイノ(~1949)はフィンランドの建築家アルヴァ・アアルト(~1976)の妻であり建築家でもある。
アルヴァ・アアルトのことはこのマンスリーホットラインのバックナンバーの建築家シリーズ1(2006年1月号) 同3(2006年3月号) 2008年6月号 endless thema25(長く使う/建築家の椅子 その2)でその一部を紹介したが、マレイア邸を始めとする住宅や、ヘルシンキ工科大学、フィンランディア・ホール、アアルトミュージアムなどフィンランドに生涯を捧げたモダニズムを代表する世界的建築家である。
そして、アイノの心やさしいデザインはアルテックイッタラから今も製造され続けている。
アイノは内装のデザインや家具、ガラス器などのプロダクツなど建築とともにアルヴァを支え続けた。
ku:nelには「料理上手の台所」という特集に関連しての掲載のようで、アアルト夫妻の自邸とアイノのキッチン空間を中心に紹介されている。
専門誌より一般誌に近いあたりの雑誌には、専門誌にはない興味を惹かれる記事や写真などがよくある。
本屋さんをぶらつきながら見つけるときが楽しい。

 

p_nono1406e
ガラス器サボイ

 

アアルト夫妻の自邸はヘルシンンキの北西ムンキニエミの入り江から近い緑豊かな静かな住宅地にある。
自邸は自宅兼アトリエとして建てられたが、後に近くに新しくアトリエを建てそこで生涯に渡ってプロジェクトをこなした。
南に広く開いた明るい空間とロケーションは長閑な心安らぐ景色を与えている。
数あるプロダクツのなかでもレストラン・サボイで使われているアルヴァのデザインのガラス器サボイやアイノのデザインのしずくの落ちたときに出来る波の形をした硝子器はロングセラーである。
アルヴァは「ALVAR AALTO」、アイノは「AINO AALTO IITTALA」と器の底に刻まれている。

今までにリバーサルフィルムで撮影して、溜めに溜め込んだスライドや資料のなかには アアルトの建築などフィンランドを訪れたときのものも随分とある。
少し整理しご紹介出来たらと考えている。

六月も終盤、昼間の一番長い日となる。
夕刻が長くなると、のほほんとしてうららかな気持ちになる。
今年の夏至は六月二十一日。北半球では太陽高度が最も高い、つまり蔭の長さが一年の中でもっとも短い。
北欧ではこの頃白夜を迎え太陽が沈まない日がつづく。

 

p_nono1406f
唐撫子とアシナガバチ

 

裏庭では唐撫子(セキチク)の花が咲いている。
アシナガバチが花に止まって盛んに何かをしている。
花が咲く頃アシナガバチも活発に飛び回るのを見る。
母蜂が巣を作り始めるのがこの頃のようだ。
草や木の繊維質を集め巣作りだろうか。
唐撫子の花に埋もれて気持ち良さそうだ。
水やりをしていると盛んによってくる。
ちょっかいさえ出さなければ攻撃してくることはまずない。
今のところ適度な距離感で飛び回っている。
今年も静岡の友人から季節の便りが届いた。
少しだけ冷ましたお湯であたたかい新茶を頂き、湯冷ましで水だしの新茶を頂く。
いつもながら旨い。原稿を書きながら思う。
毎年同じように季節がみえるのは心はずむ。
そろそろ、夕刻の打ち水でもしてひんやりとした風のなか思考の整理もしてみるか。

 

*****

 

Vol.101「endless thema - 96」(14年05月)

 

--------薫風/さくら

 

p_nono1405a
モチノキの花

 

p_nono1405b
ヒメウツキ

 

今年は植木の剪定を遅らせた。
それが功を生じたのか、モチノキの花が驚くほどついた。
新葉と同じ花色は、実の赤く色づいたときになってどんな花だったろうと記憶を辿るほどだ。
この実全てが赤く熟せばなかなかのものかなどと想いを募らせている。
ヒメウツキの花も咲いている。姫空木または姫卯木と書く。
卯の月、五月の花である。
卵形の花芽もはち切れんばかりに膨らんでいる。
白い小さな花芽が薫風に揺らぎ、咲く程合いを見計らっていたかのように咲き始めている。

 

p_nono1405c
容保桜

 

p_nono1405d
しだれ桜

 

p_nono1405e
芝ざくら

 

