人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

Vol.97「endless thema - 92」(14年01月)

 

--------新年/居心

 

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ヒヨドリバナ

 

居住まいを正す気持ちで新年を迎えつつも、天地自然は変わることなく同じ時間を刻んでゆく。
些細なことも大切に想い描きながら、長く広い視野のなかで見据え思索することを平常と可していかなければいけないと考える。
初冬に咲いたヒヨドリバナは大分と冠毛状になってきた。
ひとつひとつの種子は冠毛の羽を付け寒風にいじられ飛び廻る。
土の上に着地した種子たちが芽を出し庭のあちこちで花をつけるといい。

 

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ジュズサンゴ

 

北山通りを越え玄以通りの一筋南の通りを西に向かって歩くと、大宮通りの少し東に古い町家をお店とギャラリーにしてある「みたて」と言う花屋さんがある。
いろいろな種類の草木が沢山置いてあり、ちょっと覗きにいってジュズサンゴを買ってきた。
ジュズサンゴは北米南部から南米にかけての熱帯地域に自生しているというが、その風体からは想見しづらい。
柔らかそうな葉と華奢な枝ぶりは穏やかな窓辺に心地よさそうに映る。
初夏あたりから小花が咲き始め、秋から冬にかけ花と実が同時に見られるという草木である。
まだ赤い実が少し残っているのでポットごと花器にいれ卓の上に。
地植えにしようか、鉢植えにしようか。
夏のきつい日差しは葉を傷めるらしく半木陰が好きらしい。
植え替えの季節が来るまでそのままにし、それまでにお似合いの鉢を探すかな。

 

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烏丸通りからの小径の門

 

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とらや菓寮中庭

 

暮れにお使い用のお菓子を用立てるのに、烏丸通りにある「とらや」を覗いた。
一条通りに面した併設の虎屋菓寮と共に2009年5月に内藤廣の設計でリニューアルオープンした。
室町通りの駐車場に行く近道をお店の方に教えてもらい、北側の小径から菓寮の庭に入った。
小さな門を抜けると修復された蔵や菓寮とギャラリーそして工房が見える中庭にでる。
敷地の廻りには狭い路地が張り巡らされていて一条通りや室町通りの駐車場側にも回れる。

 

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駐車場から路地へ

 

どの路地も人を迎え入れるしつらいを感じる。
こういった小さな空間は設計する上で常に必要不可欠といえる部分で、それを当たり前のことのように造ってあることに質の高さが伺える。
ギャラリーの外壁を飾るモザイクタイルは、あたたかなすっきりとした色合いの白色とふっくらとした形状が日差しを浴び陰影をつくり釉薬の質感を際立てている。
少し傾斜のある外壁の出隅は現場にてカットし張り合せてあるようで、微妙な角度の調節が残る手仕事の技である。

 

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とやらギャラリ出隅のモザイクタイル

 

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とらやギャラリーの水切り

 

ギャラリー部分の板張りとモザイクタイルの取り合いにはフラットバーのような水切りが設けられている。
適度にクリアランスを取ってあり好感が持てるが見上げたとき見えている捨ての裏材が少し気になる。
ほんの少しだけ配慮がほしかったのではと思って眺めていた。
菓寮の軒先は化粧垂木にトップライトという開放的な造りである。
化粧垂木には猿頬面(さるぼうめん)が取られている。
私は縦横の比率をかえて使うが、45度の同比率のようで少し扁平にみえるが大きさと垂木間がいいのか落ち着いた感じの綺麗な連続性である。
その日は時間もなくゆっくり出来なかったが、美味しいお菓子を頂きながらゆったりとした居心のなかで菓寮の空間を見にこようと思っている。

 

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とらや菓寮

 

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とらや菓寮の化粧垂木

 

昨年来、次から次へと現れる不安だらけの社会問題。
なかでも出口の見えない環境問題はどう受け止めていったらいいのだろうか。
TVのデーター放送では大気汚染の影響を随時提供してくれる。
PM2.5の情報はNHK1チャンネルで浮遊する微粒子を計算し予測している。
中国大陸から日本にかけての大気汚染微粒子拡散予測の状況がわかる。
また京都各地の放射線量はKBS京都放送で情報が得られ、上京測定所で常時約 0.05μSv/h~0.06μSv/h ほどであるので、尋常でない状態や非常時にはその状況を知ることも出来る。

 

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ワビスケ

 

木漏れ日のなか、小ぶりで清楚なシロワビスケが咲いている。
鼻を近づけてみると冬の澄んだ空気にうっすらと香る。
蕾みも沢山出来ている。もうしばらくは咲き続けるだろうか。
心和む冬の居心地である。

 

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