人と自然と建築と

nonobe's diaryーArchitect Message

endless thema -154------ 2022年八月夏 /広島平和公園

広島と長崎に原爆が投下されて今年で77年になる。バックナンバーで書いた原爆ドームや広島平和公園の事を、毎年この月には加筆修正し再稿する事にしようと思う。

 

写真は、2021年12月4日の朝日新聞の記事である。広島の原爆ドーム世界遺産に登録されている。ドーム内の写真には、耐震補強のための鉄骨部材が幾層にも設けられているのが見える。崩れ落ちたと思われる痕跡も確認できる。1945年8月6日、投下のあった日から77年の歳月が経った今、記憶に残しておかなければならない歴史である。(2021年12月 記)

 

広島平和公園は、建築家丹下健三氏の設計である。平和祈念式典はいつもTVで見る。生い茂る木立越しに原爆ドームが視線に入る映像からは、歳月を重ねて丹下氏の想いと共に祈念公園として成長し続けているように見える。

 

2015年の年初めに、「建築は知っている/ランドマークから見た戦後70年」という番組がNHKEテレで放映された。戦後の復興から高度成長そしてバブル期から現在に至までの建築を通して見た日本の風景。私もそれらのいくらかの時とともに建築を学んできた。番組はその時代の建築物から時代を検証し日本の記憶の戦後史を辿る。番組から東京タワーの鉄骨は物資の不足した時代、アメリカ軍の戦車をスクラップにした戦争という大過からできていると知った。まさに時は空間の中に記憶される。

 

番組中に登場する、東京都庁や代々木オリンピックアリーナの設計でも知られる丹下健三は1949年広島平和公園の競技設計に入選する。門をイメージする資料館のピロティをくぐり、慰霊碑のアーチから川を隔ててまっすぐに伸びた軸線の向こうには原爆ドームが視線にはいる。氏は「平和は自然からも神からも与えられたものでもなく、人々が実践的に創りだして行くものである。この広場の平和を祈念するための施設も、与えられた平和を観念的に祈念するためのものではなく平和を創り出すための工場でありたいと願う。」と述べている。

また「報道特集 鎮魂への条件~1969~」(1969年NHK放映)の氏のスピーチも編入され、「緑が育ち美しい祈念公園になってきたと思う。しかし一方悲惨でなまぐささの状況のなかで考えたことと大分とイメージが変わってきている。原爆の体験や経験が薄らいできているのではないかという心配がある気がする。平和と祈念する公園にし、さらに推進する為の起点にしようとする考えを持った時に大事だったことは、この記憶をどうゆう風に正確にふさわしく鮮烈に伝えていくかということであった。」とも述べている。

 

写真は広島平和公園の掲載された鹿島出版SD8704「特集 丹下健三 都市・建築設計研究所」である。建築家丹下健三の想いが果てることのない将来にわたり届きつづけて欲しい。(2015年2月 記)