少し時季がずれてしまい五月号にも桜の話で恐縮だが、先月号に書いた京都府庁旧本館の中庭にある容保桜(かたもりざくら)は大島桜と山桜の特長を併せ持つといわれる。
葉と花が同時に開き、茶褐色の新葉と白い花びらのコントラストが美しい。
半木の道で撮ったしだれ桜と、比較するとその違いもよく分かる。
半木の道の帰り、北大路橋の近くの花屋さんで白い蕾のある芝ざくらを見つけ二鉢買った。
三週間ほどで満開となった。
さくら違いだが季節感もあり、頃合いをみて石積みの間に植えることにした。

 

p_nono1405f
玄武やすらい花の巡行

 

p_nono1405g
玄武やすらい花の巡行

 

毎年四月の第二日曜日にやすらい祭りが、玄武神社、川上大神社、今宮神社、上賀茂神社(上賀茂地区は五月十五日)で行われている。
偶然、新町通りを通りかかったときに赤い花傘をみつけた。
玄武やすらい花(鎮花祭)の巡行で氏子地域をまわっているのだそうだ。
赤い法被の背中に玄武の文字がみえる。保存会の玄武会の方たちである。
タイミングもよくその途中に出くわしたようだ。
玄武やすらい花は花の精の力に依って疫病神を沈め健康を願う春の先がけの祭りで、京都で春一番のお祭りだとか。
玄武神社のホームページに依ると、氏子地域が広いこともあり四班構成で行われ、笛の音やかけ声に合わせ、赤い衣装を身にまとった鬼が太鼓や鉦(かね)を鳴らしながら踊り、練り歩く。
囃したり踊ったりするのは、豊かな稲の実りを祈るとともに、疫病神を踊りの中にまき込んで沈めるためと言われている。
また、桜の花の開花遅速が、その年の稲の豊凶を定めることから、稲の花が早く飛び散らないようにという豊作を願う意味合いも加わったと伝えられている。
(玄武神社公式サイトより抜粋抄出)
現在、やすらい祭は国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 

p_nono1405h
ツルハナナス

 

玄関先に置いたツルハナナスの花が咲いている。
半年ほど前、季節外れに買い植え替えまで木陰に置いていた。
裏庭のツルハナナスはうっすらと紫かかった花をつけ葉の裏はプラムパープルの色をしている。
この子は少し厚みのある感じの真っ白な花。
葉に切れ込みも有る。はっきりしたことは分からないが、実をつければヤマホロシかも知れない。
そのとき一緒に買ったジュズサンゴもそろそろ植え替えの季節。
早くお似合いの鉢を見つけてやらないといけない。

 

p_nono1405i
ツタガラクサ

 

裏庭では生息範囲を広げつつあるツタガラクサ(ツタバウンラン)も咲いている。
多年草の野草で寒い時期は葉も枯れて、暖かくなると雲のような葉が出始め初夏の訪れとともに淡い白紫の小さな花が咲く。
赤紫色がかった細く華奢なツタ状の茎を延ばしながらふえていく。
時期がくると葉の裏側も茎と同じ赤紫がかった色となる。
雑草と野草に特別な線引きはなく、勝手なことにその言葉を使う側の都合にある。
必要としない場所に出没し雑草と呼ばれた途端、哀しいことに粗末にされてしまうのは残念なことだ。
ブラインド越しに見える午後の日差しも目にくっきりと写るようになった。
地植えのホウチャクソウや鉢植えのケマンソウたちもあっという間に花をつけた。
シラユキゲシも郡をなし咲いている。
見渡せば、初夏の花に変わりつつあるのに気がつく。
まだ薄ら寒さの残る感覚はあるが、日向を歩くと汗ばむ。
花曇りがつづいていたのはつい此間のこと。
雲の合間からは青い空が広がっている。
そろそろ木陰を探して歩く季節だろうか。

 

*****

 

Vol.100「endless thema - 95」(14年04月)

 

--------仲春/容保桜

 

p_nono1404a
香り漂う沈丁花

 

春分の日を境に昼間の時間も長くなり、今日も長閑な日和で春らしい日差しに心和む。
ほんの少し冷たい風に時折だが穏やかな南風が頬をくすぐる。
少し前まで庭の沈丁花もまだ蕾のままだった。
長い間蕾のままでお休み中であった沈丁花は陽気にさそわれたかのように咲き始める。
蕾に見えるのは蕚で花のように見える四つに開いた蕚々が寄り添いながら咲く。
暖かさにひかれて開けた窓からただよう香りは春の日の到来を覚える。
道を隔てたお宅やそのずっとむこうのお宅からも、風にのってさまよう香りは馥郁しい。

 

p_nono1404b
会報誌3月号

 

三月十一日「3・11東日本大震災三周年追悼式」の模様が今年もラジオから流れていた。
震災から三年余り、福島原発終結をみないままだ。
「中途な行政指導の結果が放射線による甲状腺の異常を訴える子供たちを増やしているのでは。追跡調査が必要である。」
とニュースで聞いた。
心痛む想いはいつまでもつづく。
今年も日本建築学会の会報誌「建築雑誌」に「東日本大震災から3年」の震災の特集が三月号に組まれていた。
放射能汚染による妨げが再生への道のりを足踏みさせているように見える。
福島のみならず被災地の再生には地域や行政そして個々の多様化した諸々の問題を抱えてはいるが、一歩一歩だが前向きに動いているようだ。
日本建築学会の諸氏の方々の地道な活動は今後も続いていくだろう。
少しづつ実を結んでいってほしい。
三年経った今、また新たな一歩を踏み出していくことに望みは繋がっていくことだろう。

 

p_nono1404c
京都府庁旧本館中庭のしだれ桜

 

p_nono1404d
しだれ桜

 

京都では三月二十七日に開花宣言が出された。
開花日は各地方気象台の指定した標準木の桜の花が五~六輪咲いた日になる。
桜は開花から一週間から十日で満開となる。
満開とは八割以上の蕾が開いたときをいうのだそうだ。
3.29(土)~4.7(月)まで京都府庁では観桜祭が催されている。
京都府庁旧本館(バックナンバー 2013.7月号2012.4月号 )の中庭の桜の開花時期に合わせたイベントである。
京都府庁旧本館の中庭には六本の桜が植えられている。
三本あるしだれ桜のうち中央のしだれ桜は、桜守として知られる十六代 佐野藤右衛門とその先代により、昭和三十年代に京都円山公園祇園しだれ桜の実生木を植えたもので円山公園の初代しだれ桜の孫にあたるらしい。

 

p_nono1404e
まだ蕾のままのかたもりざくら

 

中庭の南西には二本の大島桜とめずらしい容保桜(かたもりざくら)が植えられている。
容保桜は大島桜と山桜の特徴を併せ持つ品種の桜で、この地が京都守護職上屋敷跡地にちなみ、当時の京都守護職 松平容保 公の名を取って、十六代 佐野藤右衛門により命名されたのだそうだ。
京都府広報のパンフレット及び府ホームページより)
容保桜はまだ蕾みのままだったが、物静かな楚々とした面影とその佇まいは静かに何かを見守っているようにも見える。
もう少し経って満開の時期を見計らって眺めにこよう。

我が家の松の剪定は、今年は少し遅めにした。
毎年ならまだ寒さも残る頃に剪定し寒肥を施していたが、矢先から新芽は伸びる伸びる。
ということもあり新芽の出尽くした後に剪定をすることにした。
いつもこの時期ならさっぱり顔の松も今年はぼさぼさ頭である。
五月病を迎える頃には、きりりとした姿が観られることだろう。

 

p_nono1404f
クリスマスローズ

 

玄関先に置いたクリスマスローズの花が春風に身をゆだねるように揺れている。
四月の声を聞く頃となり、やっと春らしい日差しになってきた。
窓際のハゼも若葉をのばし始めている。
奈良東大寺のお水取りが過ぎれば次第に穏やかな季節に変わってくると言われているがその通りである。
四月五日から九日を玄鳥至(つばめきたる)そして十日から十四日を鴻雁北(こうがんかえる)と言う。
空には舞うツバメの姿が見られる頃となり、しだいに雁は寒さの厳しい北方の住まいに渡っていく。
今年もやっとそんな季節を迎えた。

 

*****

 

Vol.99「endless thema - 94」(14年03月)

 

--------三月/早春

 

p_nono1403a
おひなさま

 

三月三日はおひな様。
向かって左側におひな様は伝統的な飾りかたらしい。
西日本から北にかけての寒気団が日本列島を覆っていたが、遠ざかるに伴いふと春を感じる頃となってきた。

 

p_nono1403b
国分にんじん

 

らでぃっしゅぼーやから、国分人参という長~い人参が届く。
フランス生まれの西欧系長人参から育成された品種だとか。
西洋系の人参が明治期に日本に伝わり昭和三十年ころまでは長い人参が主流で広く栽培されていたが、冷蔵庫の普及に伴い庫内に保存しやすい小ぶりの品種が主流となっていったらしい。
らでぃっしゅぼーやのちらしより)
種まきの時期が遅れ少し小ぶりで細めになったとか。
長いが為に掘り出すのには大変な重労働らしい。
人参らしい香りと深みのある甘さが特徴で生産者さんのおばあちゃんのおすすめレシピはきんぴら。
と言う訳で妻が人参のきんぴらを作った。
なるほどおすすめ通りの味わいだ。
今では栽培する農家もわずかで群馬の伝統野菜と言うこともあり残していきたいとの生産者の利根川みどり会さんからのメッセージもある。
収穫の作業手間のかかることが難点ということだが頑張ってほしい。

京都市上下水道局では本管から分岐した管で、古い鉛管が使用されている引き込み管の取り替えの工事が、行政の負担で進められている。
鉛管と言うことだけではなく管が古く、劣化による突発的な漏水防止や濁り水に断水などの防止目的であるようだ。

 

p_nono1403c
市が道に切り込位置をマーキングしていく

 

我が家もその対象となり敷地内のメーターまでの配管が改修されることになった。
管径も13φから20φとなり、メーターもブルーから新しいピンクのメーターとなった。
旧径でもけっこう水圧が高く水量的にはそれほど問題もなかったのだが、ウォーターハンマーが結構きつかった。
京都市の水圧があがってきていると言う訳ではないだろうが、圧が一定で径が細ければ流速もあがる。
自動洗濯機による急な止水やシングルレバーの水栓などで急に止水すると急高した圧力エネルギーにより衝撃音が出る。
これがウォーターハンマーである。
嬉しいことに改修後の径が太くなった分、水の流速低下だろうかウォーターハンマーも余りしなくなったようだ。
自動洗濯機による急な止水によるウォーターハンマーはなかなか消すのが難しいが、水栓器具のシングルレバーに関しては「ゆっくり止める。」を気にかける程度で問題はなくなった。
様子を見ながら、自動洗濯機の水栓に衝撃音緩和のための水撃防止器を取り付ける予定でいる。
完全とまではいかないまでも、気にならない程度に和らぐといい。

 

p_nono1403d
煮干し

 

p_nono1403e
干し椎茸

 

p_nono1403f
こんぶ

 

今日はお手伝い。
出汁とり用の煮干しの捌き (バックナンバー 2010年7月号) で肩がこっている。
老眼が進み眼に妙に力が入り、余計に肩がこる始末だ。
妻はついでにと、煮干しに昆布に干し椎茸と出汁をとっている。
私はいただきものの銀杏を煎る。ふっくらとして美味しそうだ。
煎って殻を外し薄皮も取り除く。殻の焦げる芳ばしい香りが漂う。
少し湯気の起つ煎り立てを頬張る。

 

p_nono1403g
銀杏、使う分だけ出したものの・・・

 

特有の香りとしっとりとした歯ごたえがいい。
頬張りながら殻をはずしまたいただく。
結局、小皿に残った銀杏はわずかとなってしまい、妻にちくりちくりと。

 

p_nono1403h
スノードロップ

 

p_nono1403i
大分とふっくらしてきたクリスマスローズ

 

庭のスノードロップが早春を告げる。
窓先のクリスマスローズの花芽もふっくらとしている。
おだやかな日差しを浴びて気持ち良さそうだ。
少しづつだが風光る頃となってきた。

 

*****

 

Vol.98「endless thema - 93」(14年02月)

 

--------二月/春の足音

 

p_nono1402a
雪解けに足跡

 

年開けにうっすらと初雪が積もった。
雪の朝は空気も澄んで気持ちがいい。
屋根に積もった融けかけの雪の上には何者かの足跡が残っている。
昨晩何者かがドタンバタンと夜遊びをしていた音が聞こえていたが、きっと其奴の痕跡だろう。
裏庭にあるサンルームから見える隣の屋根にも何者かの足跡が見える。
きっと夜遊び好きのイタッチィに違いない。
水辺の近くに住穴をつくるというがどこに住み着いているのだろう。
寒さもまだまだ、炭を熾してお湯を沸かしたくなる。
妻が芋ようかんを作ったので、早速炭熾しを使って熾す。
ぱちぱちと微かに聞こえる炭の熾り声。
春を呼ぶ声のようにも聞こえる。

 

p_nono1402b
芋ようかん

 

p_nono1402c
炭でお湯を沸かす

 

京都東山の建仁寺には希少な鐘楼がある。
数年前に解体修理が施されたということで真新しい姿を見せてくれる。
六本柱に白い漆喰の外壁が設けられた少し珍しい鐘楼である。
平側のそれも間中ではなく少しずれたところに柱があり梵鐘(ぼんしょう)を釣る部材がその柱の上部に渡されている。
妻側の棟の位置に柱が設けられたり外壁の板張りの半鐘の鐘楼や多層の鐘楼は多い。
鐘楼の大きさはほぼ梵鐘の大きさと関連があるのだが、梵鐘を撞くときの動きから片側の柱間を広げてあるのだろう。
鐘を撞く鐘木(しゅもく)と言う木の出ている四角い窓もあり、梵鐘を撞く最小空間であろうか。
軒の出が少し小さいようにも思うが、飛貫から上部がスケルトンとなっており組み物が施され、緩やかな屋根はゆったりと見え、なかなかいいプロポーションに見える。
境内には四本注に板張りの半鐘の鐘楼もある。
こちらもミニマム空間だ。
古来から寺院で行われてきた時を知らせる鐘の音は今も受け継がれている。
以前、事務所のあった御所南では夕刻の五時ころになると寺町通りのお寺の鐘の音が聞こえていた。
どこか心地よい響きであったことを記憶している。

 

p_nono1402d
鐘楼1

 

p_nono1402e
鐘楼2

 

先月号にNHKのデーター放送でPM2.5の浮遊状況を確認出来ると書いたが、少し前にNHKのニュースウオッチ9の特集のなかで滋賀県立大学の永淵修氏は

「研究調査で雲仙普賢岳の霧氷の水銀濃度が高まっている。PM2.5で問題となっている北京や天津あたりを通って吹いている北西からの風に乗って水銀も同じく浮遊してくるのでは。石炭にもともと含まれた水銀が燃焼した際に気体として放出されるのではないか。中国では十分検討されないまま大気中に放出している。」

と話されていた。
同時に報じられた埼玉県環境科学国際センターでは越境大気汚染物質の調査が行われている。
現在日中韓で共同研究が継続中だとか。
同センターの話しでは

レアアースのひとつであるネオジムに注目している。昨年一月二十三日に加須市PM2.5濃度の上昇の際にレアアース濃度(レアアースLa系列のうちLa~Lyまで)が上がった。北京のPM2.5中で見られたレアアースの成分の比率が、北京北西600キロにある鉱山で産出のレアアースの比率に似ている。鉱山近くの空気が北西風に乗って流れてきているようで、越境してくる汚染物質の性質やルートをさらに明らかに。越境大気汚染物質がどのように流れてくるのか、どういう経路でくるのか正確に知ることができる。そして、どういう対策が必要なのか考える為の情報として活用してもらえれば。」と。

うちのトップライトを注意して観ていると、小雨の後に黄砂のような浮遊物質の痕跡のようなものが残っているのが確認できる。
それを思うと大気中になにかが浮遊していると考えたほうがいいのだろう。
地球が回転している以上、発生源より東にある日本では根本から制御しない限り防ぎようのない問題である。
いざこざばかり起こしていないでお互い協力し合い早期解決に向かってほしいものだ。
この先黄砂を含む越境大気汚染物質を幾世代にも渡り監視しつづけていくことになるのだろうか。

 

p_nono1402f
スノードロップ

 

p_nono1402g
クリスマスローズ

 

冬の穏やかな日差しの中でスノードロップの芽が出ている。
寒さも際立つ頃に芽が出始める。
早春の兆しと言われるように春の訪れとともに咲き始める。
クリスマスローズの芽も少しづつ大きくなってきた。
気がつくと今年ももう二月の声を聞く。
遥か遠くで微かに春の足音が聞こえるようだ。

 

*****

 

Vol.97「endless thema - 92」(14年01月)

 

--------新年/居心

 

p_nono1401a
ヒヨドリバナ

 

居住まいを正す気持ちで新年を迎えつつも、天地自然は変わることなく同じ時間を刻んでゆく。
些細なことも大切に想い描きながら、長く広い視野のなかで見据え思索することを平常と可していかなければいけないと考える。
初冬に咲いたヒヨドリバナは大分と冠毛状になってきた。
ひとつひとつの種子は冠毛の羽を付け寒風にいじられ飛び廻る。
土の上に着地した種子たちが芽を出し庭のあちこちで花をつけるといい。

 

p_nono1401b
ジュズサンゴ

 

北山通りを越え玄以通りの一筋南の通りを西に向かって歩くと、大宮通りの少し東に古い町家をお店とギャラリーにしてある「みたて」と言う花屋さんがある。
いろいろな種類の草木が沢山置いてあり、ちょっと覗きにいってジュズサンゴを買ってきた。
ジュズサンゴは北米南部から南米にかけての熱帯地域に自生しているというが、その風体からは想見しづらい。
柔らかそうな葉と華奢な枝ぶりは穏やかな窓辺に心地よさそうに映る。
初夏あたりから小花が咲き始め、秋から冬にかけ花と実が同時に見られるという草木である。
まだ赤い実が少し残っているのでポットごと花器にいれ卓の上に。
地植えにしようか、鉢植えにしようか。
夏のきつい日差しは葉を傷めるらしく半木陰が好きらしい。
植え替えの季節が来るまでそのままにし、それまでにお似合いの鉢を探すかな。

 

p_nono1401c
烏丸通りからの小径の門

 

p_nono1401d
とらや菓寮中庭

 

暮れにお使い用のお菓子を用立てるのに、烏丸通りにある「とらや」を覗いた。
一条通りに面した併設の虎屋菓寮と共に2009年5月に内藤廣の設計でリニューアルオープンした。
室町通りの駐車場に行く近道をお店の方に教えてもらい、北側の小径から菓寮の庭に入った。
小さな門を抜けると修復された蔵や菓寮とギャラリーそして工房が見える中庭にでる。
敷地の廻りには狭い路地が張り巡らされていて一条通りや室町通りの駐車場側にも回れる。

 

p_nono1401e
駐車場から路地へ

 

どの路地も人を迎え入れるしつらいを感じる。
こういった小さな空間は設計する上で常に必要不可欠といえる部分で、それを当たり前のことのように造ってあることに質の高さが伺える。
ギャラリーの外壁を飾るモザイクタイルは、あたたかなすっきりとした色合いの白色とふっくらとした形状が日差しを浴び陰影をつくり釉薬の質感を際立てている。
少し傾斜のある外壁の出隅は現場にてカットし張り合せてあるようで、微妙な角度の調節が残る手仕事の技である。

 

p_nono1401f
とやらギャラリ出隅のモザイクタイル

 

p_nono1401g
とらやギャラリーの水切り

 

ギャラリー部分の板張りとモザイクタイルの取り合いにはフラットバーのような水切りが設けられている。
適度にクリアランスを取ってあり好感が持てるが見上げたとき見えている捨ての裏材が少し気になる。
ほんの少しだけ配慮がほしかったのではと思って眺めていた。
菓寮の軒先は化粧垂木にトップライトという開放的な造りである。
化粧垂木には猿頬面(さるぼうめん)が取られている。
私は縦横の比率をかえて使うが、45度の同比率のようで少し扁平にみえるが大きさと垂木間がいいのか落ち着いた感じの綺麗な連続性である。
その日は時間もなくゆっくり出来なかったが、美味しいお菓子を頂きながらゆったりとした居心のなかで菓寮の空間を見にこようと思っている。

 

p_nono1401h
とらや菓寮

 

p_nono1401i
とらや菓寮の化粧垂木

 

昨年来、次から次へと現れる不安だらけの社会問題。
なかでも出口の見えない環境問題はどう受け止めていったらいいのだろうか。
TVのデーター放送では大気汚染の影響を随時提供してくれる。
PM2.5の情報はNHK1チャンネルで浮遊する微粒子を計算し予測している。
中国大陸から日本にかけての大気汚染微粒子拡散予測の状況がわかる。
また京都各地の放射線量はKBS京都放送で情報が得られ、上京測定所で常時約 0.05μSv/h~0.06μSv/h ほどであるので、尋常でない状態や非常時にはその状況を知ることも出来る。

 

p_nono1401j
ワビスケ

 

木漏れ日のなか、小ぶりで清楚なシロワビスケが咲いている。
鼻を近づけてみると冬の澄んだ空気にうっすらと香る。
蕾みも沢山出来ている。もうしばらくは咲き続けるだろうか。
心和む冬の居心地である。

 

*****

 

Vol.96「endless thema - 91」(13年12月)

 

--------十二月/続きの月・・・日々のくらしから

 

p_nono1312a
シロワビスケの蕾

 

p_nono1312b
ヤブコウジ

 

冬の木漏れ日のなか、今年はまだ蕾のままでいるシロワビスケ
花は猪口咲きと言われるように七分~八分ぐらいの控えめな咲きかたをする。
白い小ぶりの花は寒さが増してくると咲き始める。
花芯の薄い黄色がいっそう清楚な感じをつくろい、うっすらと香る花は冬の空気に似合う。
元気な顔が待ち遠しい。
裏庭では、夏頃に薄桃色の小さな花をつけていたヤブコウジ(薮柑子)の実が赤く染まっている。
葉はあまり枯れることもなく新芽も育ち少しづつ大きくなってゆく。
鉢植えということもあり適当に剪定している。
古来、薮柑子は山橘(やまたちばな)と呼ばれ、赤く熟した実は冬が終わる頃まで残って行く。

近頃、ますます視力が衰えてきた感覚がある。
つめを整えているところであるが老眼鏡をかけないとどうも巧くない。
つめの生え際から両端あたりの皮を整えるのにはヘンケルのネイルクリッパーを使う。
これは刃先が細長いため細かい皮などが巧く処理出来る。
しかしつめを切るとき切ったつめがは跳ねたり飛んだりと、またつめの切り口にヤスリを当てないといけなくなったりする。

 

p_nono1312c
SAWADAのnail clipers

 

それのないのがSUWADAつめ切りで、つめ切りにはこれを使っている。
切り口がやさしく、つめを切るときのパッチンという音さえしない。
どちらかと言えばとんとんと感じがいい。
余程うまく切れなかったときをはぶけば、ほとんどと言っていいほどヤスリを使うことはない。
一応、ヤスリも購入してあるが使っていない。
SUWADAつめ切りは、刃と刃が寸分の狂いのないのが売りだとか。
職人さんが手作業で調整しているらしいが、その刃先は確かに隙間なく美しく仕上っている。
形もよく出来ている。
職人技の冴える日本の製品といった感じだろうか手放せない暮らしの一品だ。

今朝は日差しも穏やか。資料に目を通しながらCDを掛けている。
渡辺香津美の「esprit」というアルバムがある。
谷川公子の曲「Havana」から始まる。
心躍る長いフレーズをソロのアコースティックギターで切れ目なく一気に弾く。
ギターワークだけでなく小気味いいフレーズはいつもう~んとうならせる。
私の身体の中の何かをくすぐる不思議な心地よさが残るフレーズである。

 

p_nono1312d
espritとOyatsuのCD

 

渡辺香津美と言えばイエロージャケットのアルバム「TO CHI KA」。
「おやつ」というアルバムにも「TO CHI KA」が収録されている。
イエロージャケットに収録されている「TO CHI KA」はマイク・マイニエリのヴァイブラフォン(Vibraphone)とのデュオで美しい曲奏で聴かせてくれるが、「おやつ」に収録の「TO CHI KA」はソロで聴かせてくれる。
そのアコースティックの響きとメロディアスなソロは、いつ聴いても錆びること無く聴こえてくる。

 

p_nono1312e
シャコバサボテン

 

p_nono1312f
さざんか

 

二話つづけてのたわいない話しとなってしまったようだ。
今年の近畿地方の木枯らし一号は十一月四日。
昨年より六日遅い木枯らし一号であった。
京都では最大瞬間風速が風速11.7メートル/secだったとか。
雨上がりの朝、窓際に置いてあるシャコバサボテンの蕾が出ているのを見つけた。
ギザギザの尖った葉の先端に、まだ生まれたてのまん丸の蕾が出来ている。
遅咲きの蕾は次第にふっくらと長細くなっていく。
生け垣のサガンカも咲いている。大きな花びらは風を受けて揺れている。
白い花びらは透通ったような清らかさだ。
小休止中の寒さの苦手な草花たちにかわり、冬花たちはうごめいている。
十二月は一年の終わりの月でもあるが、来年に繋がる続きの月でもある。
季節は冬至から小寒大寒とまだまだ寒さは続く。

 

*****